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賛成しかねる「イチローを球宴に」

豊浦彰太郎Baseball Writer
あくまで他の選手と公平に扱うのが彼への真のリスペクトだろう(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

メジャーの球宴は、7月12日(火)にサンディエゴのペトコ・パークで開催される。ここに来て「イチローを球宴に!」という声が現地でも上がっているようだ。日本のメディアも報じている。

イチローは、日米通算ながらピート・ローズが持つ4256安打の大リーグ通算安打記録を更新したが、前後して、「イチローに投票しよう」(6月14日、FOXスポーツ)、「イチローは今年のオールスターにふさわしい」(6月17日、シアトル・タイムズ紙)、「3000本まであと12本。イチローがオールスターに名乗り」(6月29日、サン・センチネル紙)といった記事を目にするようになった。

出典:THE PAGE 「イチローのメジャー球宴出場はあるのか?」7月2日配信

すでにファン投票は締め切られており、その結果は5日に発表される。これに関しては、全く望みなしだろう。投票はネットのみに限定されているが、もともと候補者としてノミネートされていない選手が入り込む余地は限りなく皆無だからだ。実際、最終の中販発表でも15位以内に入っていない。

したがって、「イチローを球宴に」というのは、選手間投票や監督推薦に望みを託して、となる。しかし、ぼくはそれを望まない。

彼が、今季限りでの引退を表明しているというのならまた話は別だが、まだまだ現役続行に意欲を燃やしている。そうであるなら、あくまで公平に、言い換えれば今季の実績本位で判断されるべきで、それが彼へのリスペクトだろう。いかにマイルストーンに到達したからと言って、規定打席に遠く及ばない彼を選出するべきではない。特別扱いされるのは、ある意味では「爺や」と見なされるということだ。

別の視点からもイチロー選出は感心しない。メジャーの球宴は1試合のみであるにも関わらず、「全球団から最低1人」のルールにしばられることもあり、両軍とも30人を超す選手が名を連ねることになる。そうなると、1打席のみでの交代やワンポイントリリーフのオンパレードで、監督も勝利を目指すより公平な選手起用に気を揉むことになる。従って、近年の球宴はパレードやフェスタ、試合前のセレモニーのみが過剰にショーアップされ、プレーボールの瞬間がそのピークで、そこから先は顔見世興行となっている。これが、人気低迷の要因になっている。

かつては、ア・ナ両リーグが運営団体としても別物だったため、その対抗意識はすさまじかった。70年代あたりでは、現在と異なりア・リーグはどうしてもナ・リーグに勝てない時期があった。その頃は、ア・リーグ会長が各球団に「球宴前の公式戦にエース級を投げさせるな!彼らを球宴で使いナ・リーグを倒せ!」と通達を出したことすらあった。それが今や「セレモニーには参加するけど、投げるのは勘弁して下さい」と言い出す選手がいる始末だ。

オールスターがかつて輝きを取り戻すには、どれだけ真剣勝負の部分を取り戻せるかにかかっていると思う。「イチローを球宴に」という動きは、そのあるべき方向性に逆行するものだと思う。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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