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見に来れない日本のファンにイチロー3000本安打記念バットをフックにチケットを売り込むマーリンズ

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

ちょっと散財?したという話だ。

マーリンズが売り出しているイチロー3000本安打記念バット付きの観戦チケットを、見に行くあてもないのに買ってしまったのだ。

実は、8月に現地に観戦に行った際に、9月25日のブレーブス戦の前にイチローの3000本安打達成記念セレモニーが開催される、ということは試合中のビデオボード告知で知っていた。当然、何か気の利いたギブアウェイが設定されるだろうということは想像していたが、まさか記念バットとは!しかも、ミニバットではなく実物サイズで、球団HPの告知を見る限りちゃんと木製のイチローモデルだ。さらに言うと、3000本製造されるこのバットのうちアトランダムに抜き取られる25本にはイチローのサインが入るという。

マーリンズが商売上手なのは、このバットを先着3000名様ではなく、特定の席のチケットとのパッケージ商品にしていることだ。1枚単位のいわゆるインディビデュアルチケットは、内野席とバットのセットで100ドルの価格が設定されている。一方、ファミリー向けの4枚のチケットセットの場合は単価62ドルと安いが、バットはその4枚に1本しか付かない。

このバットの受け取りは球場だけでなく郵送もOKとしており、かつInternational shippingもちゃんと料金(50ドル)を設定し告知するなど、抜け目がない。要するに、彼らは試合を見に来れるはずがない日本のファンに、イチローの記念バットをフックにチケットを売り込もうとしているのだ。実物大のイチローモデルの木製バットで(運が良ければ)イチローのサイン入り、となれば日本からの注文が殺到しそうだが、16日の夜にその告知に気付いて球団HPから申し込んだらあっさり購入できた。英語のHPでチケットを購入するというプロセスは、多くのファンにとってハードルが高かったのか?それとも同球団のHPやフェイスブックをチェックしているファンはまだまだ多くないということか。

実は、マーリンズが「見に来れない客にチケットを売ろうとする」のは、これが初めてではない。彼らは「前売り券」ならぬ「後売り券」を販売したことすらあるのだ。2010年と2013年に主催試合でノーヒッター(うち、ひとつは完全試合だった)が達成された際に、売れ残りチケットを期間限定で販売したのだ。これらは、マニアによるコレクション需要(および転売需要)を当て込んでのものだ。

マーリンズのオーナーは、悪名高いジェフリー・ロリアという人物だ。彼は画商出身で、球団経営に乗り出してからは、マイナーリーグ球団を手始めに球団の買収→転売を繰り返し、今の地位まで上り詰めた。その過程では、ファン無視の選手たたき売り(あちら風に言えばファイヤーセール)も行っており、メジャーでもっとも嫌われている経営者だ。しかし、商売の才覚に富んでいることは間違いない。このようなチケット販売におけるゲリラ戦略も、オーナー自らの発案とは言い切れないが、彼の薫陶を受けた部下の施策である。

マーリンズ・パークはいつもガラガラだが、年俸総額は安いし、MLBの収益配分制度の恩恵で球団はそれなりに潤っているという。ロリアは理想的な球団オーナーではないかもしれないが、優秀なビジネスマンであることは間違いない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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