「履正社・山口の日本ハム6位指名」どちらも悪くなくこれを問題視することこそ問題
「ドラフト4位以下の指名なら社会人行き」を表明していた履正社の山口裕次郎投手を日本ハムが6位で指名したことが、波紋を呼んでいるようだ。議論の焦点は「どちらが悪いのか」ということのようで、そのような趣旨の報道も目につく。
しかし、ぼくはどちらも悪くないと思う。あえて言うなら、現在の状況を良くないことと捉えた視点が良くないと思う。
進路の選択はとても難しく大切なものだ。無条件でプロ入りというのも結構だが、「プロに行くならこういう条件が揃った時」と限定して考えるのも本人の自由であり、自己責任の範囲だ。われわれ野球ファンは、できるものなら「野球ができるならどこへでも行きます。指名順位なんて関係ありません」というコメントを聞きたいものだ。しかし、それは勝手な思い込みだ。だれもが、自分にとってベストと思われる選択をする権利がある。指名順位に条件をつけることが最終的に本人の利益になるかどうかは今はわからないし、それは何に価値を置くかによるだろう。「プロ入りの意思表示をするなら指名条件などを付帯させるべきではない」という意見もあるようだが、それは間違っている。ルール上も問題はない。これを道義上問題があると考える人は、野球選手は何も考えるな、と言っているようなものだ。
日本ハムにも瑕疵はないと思う。プロ入りを拒否していた若者を翻意させて契約に持ち込んだ例はいくらでもあるし、山口投手側が事前に表明していた意思に反する指名自体には何ら問題はない(ドラフト戦略上得策だったかどうかは別の問題だ)。
ドラフトという形態をとっている限り、必ずしも100%相思相愛の指名と契約にならないことは当たり前のことだ。別に騒ぐほどのことではない。これから先、山口投手が翻意しても一向に構わないと思うしそうでなくても良いだろう。そして、 日本ハムも精一杯の交渉をすれば良いと思う。
人間はだれでも職業選択の自由があるし、ルールの中で自分にとってもっとも有利な状況を作り出す努力をするのは当然だ。また、球団もルールの中でベストと思われる戦略を選択し実行に移しただけだ。そこに何ら問題視すべきことはないと思う。「野球」というフィルターを外し、シンプルに考えてみればわかることだ。