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カープは、黒田博樹の「15」欠番化を機に過去のレジェンド達への評価も議論して欲しい

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

広島が今季限りで引退する黒田博樹の背番号「15」を欠番にするという。とても良いことだ。

広島が今季限りでの現役引退を表明した黒田博樹投手(41)の背番号「15」を永久欠番とする方針を固めたことが30日、分かった。

広島では、ともに1970~80年代の黄金期を代表する強打者だった山本浩二氏の「8」、衣笠祥雄氏の「3」が永久欠番となっている。

<中略>

球団幹部は「苦難の歴史と優勝を経験した黒田が、(広島に復帰して)お金以外の価値観があるという一石を投じてくれた」と話した。 

出典:黒田の「15」、永久欠番に=山本、衣笠両氏に続き―プロ野球・広島 「時事通信」10月30日

理由として、「お金以外の価値観」を示したことも挙げられている。

このことは、事実としては否定しないが、それは第三者が述べることであって選手にサラリーをオファーする立場にある球団側がそう語っては苦笑するしかないが、選手の功績を欠番にするという行為で示すこと自体は大賛成だ。メジャーに比較すると、NPBでは背番号をお相撲さんや歌舞伎役者の名前のように「受け継ぐもの」とする風潮を感じるが、欠番は偉大なプレーヤーの功績を語り継ぐには良い手段だ。欠番認定に関心を示さない球団も少なくはないが、これを機に他球団にも広まって欲しい。

ただし、その広島にも課題はある。黒田の「15」の欠番化にはなんら異論はないが、すでに野球殿堂入りすら果たしている外木場義郎の「14」、北別府学の「20」、大野豊の「24」等との整合性をどうするのか、というバランスの問題だ(同じ殿堂入りでも、津田恒美の14*に関しては実績の面で、ぼくは賛同できないが)。また、「18」を背負った長谷川良平のような創世記の名選手や黄金期を率いた「72」の古葉竹織に対する評価も、これを機に大いに議論して欲しい(彼らも殿堂入りしている)。

  • 当初15と記しておりました。彼の全盛期である球宴転向後は14であることを見落としておりました。お詫びして訂正いたします。(豊浦彰太郎)

NPBで永久欠番の風習が定着しないのは多くの理由があるが、その1つがここに上げた公正性の確保や欠番化のロジックの難しさだろう。それに、球団によっては経営母体が異なる時代をどう扱うかという問題もある。球団の歴史に詳しいスタッフも、あまりいないのかも知れない。メジャーでは、ドジャースなどはフロントオフィスに公式のポストとし「ヒストリアン(歴史家)」を配置しているが。

いずれにせよ、今回の黒田の欠番化がアドホック的なアドバルーンで終わらぬことを望みたい。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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