Yahoo!ニュース

DeNA山口が「宣言」の段階で涙を流さねばならないNPB FA市場の「いびつさ」

豊浦彰太郎Baseball Writer
(ペイレスイメージズ/アフロ)

DeNAの山口俊投手は、今季取得したFA権を行使する申請書を球団に提出した。「せっかく手にした権利だし、他球団の評価を聞いてみたい」という。ごく全うな考えだ。しかし、「野球人としての評価をとるか、チームへの愛着をとるか」で散々悩んだようで会見では、涙がこぼれた。

しかし、これは可哀想すぎる。彼が最終的に他球団との契約を決めベイスターズを去ることが決まったのなら涙もわかる。チームメイトやファンを想い感極まろうというものだが、あくまでも他球団の評価を聞くだけの段階なのだ。

一部の(でもないか)球団は、FA宣言後の出戻り契約を認めない方針を表明している。それからするとDeNAは民主的かつ賢明で、「今後も契約締結の努力は続ける」としている。それでも、帰属意識が高い日本人社会で、FA権を得ながらも行使するには「宣言」といういわば踏み絵的なプロセスを選手に課していることは心情的に許容しがたいし、FA市場活性化の阻害要因となっている。

人には様々な価値観がある。引退した広島の黒田博樹のように、高額な年俸とは別の要素を球団選択の基準に置くことも「あり」だ。しかし、そういう価値観が普遍的に道徳的なのではない。むしろ、プロとして自分を高く評価してくれる球団に身を委ねるのが普通だ。

FA権行使を申請するという山口の行動は極めて全うなものだ。すこしも後ろめたい要素はない。「たかが」宣言の段階で、涙を流す選手もいるということに、現在のルールと慣習のいびつさが象徴されている。権利を取得した選手は、期日を迎えると自動的にFAで良い。そこから先は、所属球団も含めた全球団とフラットに交渉すれば良いのだ。このことに対し行動を起こさない選手会は怠慢だし、それを問題視しないコミッショナーやメディアは義務を放棄しているように思う。

山口は、自分に関心を持ってくれる全球団の話をしっかり聞き、最も好条件の球団と契約しても良いし、愛するベイスターズと再契約しても良い。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

豊浦彰太郎の最近の記事