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トリプルスリーのNPB大スターの2.5倍の年俸をメジャーでは中継ぎ投手が得る

豊浦彰太郎Baseball Writer
セシルは今年のポストシーズンでは7試合に登板し無失点だった。(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2年連続トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を達成したヤクルトの山田哲人の来季年俸が、50%以上アップの3億4000万円になるようだ。そうなると、2011年の青木宣親の3億3000万円を超え、球団史上最高年俸プレーヤーとなる(ただし、外国人選手を除く)。

もちろん、3億4000万円はサラリーマン層にとっては、想像の域を超えた超ド級の額だ。しかし、数日前にアメリカから届いたこのニュースに触れた後では、「山田ですら、球団史上最高額でも、この程度か」と思わざるを得ない。

そのニュースとは、ブルージェイズからFAとなっていた中継ぎ左腕のブレット・セシルがカージナルスと契約したというものだ。

条件は4年総額3050万ドル。年平均は760万ドルだから、約8億3600万円だ。日米の年俸格差を測るモノサシは数多くあるが、 NPBナンバーワンと言って良いスーパースターの2.5倍の年俸での複数年契約を「たかが」中継ぎ投手が手にするのだ(もちろん、保有権を球団に握られている山田とFAのセシルを比べるのはフェアではないが)。

ちなみに、セシルは球宴にも選出された(2013年)実績ある投手だが、故障離脱もあった今季は防御率3.93と平凡な値だ。ちなみにセイバー系サイトのfangraphsが報じるところによると、2016年の救援投手の平均防御率が3.93だったそうで、少なくともセシルは現時点では「エリートリリーバー」とは言い難い。それでも、FA市場では4年3050万ドルの値がつくのだ。もっとも、セシルのような中継ぎ投手のスーパー契約は初めてではない。昨年オフには、オリオールズからFAとなったダレン・オデイが4年3100万ドルで再契約している。しかし、それでもセシルの契約はGame changer (趨勢をガラッと変えてしまうもの)であることには変わりないだろう。

このような契約が生まれる背景にあるのは、メジャーの平均年俸やFA相場の高騰だけではない。これまで軽視されがちだった、中継ぎ投手の価値が見直されたことは見逃せない。そして、その要因として、ここ数年強力ブルペンの球団がワールドシリーズを制していること、今年はインディアンスのアンドリュー・ミラーがポストシーズンを通じて超人的なパフォーマンスを見せたことが挙げられる。しかし、価値が認められその分コスト(年俸)も上がったとなれば、球団側もしっかり回収しようと考えるのが普通だ。イニングや相手打者の左右によるステレオタイプな分業から、このポストシーズンでのミラーのように、「イニングにとらわれず、その試合で最も大事な場面に最も力のあるリリーバーを起用する」フレキシブルな起用への変化が起きるかもしれない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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