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M・ラミレスは3ケ月で台湾球界を去った、今回はどうだ? 「何がマニーを走らせるのか?」 最終回

豊浦彰太郎Baseball Writer
こういうシーンが見られる時期まで日本に居てくれるだろうか?(写真:ロイター/アフロ)

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台湾での「曼尼」の冒険は突如幕切れを迎えた。

2013年6月19日(水)、義大ライノスは「ラミレスとの契約を解除した」と発表したのだ。21日(金)には台湾を離れた。ただし、このことは決して晴天の霹靂ではなかった。

その月の上旬から、マニーの去就について様々な憶測が飛び交っていた。もともと彼とライノスの契約は、3ケ月経過した時点で解除が可能な内容になっていた。台湾球界では人数制限のある外国人選手とは2~3ケ月単位の短期契約が一般的なのだが、マニーの場合は彼の強い要望を反映したものだったと言われている。それが、彼の米球界への強い未練を反映したものであることは間違いない。彼とライノスの契約は3月11日に締結されている。したがって、6月11日は契約解除のXデーとも噂されたのだったのだ。

慌ただしくなったマニーの周辺を制するように6月10日、ライノスは声明を発表した。「破棄条項は6月末まで行使できない契約になっている」というのだ(6月14-15日に桃園で観戦の予定を立てていたぼくは胸を撫で下ろした)。

幸いに空振りに終わることなく台湾での観戦を終え、帰国したぼくを待っていたのは「マニー、ロッテが獲得を狙う」というスポーツ紙の報道だった。その時点では、ロッテはDeNAで戦力的に浮いていたアレックス・ラミレス(現在は監督)に食指を伸ばしていると報じられていた。しかし、同じラミレスでも「マニー」に標的を移したというのだ。

その背景にあったのは、マニーの日本球界の水準からすると「激安」の報酬だったのかもしれない。アレックスのDeNAでの2013年の年俸は3億5000万円と見られていたが、マニーはライノスと「月給」2万5000ドル!で契約を結んでいたのだ。

むろん、NPB球団がマニーを獲得するとなると、月2万5000ドルという訳にはいかぬだろうが、仮にアレックスと同程度の投資をしても、実績、観客動員力とも断トツで上回る超スーパースターを獲得できるならこれは「アリ」だ、当時ぼくはそう思った。

6月21日、マニーは台湾を離れた。

理由は「家族とともに過ごしたい」だが「何でオレが引退しなきゃいけないんだ、まだまだやれるのに」とも語っていた。その一方で、「メジャーともNPBの球団とも契約の話はない」とも明言した。

本来、契約解除が可能となるのは6月25日(台湾球界の前期シーズン終了時点だ)だが、それを一週間繰り上げたというのは、本人のコメントとは裏腹に「実際にはオファーあり」だったのかもい知れないし、マニーにとって「射止めたい球団があった」のかも知れない。

6月22日(土)、ショッキングな2つのニュースが届いた。まずひとつは、台湾を去ったマニーはアメリカに帰ったのではなく、極秘裏に来日しているというものだ(情報ソースは怪情報で有名な某スポーツ紙だったが)。

そして、もうひとつはロッテによる前年まで阪神でプレーしていたクレイグ・ブラゼル(その時点では米独立リーグのセントポール・セインツに所属)の獲得だった。ブラゼルは、前年までのNPB在籍の5年で2010年の47本を含む118本塁打を放っていた。しかも、年俸は(別途インセンティブが設定されたようだが)15万ドルという格安だった。やはり、ロッテは「日本での実績」と「コストパフォーマンス」を重視したのだ。

本当に、一時はロッテがマニーに接触を試みたのか、それともラミレス側が単に日本での報道だけをきっかけに、勝手にNPB入りへ盛り上がってしまったのか、それは分からない。

しかし、どちらにせよマニーにとってNPBでプレーすることに対するモチベーションは何だろうか、という疑問は残った。

通算18シーズンのメジャーでのキャリアで2億ドルを超すサラリーを稼いでいるのだ。そんな男が、台湾と日本でのサラリー差に敏感に反応したとも思えない。だとすると、あくまで目標はメジャー復帰で、そのための「まだやれる」をPRするにはNPBで実績を残す方が有利との判断だったのかもしれない。

いずれにせよ、マニーが台湾行を決意した時点では、カネや名誉なんぞには囚われない自由なマニーらしい選択と考えたものだが、その数か月後には、それは第三者による勝手な思い込みなのだと思い知らされた。やはり、あの時マニーを走らせたのは「メジャー」への強い思いだったのだと今でもぼくは思っている。

結局、マニーは同年7月にレンジャーズとマイナー契約、3Aのラウンドロックでプレーした。翌2014年はカブスの3Aアイオワでコーチ兼任の契約を結んだ。しかし、両年ともかつての輝きを見せるには至らなかった。

今回も、日本行の根っこの理由は明らかではない。しかし、各種の報道によると、四国アイランドリーフPlusをNPBへの足掛かりと捉えている可能性は高いようだ。これは、彼が親日家だからか?アメリカでなくても、その国のトップリーグでプレーしたかったのか?それとも44歳の今も、真剣にメジャー復帰を夢見ているのか?実は、それが本当の理由ではないかとぼくは思っている。

しかし、彼は衝動的な男だ。気紛れであることも確かだ。今年は四国に何度か足を運びたいと思っているが、なるべく急いだ方が良いだろう。

<おわり>

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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