ニッポン半導体のシェアがついに8%に

かつて、世界の半導体市場の50%以上を勝ち取った日本の半導体企業のシェアが2015年にはわずか8%にまで落ち込んでしまった(図1)。これは調査会社のIC Insightsが発表したもの。この凋落ぶりは今更いうまでもないが、つい2010年には14%に落ちたという報道があったばかりだが、わずか6年でその半分になったということだ。

図1 半導体企業国別シェア 出典:IC Insights
図1 半導体企業国別シェア 出典:IC Insights

半導体産業は、世界では依然として伸びているのに日本だけが沈んでいる、という特長がある。実はこの特長を国内電機大手の経営者が理解していなかったことが最近の動きから見て取れる。シャープは言うまでもなく、パナソニックはリストラこそ推進して利益はわずかばかり生み出せるようになったものの売り上げは下降線をたどっている。実は日立もそうだ。東芝は言うまでもない。

企業経営戦略の重要なことは、世の中の動きと自社の強みをリンクさせることだが、これが全くなされていないのである。唯一、三菱電機はパワーエレクトロニクスで強みを発揮し、かつ半導体のR&Dにも力を入れている企業だ。横並びの日本のライバルだけを見て進んできた日本の電機の弱さがここにある。

電機がリーマンショック以降、ダメなことがわかったのにもかかわらず、それを半導体事業が悪かったからという言い訳にしてきた。だから本当の病巣を見つけられなかった。東芝は民生・家電が2014年も15年も大きな赤字を出したのにもかかわらず、最近になるまでリストラに着手できなかった。シャープ、パナソニック、ソニーなどの民生家電メーカーも全く同様だ。

かつてのソニーは独自の面白い製品を続々開発し、パナソニックなどが2番手戦略で追いかけてきた。トランジスタラジオ、ウォークマン、CD-ROM、MDディスク、プレイステーション、ハンディカメラなど世界的にも価値の高い商品や、リチウムイオン電池、CCDイメージセンサ、高密度実装基板などの技術製品も生み出していた。1980年代は商品寿命が7~10年もあったから、この戦略で成功した。しかし、商品寿命の短い今はかつてのこの戦略が使えない。そのソニーも独自製品を生み出せない体質に変わってしまった。

だからこそ今は社員・経営陣が揃って知恵を絞らなければならないのに、「前例がない」「実績がない」などの言い訳で新しい技術やビジネスを拒絶してきた中間管理職と、それをコントロールできなかった経営陣が最大の病巣だった。新しい技術やビジネス、市場に向かうのに、実績を求めるという、その問いかけ自身、変でしょう。

ソニーが成功してきた裏面照射型CMOSセンサは、上司が商品化は無理という理由を100も並べて開発を否定したのに対し、当時の開発者は粘り強く説得を繰り返し、最後は開発を認めてもらったという。この熱意が今日の成功を築いた。しかしこれはソニーの中の例外ストーリーだ。今のソニーの商品で、2000年以降の独自新開発品は、このCMOSセンサ以外一つもない。過去の栄光を食いつぶしているだけ。外国人経営者もひどかった。ロンドンの自宅に住み、毎週ファーストクラスでニューヨーク、東京と世界一周旅行を繰り返してきたと言われている(元ソニー社員)。東京に住んだことのなかったソニーの社長だった。しかも、ソニーが赤字でも数億円という報酬を平気で毎年受け取ってきた。米国企業の経営者だとありえなかった。

日本の電機メーカーの将来が暗いのは、差別化するためのカギとなる半導体とソフトウエアの内、半導体を手放してしまったことだ。それなら、米国や台湾のファブレス半導体と密接な関係を持てばよいのだが、それさえしていなければ、電機は今後ますます暗くなるだろう。ちなみにパナソニックはわずか半年前まで中期計画の目標を10兆円としていたが、早くも8兆円に下方修正した。

話を元に戻して、米国の半導体企業は、54%と過半数のマーケットシェアを占めている。すなわち米国では半導体ビジネスは成長産業なのである。米国の次は韓国の20%である。ただし、これはほとんどメモリだけ。日本は8%で、まだ第3位ともいえる。しかし、4位の台湾は7%と迫ってきている。

ここで定義している国は、半導体企業の本社がある国のことである。例えば、韓国Samsungは米国テキサス州オースチンに工場があるが、韓国企業と定義している。同様にインテルは、アイルランドと中国に生産工場を持つが、米国企業としている。買収した企業も同様に扱っている。例えば英国第1位のファブレス半導体だったCSR社を米国のQualcommが買収したため、今は米国企業となった。日本でもエルピーダメモリを買収したのはMicronだから、その広島工場は米国企業である。

図1の半導体シェアを見て気づくことは、日本と韓国の半導体はファブレス企業がほとんどいない点である。設計と製造を一つの会社が持つIDM(垂直統合のメーカー)がほとんどという構造だ。日本と韓国にファブレス企業がほとんどいないということは、韓国は今のところはメモリで潤っているから、まだましだが、いずれ日本と同じ運命をたどることを示唆している。

半導体産業が活発な米国では、ファブレスが非常に多く、台湾、中国が続いている。特にファブレスで日本が中国に抜かれていることは、日本の技術力そのものに疑問符がついているようなもの。というのはここ10年間、日本はファブレスやファブライトを目指してきたのに、その成果がほとんど上がっていないように見えるからだ。日本は得意な製造技術を捨て、得意ではないファブライトやファブレスにシフトしてきたが、それは大きな失敗であったことを認めなければならないだろう。

2010年に「一刻も早く日本はファウンドリを設立すべき」とブログで訴えたが(参考資料1)、残念ながらその声は届かなかった。その間、Samsungがファウンドリ事業を始め、Intelさえも始めた。製造だけを請け負うファウンドリというビジネスをなぜ日本はこうも嫌い、売り上げも利益も出せずに沈んでいくのか。モノづくりの得意な日本に向いた半導体製造請負サービス、すなわちファウンドリを嫌い続けた結果がこの8%シェアという数字だった。

ファウンドリビジネスの得意な台湾は、日本と違いブランドを表に出すよりは実を取るビジネスを好む。これに対して日本は、武士は食わねど高楊枝、見栄を張るだけで、ひたすら沈み、デフレをまっしぐらに走っている。この姿は半導体ビジネスだけではなく、ニッポンそのものをよく表しているようにも見える。

参考資料

1.一刻も早く日本はファウンドリを設立すべき、セミコンポータル(2010/10/29)