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マクラーレン・ホンダ新車発表! 冠スポンサー不在の発表に不可解な疑問点。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
マクラーレン・ホンダMP4-30 【写真:McLaren】

2015年1月29日(木)、英国のF1チーム「マクラーレン」は注目のマクラーレン・ホンダMP4-30を発表した。今年からホンダのパワーユニットの供給を受け、マクラーレン・ホンダの名前で新たな船出となる新車の発表は世界的に大きな注目を集めていた。

特にホンダがF1復帰ということで関心が高かった日本のファンがガタッと拍子抜けしてしまったのが、今回の発表で施されたカラーリングである。

マクラーレン定番のシルバーに赤ライン

「マクラーレン・ホンダ」といえば、1988年から92年にかけてアイルトン・セナやアラン・プロストらがドライブし、ドライバーズ選手権、コンストラクターズ選手権合わせて8度の世界チャンピオンを獲得した時に纏った「マールボロ」(タバコブランド)の赤白カラーリングが印象的だ。

マクラーレン・ホンダといえば、この赤白カラーリング
マクラーレン・ホンダといえば、この赤白カラーリング

フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンという2015年のドライバーラインナップを発表した際も、栄光の赤白カラーの「マクラーレン・ホンダ」がディスプレイされていたし、発表前のプロモーションビデオでも赤白カラーのマシンがストーリーの軸として強調されていた。そのため、新車のカラーリングは赤と白がベースになるのではないかと期待したファンも多かったはずだ。

しかし、実際に発表されたカラーリングはマクラーレンが長年使用するシルバーをベースに赤いラインが入ったものだった。同チームはメインスポンサー「マールボロ」との関係が終了し、インペリアルタバコのブランド「ウエスト」がメインスポンサーになった1997年から、シルバーのカラーリングを纏っている。メインスポンサーのイメージカラーというだけに留まらず、エンジン供給を受けてきたメルセデスベンツのイメージカラーでもあり、長年に渡ってシルバーのカラーリングを施してきた。

それが今年からはホンダのパワーユニットを搭載するにも関わらず、なぜシルバーのカラーを維持するのかには疑問が残る。

タイトルスポンサー不在での発表

昨年の秋、「マクラーレン・ホンダ」のテスト車両はシルバーのカラーリングで登場した。仮に今季のタイトルスポンサーが決定したなら、新車発表はそのカラーリングを施して登場するだろうと期待が高まっていたのだが、残念ながら新たなタイトルスポンサーの発表は行われなかった。

これまで「ソニー」「ユニクロ」「楽天」などグローバルな規模でマーケットを展開する日本企業がスポンサーに着くという噂が何度か流されてきた。火の無い所に煙は立たないというが、果たしてそういった名の知れた日本企業がタイトルスポンサーとして後に発表されるのだろうか?

いや、それは考えにくい。なぜなら、そういった日本企業が「マクラーレン・ホンダ」のタイトルスポンサーに着くとするなら、アロンソとバトンのラインナップ発表のタイミングや今回の新車発表は鮮烈なF1への参戦をアピールするにはもってこいだからだ。今後、テスト走行の写真がインターネットでバンバン配信されるので、「マクラーレン・ホンダ」という国内でも有名なビッグネームに乗っかり、2月のウインターテストから共に戦う姿勢を見せることは大きな宣伝効果があるはず。3月の開幕戦からロゴが配信されるようではあまりにもったいない。

メインスポンサーの決断はテストでの結果次第か?

新車の発表前に「マクラーレン・ホンダ」は映画「Back To The Future」のオマージュともいえる動画「Back To The Racetrack」を公開した。アロンソとバトンが着ていたチームシャツは白と黒のカラーリングのシンプルなデザインで、新チームシャツとして既に公式サイトでは販売が始まっている。「マクラーレン・ホンダ」の新カラーイメージは白と黒ということも伺い知ることができる。

発表された新車MP4-30のサイドポンツーン部分はシルバーではなく黒に塗られており、このカラースキーム自体は昨年と変わらないが、タイトルスポンサー不在で挑んだ昨年はレース毎に「Mobil 1」や「SAP」(ソフトウェア会社)などサブスポンサーのロゴが掲出されていたため、今年もメインスポンサー不在のままでシーズンを戦うことになるとも考えられる。

しかし、ここで不可解なことが一つ。「マクラーレン・ホンダ」の新車発表のプレスリリースには重要な存在であるはずの企業名が一つ抜け落ちていた。その企業とはフェルナンド・アロンソを長年に渡って支援し続けている、スペインの「サンタンデール」(銀行)である。マクラーレンの公式ホームページには「サンタンデール」のロゴが掲載されている。扱いとしては「Mobil 1」「SAP」「ジョニーウォーカー」と並んで同格のスポンサーだが、プレスリリースでロゴも無く、パートナー紹介でも一切触れられていないのは何とも不思議だ。

マクラーレンのプレスリリースより
マクラーレンのプレスリリースより

アロンソの起用でパートナーとなったはずの「サンタンデール」がなぜリリースには記載されていないのか?なぜアロンソが着るシャツやレーシングスーツにロゴが掲示されていないのか?

これは「サンタンデール」が正式にマクラーレン・ホンダをスポンサードするのは2月のウインターテストでアロンソが新車MP4-30とホンダのパワーユニットに満足するかどうかに掛かっていると見るのが自然であろう。昨年の終盤戦、アロンソは「マクラーレン・ホンダ」への移籍が噂され、既成事実として報じられながらもなかなか正式には口を開かなかったし、「1年休業するという選択肢もある」とも発言していた。様々な条件の交渉に時間を要していたと考えられる。

昨年までフェラーリに乗るアロンソをあれだけ熱烈にスポンサードしていた「サンタンデール」だけに、アロンソが満足し、「マクラーレン・ホンダ」が開幕戦から大暴れできる条件が整ったなら、「サンタンデール」がタイトルスポンサーとして新生「マクラーレン・ホンダ」を支援することになるのかもしれない。もし、そうであるならば、日本のファンならず世界中のファンもシルバーベースではなく、懐かしの赤白のカラーリング再来を期待したいものだ。

シルバーストーンサーキットの「Santander」の看板
シルバーストーンサーキットの「Santander」の看板

マクラーレン・ホンダの運命を決めるテストは2月1日(日)からスペイン、ヘレスサーキットで始まる。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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