Yahoo!ニュース

【スーパーフォーミュラ】チャンピオン候補12人!史上最大の激戦となる2016年最終戦を見逃すな!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
スーパーフォーミュラ【写真:MOBILITYLAND】

誰がここまでの大混戦を予想できただろう?国内最高峰モータースポーツに位置付けられる「スーパーフォーミュラ」の2016年シーズン最終戦が鈴鹿サーキット(三重県)で始まった(決勝は10月30日・日曜日)。今季は最終戦「JAF鈴鹿グランプリ」になんと12人ものドライバーがチャンピオンをかけて争うという史上稀に見る展開となっている。ドライバーは全部で19人。チャンピオンの可能性があるのは12人。F2、F3000、フォーミュラニッポン時代にも誰も見たことがない混戦ぶりだ。

国本雄資(P.MU/CERUMO INGING)
国本雄資(P.MU/CERUMO INGING)

接戦を生んだ勢力図の変化

「スーパーフォーミュラ」は2014年以降「ダラーラ製シャシーSF14+2.0L直列4気筒ターボエンジン」の新規定に移行してから一気にそのクオリティをアップさせた。F1を上回るコーナーリングスピード、ドライバビリティに優れたマシンが生み出す接戦、チームの作戦や仕事ぶりがクッキリと結果に表れ、これまで以上の緊張感がある。さらに元F1ドライバー、WECのチャンピオン、GP2のチャンピオンなどの参戦で選手層の厚さも面白さに拍車をかけている。

横浜ゴムカラーのテスト車両
横浜ゴムカラーのテスト車両

今季からはタイヤが「横浜ゴム」の供給へと変わった。同社は開発段階から素晴らしい仕事を実行し、長年供給していた「ブリヂストン」のタイヤに負けないクオリティを「スーパーフォーミュラ」にもたらした。とはいえ、外から見ている限りでは違いが分かりづらいが、レースでタイヤが変われば全てが変わると言われるほどタイヤは重要なファクターである。供給メーカーが変わったことで前年までの勢力図がシャッフルされることは、ある程度予想されていたが、ここまでの大混戦が続くシーズンになろうとは予想していなかった。

エンジンを供給する「トヨタ」「ホンダ」の2メーカーにも以前ほどの大きな差は存在しない。互いの開発競争の切磋琢磨の中で、見る側からすれば理想的なイコールコンディションに近づいてきている。この高いクオリティの進化も接戦を生み出した要因と言えよう。

さらに今季は九州の地震の影響でオートポリス(大分県)でのレースが中止。毎年1戦限りでテストできるチャンスも少ないサーキットでのレースがキャンセルされたのだ。5月、岡山国際サーキット(岡山県)のレースは雨でセーフティカー先導が続き、ハーフポイントのレースとなった。さらにオートポリスの代替として岡山で2レース制の第5戦が開催されることに。昨年までとは開催サーキットの数が変わった。そんな中、毎回異なるドライバーが優勝を飾り、ドライバー間の獲得ポイント差は極めて少なく、勢力図は常に振り出しに戻るという繰り返しに。まさに、シーズンの流れを完全に掌握できたドライバーが居ないという状態だった。

関口雄飛
関口雄飛

その流れを変えたのがルーキーの関口雄飛(せきぐち・ゆうひ/ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)である。これまでも国内トップフォーミュラ参戦を嘱望されながらも参戦のチャンスに恵まれなかったインディーズ系ドライバー関口雄飛は今季、28歳にしてようやく参戦の機会を得る。どこかワクワクする野生的な速さを持ち合わせ、F3マカオGPなどのレースでもその才能の片鱗を見せつけてきた関口は念願の「スーパーフォーミュラ」でいきなりの速さを披露。特に第6戦スポーツランド菅生での他を寄せ付けない速さは誰もが度肝を抜かれた瞬間だった。

チャンピオン候補の12人

菅生で今季2勝目を飾った関口を含め今季は6人のレースウイナーが誕生している。そんな混戦下で、最終戦となる第7戦「JAF鈴鹿グランプリ」を前にチャンピオン争いは12人が候補者というとんでもない事態になっている。最終戦の「JAF鈴鹿グランプリ」は2レース制で、ポールポジションのボーナスポイントに加えて決勝レース結果に優勝特別ポイント3点が加わり、最大18点獲得可能。ポイント制度のギミック感はあれど、最後の最後で大逆転もその逆もあり得る。とはいえ、この大会で2連勝すれば最大16点獲得できるので優勝することに最大の選手権獲得チャンスがあるのだ。チャンピオン候補は以下の12人である。

ランキング1位:関口雄飛(28点)

ランキング2位:国本雄資(23.5点)

ランキング3位:アンドレ・ロッテラー(22点)

ランキング4位:中嶋一貴(20点)

ランキング5位:石浦宏明(19点)

ランキング6位:ストフェル・バンドーン(19点)

ランキング7位:山本尚貴(15.5点)

ランキング8位:J・P・デ・オリベイラ(12.5点)

ランキング9位:野尻智紀(12点)

ランキング10位:ジェームス・ロシター(12点)

ランキング11位:塚越広大(11点)

ランキング12位:中嶋大祐(10.5点)

この中で中嶋大祐は予選Q1でポールを獲得できなかった時点でチャンピオン争いから脱落。予選、決勝と進行していくにしたがってチャンピオン候補の人数が絞られていくという形だ。

来季からマクラーレン・ホンダF1に乗るバンドーンにとっては卒業レースでもある。
来季からマクラーレン・ホンダF1に乗るバンドーンにとっては卒業レースでもある。

ルーキーチャンピオンなら20年ぶり!

2位の国本雄資(くにもと・ゆうじ/P.MU CERUMO INGING/トヨタ)との差が4.5点と僅差とはいえ、ランキング首位の関口雄飛は最終戦のスタート段階では当然、有利な立場にいる。関口は今季、ルーキーとして名門「TEAM IMPUL」からデビュー。今季開幕から2戦連続のノーポイント。第3戦・富士で今季初の3位表彰台。2種類のタイヤを併用した第4戦・もてぎではミディアムタイヤでQ2進出。そこから新品ソフトタイヤを2連発で使用してポールポジション獲得。決勝では2位以下を6秒離す速さで初優勝を飾った。第5戦・岡山は予選が振るわずで2レースともノーポイントに終わるが、第6戦・菅生でポールポジション。そして決勝レースではトップ独走中にセーフティカー導入によりマージンを失うも、ぶっちぎりの速さを披露して1度もトップを譲ることなく優勝。ポイントの取りこぼしが響き、ランキングでは圧倒的有利さは無いが、鈴鹿でもその速さが維持できればルーキーチャンピオンの可能性がある。

関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)

ちなみに国内トップフォーミュラ(F2000、F2、F3000、フォーミュラニッポン、スーパーフォーミュラ)の歴史上、ルーキーでのチャンピオンは2人しかいない。F2000初年度1973年の黒澤元治(全員がルーキー扱い)、そして1996年のラルフ・シューマッハーしかおらず、もし仮に関口雄飛が王座獲得となれば20年ぶりの快挙となる。ルーキーは勝利を飾るのが難しいと言われ続けた日本のトップフォーミュラで年間複数回優勝を成し遂げている「遅咲きのスーパールーキー」関口雄飛の動向に否が応でも注目が集まる最終戦。12人のチャンピオン争いは滅多に見れない貴重な1戦となる。JAF鈴鹿グランプリで伝説を作り出すのは誰か?

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

辻野ヒロシの最近の記事