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全日本JSB1000最終戦はハスラム、清成を迎え、世界レベルのスプリントレースに!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
鈴鹿8耐で走ったレオン・ハスラム(カワサキ)

今年の「鈴鹿8耐」を沸かせたワールドクラスのライダーたちが11月5日(土)6日(日)に開催の「全日本ロードレース」最終戦「MFJグランプリ」のJSB1000クラス(排気量1000cc)に出場する。MFJ(財団法人 日本モーターサイクルスポーツ協会)と主催者である鈴鹿サーキットが描き続けてきた「MFJグランプリ」のコンセプト、日本のトップライダー達が海外レースに参戦するゲストライダーと対決するというシナリオが実現するのだ。

ハスラム、清成のスプリントが見れる!

「全日本ロードレース」最終戦の「MFJグランプリ」は各クラスで今季ポイントを獲得できた選手だけが参戦できるレースだ。それに加えて、全日本ロードレースに参戦せず海外レースを主戦場としている有力選手は承認を受ければ出場できる。ここ数年はバイクメーカーの国内マーケットへの予算が減らされている事情もあり、海外のスペシャルライダーの参戦はもはや無いものと思われていたが、今年はなんと2人のライダーの特別参戦が決まった。

レオン・ハスラム【写真:MOBILITYLAND】
レオン・ハスラム【写真:MOBILITYLAND】

まず、一人目は今年の鈴鹿8耐でカワサキの「Team GREEN」を2位表彰台へと導いた助っ人、レオン・ハスラムだ。「スーパーバイク世界選手権」で5度の優勝経験を持つハスラムだが、今季は地元イギリスの国内選手権「英国スーパーバイク選手権(BSB)」に8年ぶりに復帰。世界選手権に匹敵するくらいに人気が高いBSBで、今年はカワサキの優勝請負人として役割を担った。シリーズランキングは2位に留まったものの、BSBにおける自身最多となる年間9勝をマークするなどの大活躍だった。

そして、鈴鹿8耐においては「Team GREEN」に加入し、テスト走行にも全て参加する献身的な姿勢を見せ、レースではヨシムラの芳賀紀行との印象的なバトルに競り勝ち、大きな見どころを作った。そんなハスラムは柳川明の代役として「Team GREEN」から日本で初めてのスプリントレースに参戦する。こういった海外のトップライダーのスプリントレース参戦は国内では極めて珍しいことだ。父親のロン・ハスラムはスタートダッシュが得意だった(当時は押しがけスタート)ことから「ロケット・ロン」と呼ばれ、80年代のレースファンに親しまれたが、息子のロケットスタートを鈴鹿で見れるか楽しみだ。

清成龍一
清成龍一

そして、もう一人は清成龍一(きよなり・りゅういち)。鈴鹿8耐で今年も「Team KAGAYAMA」から参戦し、鮮やかなスタートダッシュを決めた。レース結果はトラブルもあったことで表彰台には届かなかったが、鈴鹿8耐・4度のウイナーとしての格の違いを随所で見せた走りだった。清成は今季もイギリスのBSBに参戦。BSBで3度のチャンピオン経験を持つ清成は10シーズン目の参戦を迎えていた。ただ今年加入したスズキのチームが不調で思ったような成績を残せずシーズン途中でシートを喪失。BMWのプライベートチームに加入するも厳しい成績に終わった。

日本ではあまり知られていないが、清成龍一のイギリスでの人気はファンにも関係者にも絶大で、イギリスのメディアが「清成は終わってしまったのか?」という愛を込めた記事を書き、ファンに清成のことを問いかけるほど。3度のチャンピオン、そしてその後のスーパーバイク世界選手権での活躍を知るファンからは清成の実力を信じるコメントが多数寄せられていた。日本人でありながら、シートを喪失しても関心を集めるほどの大スター、清成龍一。その速さが衰えていないことは今年の鈴鹿8耐の活躍で証明済み。最終戦「MFJグランプリ」には「Team KAGAYAMA」からの参戦となり、2012年に代役参戦して以来のスプリントレース参戦を日本で見ることができる。イギリス人が惚れた清成の走りに注目だ。

中須賀が5連覇に王手!

海外のレースに参戦するスペシャルライダーの活躍はもちろん楽しみだが、今季のJSB1000のチャンピオン争いはまだ決着していない。開幕から連続のポールポジション獲得、4連勝を続けていた中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)に9月の岡山国際サーキットのレースで初めて土が着いた。それでも圧倒的な速さを誇るヤマハYZF-R1と中須賀は5レース連続の表彰台を獲得し、ランキング首位を維持して「MFJグランプリ」に挑む。

中須賀克行【写真:MOBILITYLAND】
中須賀克行【写真:MOBILITYLAND】

「MFJグランプリ」は3点のボーナスポイント付きの2レース制。最大獲得ポイントは56点となるため、津田拓也(113点)、山口辰也(104点)、渡辺一樹(103点)、高橋巧(102点)、野左根航太(92点)の5人もまだ逆転のチャンスが残されている。来季からスズキは完全な新型GSX-R1000を、ホンダはシーズン途中からCBR1000RR SP2を投入すると見られ、新世代バイクによる戦いへと移行する。新時代をより良い体制で戦うためにも最終戦で一矢報いたいライダー達の諦めない走りに期待したい。そんな中で、中須賀克行は全日本最高峰クラスの5連覇を達成できるだろうか?緊張感あふれる戦いが始まる。

2016年全日本ロードレースJSB1000 ランキング(第8戦終了時)

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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