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【17年注目】ヤマハの新星、ビニャーレスにセパンテストから注目だ!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
ヤマハに加入したビニャーレスとロッシ【写真:ヤマハ発動機】

2017年シーズン開幕に向けた「MotoGPロードレース世界選手権」のテスト走行がマレーシアのセパンサーキットで始まった。近年、最年少記録を次々に打ち立てたマルク・マルケス、ベテランのバレンティーノ・ロッシらの活躍で世界的にも年々人気が上昇している「MotoGP」。2017年はライダーのメーカー移籍が相次ぎ、各ライダーの新天地での走りに注目が集まっている。

ロレンソ移籍に、新メーカーKTM参戦

2017年シーズンほどワクワクする興味深いラインナップはないだろう。昨年の春から始まった有力ライダーの移籍発表。夏にはすでに多くのシートが決定し、11月に2016年の最終戦が終わると翌日には各ライダーが新しいチームとバイクに乗ってテスト走行を始めた。

MotoGPの2017年ラインナップ
MotoGPの2017年ラインナップ

2017年のラインナップを見ていくと、まず3度のワールドチャンピオンであるホルヘ・ロレンソ(スペイン)がヤマハからドゥカティに移籍。2000年代の後半からヤマハのエース格として君臨し続けたロレンソが赤と白のイタリアンバイク「ドゥカティ」で走るのは非常に新鮮だ。ヤマハで9シーズンも戦ってきたロレンソが全く素性の異なるドゥカティのバイクにどのタイミングで順応していくのかに関心が集まることになる。彼自身は今年で30歳を迎えることになり、ベテランライダーとしてドゥカティを自分中心のチームとし、もう一度ワールドチャンピオンへの返り咲きを目指している。

そして、ロレンソのドゥカティ移籍のあとは玉突きのように空いたシート目掛けた争奪戦がシーズン中に展開された。マーベリック・ビニャーレス(スペイン)がスズキからロレンソの後釜としてヤマハに移籍。ヤマハのワークス(ファクトリー)チーム入りを目指し、鈴鹿8耐でも勝利に貢献したポル・エスパルガロ(スペイン)とブラッドリー・スミス(イギリス)はワークス待遇にこだわり、2人とも新規参戦の「KTM」に移籍した。

オーストリアのバイクメーカー「KTM」の参戦は非常に楽しみだ。2012年から始まった軽量級クラス「Moto3」では5シーズン中4回、チャンピオンに輝いている。それ以前の「GP125」時代から軽量級クラスで目覚ましい活躍を見せてきた同社がついに最高峰クラスへと参戦する。しかも、KTMが得意とするトラスフレームをMotoGPマシンに採用するという粋な挑戦にも注目だ。

2017年はビニャーレスが台風の目に!?

多くのライダーが移籍したシーズンとはいえ、ホンダのファクトリーチームは2016年王者のマルク・マルケス(スペイン)とダニ・ペドロサ(スペイン)で変わらず。ヤマハにはバレンティーノ・ロッシ(イタリア)、ドゥカティにはアンドレア・ドビチオーゾ(イタリア)のベテランが残留する。

そんな中でチャンピオンを争えるライダーというのはやはり限定される。これまでのチャンピオン経験があるロッシ(6回)、ロレンソ(3回)、マルケス(3回)の強さは今年もMotoGPを見る軸となる。メーカーで言えば、ホンダ、ヤマハの対決にドゥカティがどこまでチャンピオン争いに加わるかであろう。そんな中で今季の注目はやはり、ヤマハのファクトリーライダーとなったマーベリック・ビニャーレスだ。

マーベリック・ビニャーレス【写真:ヤマハ発動機】
マーベリック・ビニャーレス【写真:ヤマハ発動機】

マーベリック・ビニャーレスはスペイン・カタルーニャ州出身の22歳。2011年にロードレース世界選手権「GP125」にデビューするといきなりの優勝争いを展開。翌年から4ストロークの「Moto3」にバイクが変わっても非凡な才能はシーズン5勝という形で証明された。そして2013年に3勝を含む全戦入賞(ワーストは5位)という圧倒的なリザルトを持ち帰り、初のワールドチャンピオンに輝いた。2014年は中量級クラス「Moto2」へ。ここでもデビューイヤーながら第2戦で早くも優勝。Moto2を僅か1年で卒業し、2015年から「スズキ」のライダーとして「MotoGP」へと昇格した。

復帰参戦となった「スズキ」を飛躍的に向上させたのが、まさにマーベリック・ビニャーレスの速さそのもの。初年度から存在感を大いに示し、チームメイトを上回るように。そして昨年、2016年はスズキを復帰後初の表彰台、ポールポジションに導き、さらにイギリスGPでは初優勝をもたらした。ホンダやヤマハなど参戦を継続していたメーカーチームならまだしも、スズキは活動休止からの復帰。そのスズキを復帰から僅か1年半で表彰台の頂点へと導いた実力から目が離せない。

今年のヤマハファクトリーチームはバレンティーノ・ロッシとマーベリック・ビニャーレスのラインナップ。ワールドチャンピオン2人を擁する体制から、ベテランと若手という布陣に変わった。ロッシが可愛がっている後輩とも言えるビニャーレス。スズキのバイクで最後のレースをした翌日、初めてヤマハに乗ったビニャーレスは初日、2日目といきなりのトップタイムをマークする怪物ぶりを披露。ロッシもその実力を認めており、ビニャーレスが先輩ロッシと共にいきなりチャンピオン争いを展開する可能性が高い。

マルク・マルケスと共にこれからの「MotoGP」を牽引していく逸材、マーベリック・ビニャーレス。その名前の由来は映画『トップガン』でトム・クルーズが演じた戦闘機パイロットの名前。ヤマハYZR-M1という世界最高のマシンを得て、マーベリック・ビニャーレスは開幕前からアフターバーナー全開だ!

ロードレース世界選手権「MotoGP」は3月26日、カタールのロサイルインターナショナルサーキットで開幕する。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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