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大江麻理子が『モヤモヤさまぁ~ず2』に残した道標

てれびのスキマライター。テレビっ子

いよいよ本日(4月21日)から大江麻理子のいない『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)が始まる。

大江アナの後任の番組アシスタントは狩野恵里アナウンサー。

大江から「色白で帰国子女。英語はペラペラ。いるだけで面白い感じ」と紹介され「彼女なら大丈夫」と太鼓判を押されたアナウンサーである。

大江の“卒業”は異例とも言える3時間半にもおよぶ卒業旅行スペシャル(4月7日放送)で送り出された。そこで大江は、お寺で願い事を書くときも「後任が番組にすぐ馴染みますように」と祈り、最後の視聴者へのメッセージでも真っ先に「これからは私がイチオシの狩野アナにこの席を譲ります。えー、温かい目で見守っていただければ、と思います」と後任を気遣った。

このあたりがまた彼女が愛される理由のひとつだろう。

6年間さまぁ~ずとこの番組でともに町を歩き、もはやこの番組には欠かせない存在になっていた。

『モヤさま』卒業旅行SPのエンディングにはスタッフから大江へのメッセージが彼女の名場面とともにテロップで流された。

「面白いものを作りたい」

さまぁ~ずと僕たちと

同じ思いを胸に 一緒に走り続け

番組を支えてくれたのが大江だった。

(略)

僕たちも大江が思ってる以上に、大江の事が好きなんだぜ。

清楚なのに奔放。頑固なのに穏やか。下ネタに晒されても品を失うことはない。そして子供のように無邪気に振舞ったと思えば母のような母性で包み込む。アナウンサーらしいアナウンサーとも言えるが、そんなアナウンサーは現在、大江麻理子くらいだ。

大江はもともと報道志望だった。

「今は報道番組で脳みそと心臓を鍛えて、バラエティで心地よい緊張感を楽しむのが仕事のバランスとしては最高だと感じているのですが、いつかどこか一つの道を究めたいと思う日が来るかもしれません」(『GALAC』2011年5月号)

それが思いのほか早く来てしまった。

大江は『モヤさま』の魅力を以下のように分析している。(『クイックジャパン』Vol.77)

『モヤさま』の人気の理由として「『人間の言動にちゃんと意味のあるものはそんなにない』ということがわかる」こと、「モヤモヤしっぱなす」こと、そして「とても平和」であることを挙げている。

これらはいずれもさまぁ~ずの物事と人との距離感の絶妙さに由来するものだ。

さまぁ~ずは大江に対しても町の人に対しても、そしてモヤモヤスポットに対しても「ここまでは大丈夫」というラインを探すのに長けているのだ。

思えば、さまぁ~ずはいつだってアシスタント的存在の女性パートナーの魅力を最大限引き出してきた。青木裕子(『マルさまぁ~ず』など)や優香(『Qさま』など)、伊藤歩(『主演さまぁ~ず』)、大堀恵や小島瑠璃子(『さまぁ~ZOO』)……と最近の番組を思い返しただけでも枚挙にいとまがない。

だから『モヤさま』に大江麻理子がいなくって狩野アナになったとしても、さまぁ~ずは絶妙な距離感で彼女の魅力を探し出し面白い番組にしてくれるだろう。

それでも、そんななかでも、『モヤさま』の大江は視聴者にとっても、番組にとっても、さまぁ~ずにとっても特別な存在だった。

もしかしたら私たちは今まで「テレビはこうあるべき」という先入観に縛られて、自らテレビの可能性の幅を狭めていたのかもしれません。きれいに見せよう、作ろう、ということを追求するあまり偶然の産物や人間が本来持ってる間を削り落してしまい、しかもそれを良しとして疑わなかったのかもしれない、ということにモヤさまを観ていて初めて考えが至りました。

出典:『クイックジャパン』Vol.77

誰よりも大江は番組の魅力を理解し、実証していた。それは後任の狩野アナにとって大きな道標となるだろう。

そして最後の別れの場面。

三村は「やばいよ、やばいよ」とおどけながら涙ぐみ、大竹は「色々言おうと思ったけど言えなくなっちゃった。しゃべったら泣くね」とほとんど泣きながら言った。

そして最後のテロップには「三村マサカズ・大竹一樹」の連名でこう書かれていた。

大江、お前は最高の相棒だったよ

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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