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ルミネのCMと『問題のあるレストラン』が浮き彫りにするジェンダー問題

てれびのスキマライター。テレビっ子
『問題のあるレストラン』DVD・Blu-ray-BOXは5月20日発売

「ルミネが働く女性たちを応援するスペシャルムービー」と題されたルミネのプロモーション映像が「ヒドい」と大きな話題になった。

現在は「ご不快に思われる表現が ありましたことを深く お詫び申し上げます」と謝罪した上で、動画も削除されたため見ることができないので、内容を詳しく紹介しているこちらの記事などを見ていただきたい。

最も問題視されているのは「セクハラ男に気に入られるために女性が『変わらなきゃ』と決意する」という展開だろう。

この映像を見て真っ先に思い浮かべたのは先日まで放送されていた『問題のあるレストラン』(フジテレビ)だ。

『問題のあるレストラン』は、まさにセクシャルハラスメントがまかり通る男社会で女性がいかに自立して生きていくか、が描かれたドラマだった。

第1話では、仕事で失敗した女性が社長の命令で男性社員が大勢いる前で全裸で謝罪するという、ありえないような性暴力が描かれている。

このドラマの主要登場人物の中に、高畑充希が演じた川奈という女性がいる。上記のCMの巻き髪の女性のようにキラキラ着飾った彼女は、この会社の中で、男に媚び、男を利用しながら、セクハラには笑顔で対応してきた。

そんな彼女が、男性たちと戦う主人公・たま子(真木よう子)たちに語った印象的な台詞を少し長いが引用する。

何でみなさん水着着ないんですか? 私いっつも心に水着着てますよ。お尻とか触られても全然何にも言わないですよ。お尻触られても何にも感じない教習所卒業したんで。「その服男ウケ悪いよ」って言われても「あーすみません気を付けまーす」って返せる教習所も卒業したんで。「痩せろー」とか「やらせろー」とか言われても笑ってごまかせる教習所も出ました。免許証、お財布にパンパン入ってます。痴漢されたらスカート履いてる方が悪いんです。好きじゃない男の人に食事に誘われて断るのは偉そうな勘違い女なのでダメです。セクハラされたら先方はぬくもりが欲しかっただけなので許しましょう! 悪気はないのでこっちはスルーして受け入れるのが正解です!

どうしてしずかちゃんはいつもダメな男と偉そうな金持ちの男と暴力振るう男とばかり仲良くしてるのかわかりますか?どうしていつもお風呂場覗かれてもすぐに機嫌治すかわかりますか?どうして女友達がいないかわかりますか?彼女も免許証いっぱい持ってるんだと思います。上手に強く生きている女っていうのは気にせず許して受け入れて(生きてるんです)。

出典:『問題のあるレストラン』第5話

そんな彼女にたま子は言う。

「気にしなくていいなんていう人は、あなたの心を殺そうとしてるんだよ」

「『女子力』なんて男に都合のいい言葉では女の本当の強さは計れない」のだ。

彼女と対照的なキャラクターとして描かれているのが二階堂ふみ演じる新田だ。勉強ばかりしてきていわゆる「女子力」は皆無。彼女は小さいころ、『セーラームーン』ごっこをすると、素直に女子に人気な赤やピンクを選びことができず、“残り物”の緑=セーラージュピター(実際にはジュピターは女性の間で根強い人気があるが。)を選んでいたという。

アニメの『セーラームーン』は敵と戦ってたけど、女の子たちの「セーラームーンごっこ」は、セーラームーン同士で闘うんです。大人になって、それを別の言葉で知りました。「女の敵は女だよ」って。私は初めからそこで負けていたから、他の子がファッションとか恋とか選ぶ時、私は勉強を選びました。好きじゃなかったけど、残ってたから勉強を選びました。大学に受かって友達とか家族とかみんな褒めてくれました。だけどそこにはいつも「女の子なのに変わってるよね」っていうニュアンスが付け加えられていました。会社に入ってやりたいことを頑張ろうと思っていたら、テプラの研修があって、どうしてだか女子だけテプラの研修があったんですけど、同期の子が言いました。

「男は勝てば女に愛されるけど、女は勝っても男に愛されなくなる。女は勝ち負けとか放棄して男に愛されて初めて勝利するんだ」

あれ、じゃあ私、一生勝てないじゃんって思いました。

出典:『問題のあるレストラン』第4話

やがてたま子たちは、第1話でセクハラをされた女性のために訴訟をすることを決意する。

たま子は、その会社が経営するレストランでシェフを務める元恋人の門司(東出昌大)に「もっと相応しい店があるはず」と諭す。

だが、門司は「俺には関係ない」と答える。

門司: ヒドいことをしたのは社長とか一部の人間がしたことだろ?

たま子: 一部の人がしたことは門司くんには関係ないの?

門司: 俺はしてない。俺は何もしてない。

出典:『問題のあるレストラン』第8話

「ハラスメント」という言葉は、それまで無意識的、無自覚的に行われ、「ないこと」とされてきたことに名前を与え、精神的な形なき暴力を白日のもとに晒したものだ。

第1話のようなデフォルメされたようなセクハラが「ありえない」「リアリティがない」と無視することは簡単だ。

このドラマではほとんどの男性登場人物が記号的に描かれている。デフォルメされたセクハラと記号化された男性描写。それは暴力的ですらある。しかし、あえてそのように描かなければ見えない現実もある。

無自覚に女性を貶める男性(またはその逆に男性を貶める女性)、そんな男性に迎合する女性(またはその逆)、自分には無関係と見て見ぬふりをする人たち。

性差別を生み、それを助長する構造を変えるのは容易ではない。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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