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レノファ山口:維新劇場「再演」 福満隆貴がハットトリック。4510人、熱い声援

上田真之介ライター/エディター
福満隆貴が3点目を決め、ゲームキャプテンの島屋八徳は抱きついてゴールを称えた

レノファ山口FCがホームの維新百年記念公園陸上競技場(維新、山口市)でチームの推進力を取り戻した。明治安田生命J3リーグは9月27日、第31節の6試合が行われ、山口はYSCC横浜に4-0で快勝。2位の町田ゼルビアは藤枝MYFCに逆転勝ちし、1位山口との勝ち点差は6のまま。3位AC長野パルセイロはグルージャ盛岡に土壇場で追いついたが、勝ち点1を拾うにとどまった。

J3第31節:山口4-0YS横浜▽得点者=前半34分福満隆貴(山口)、後半17分福満隆貴(山口)、同35分岸田和人(山口)、同44分福満隆貴(山口)▽4510人=維新百年記念公園陸上競技場

背中押した維新熱

島屋八徳はカウンターから決定機を創出
島屋八徳はカウンターから決定機を創出

「維新に帰ってくるとアウェーにはない独特の雰囲気と背中を押してくれる声がある」。歓声に手を振って応えたゲームキャプテンのMF島屋八徳が、そう言って笑顔を見せた。シルバーウィークの3連戦、9月20日の町田戦は総力戦で白星を手にしたが、中2日の福島ユナイテッドFC戦はFW岸田和人を出場停止で欠き、FW登録選手抜きで戦うも1-2の手痛い敗戦となった。ただ、「あまり悲観せずに1試合1試合、自分たちのサッカーを出して戦おうとチームで言っていた」と島屋。上野展裕監督も山口らしさの原点回帰を求め、選手たちは大声援のホームスタジアムでやるべきサッカーを追いかけ続けた。

ゲームの立ち上がりはYS横浜のペースで試合が展開。YS横浜は奪ったボールをシンプルに前線に送り、ゴールに肉薄する。「ボールの取られ方が悪かった。組み立てている中で取られてしまっていた」とDF宮城雅史。ただ、宮城と代健司の両センターバックが体を張ってコースを限定、GK一森純も好セーブでその攻撃を耐え抜いていく。

右サイド高く切り込んだ小池龍太がクロス。これが先制点を呼ぶ
右サイド高く切り込んだ小池龍太がクロス。これが先制点を呼ぶ

イージーミスが続いていた攻撃陣も次第に落ち着いてくると、前半30分過ぎからはパスが繋がるようになりサイドバックも積極的に攻撃参加。同34分、右サイドの深い位置から折り返したDF小池龍太のクロスボールにMF福満隆貴がボレーで合わせて山口が先制する。「いいクロスが入ったので当てるだけという感じだった。前節はチームに迷惑を掛けてしまったので、今日のホームでは絶対に負けられなかった」と福満。得点を期待された福島戦で決めきれなかった悔しさをシュートに込めた。

後半立ち上がりもYS横浜にリズム

福満の先制弾でゲームの流れは山口に傾いたが、それもハーフタイムでリセットしてしまう。後半も序盤はYS横浜が主導権を握り、後半6分にDF藤川祐司がボックス内からシュート。一森が好反応して難を逃れるも、カウンターとCKから何度もチャンスを作られてしまう。「第1クールでの課題だった入りの悪さがまた出てきている。立ち上がりから全力で行かないといけない」とはMF鳥養祐矢。率先してチームを引き締めると、「一仕事しないといけない」と前線にも飛び出していき、後半17分、その積極性が相手のチャージを呼んでPKを獲得した。

PKを蹴る福満隆貴
PKを蹴る福満隆貴

キッカーを託されたのは福満。左隅を狙ったボールはGKに読まれるも勢いが勝ってゴールネットを揺らし、リードを2点に広げていく。

気温が29度を超え、日差しも照りつけた維新のピッチ。後半も20分を過ぎると次第にYS横浜の足が止まり気味になる。もちろん山口の選手たちにも疲れは残っていたが、オレンジに染まったゴール裏へと突き進むが如く、選手たちのスイッチがついにオンから切り替わらなくなった。追加点は後半35分。島屋のクロスを岸田が相手DFの背後から鋭くゴールに振り抜くと、ゴールライン上で止めようとしたGKがファンブル。副審がラインを超えたと判断し、主審がゴールを宣誓した。

もっとも後半の2点がすっきりとしたゴールではなかったのも事実。そのもやもやを吹き飛ばしたのは、今日の主役、やはり福満だった。後半44分、カウンターでボールを持ち出した島屋の縦パスを途中出場のDF菊本侑希が巧みに繋いでクロス。福満はゴール前でフリーで受けると、GKの位置を見るやループ気味にシュートを放ちハットトリックとなる3点目を挙げた。これが決勝点となり、山口が4-0で勝利。リーグ戦では5試合ぶりのクリーンシートでYS横浜を下した。

有馬賢二監督(YS横浜)
有馬賢二監督(YS横浜)

YS横浜から見れば、前後半ともに序盤は狙い通りにゲームを進めながらもゴールに至らず、次第に山口にリズムを作られてしまった。有馬賢二監督は「最初のゲームの入りは良かったがボールをロストしてしまった。慌てないでいなすことも必要。どこかでいなせる余裕と技術を持たないといけない」と振り返るとともに、「2点目と3点目のところは映像を見てみたいが、そこで(気持ちが)切れてしまったのかなと」ともコメント。悔しさをにじませたが、相手のストロングポイントを抑えつつ質を高めていく作業を続けていく姿勢を示した。

維新の不敗神話、再び

4510人が来場し、声援を送った
4510人が来場し、声援を送った

山口は維新での不敗神話を誇ってきたが、9月13日の富山戦で1年半ぶりの敗戦。それでも試合後にJ2昇格を後押しする大合唱が轟き、27日は勝利を期して4510人が熱い声援をピッチに注いだ。

身振り手振りで指示し、そして鼓舞する上野展裕監督
身振り手振りで指示し、そして鼓舞する上野展裕監督

「みなさんの力で勝つことができた」。ヒーローインタビューに立った福満はその大声援に感謝。上野監督も試合後の記者会見では「まずは本当にありがとうございました」と冒頭でサポーターに礼を述べ、「選手は本当に良くやってくれた。(選手には)我々が挑戦者として初めてJ3に入ってきた時を思い出してやろうと言った。それは選手も分かっています。今日は体が動かなかったのはもどかしかったですが、良くやってくれました」と選手の奮起も称えていた。

選手たちは一様に、内容には課題を残したと振り返った。それはゲームに入り方であったり、クオリティの部分であったり。上野監督が「選手たちはもっともっとできる。もっともっと成長できる」と話すのに呼応するように、負けを経て、苦しんで掴み取った勝ちを経て、選手たちの成長欲もまた強くなっているようだ。「残りのホームで全勝できるように。アウェーでもしっかり勝ちきって勝ち点を取れるように、また頑張りたい」(島屋)。声援は鳴りやまない。残り7試合、声を背に受け、成長と昇格を追いかける。

(※後半44分の福満選手のゴールについて訂正し再送しています=菊本選手のアシストを追加)

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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