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ジーターの後釜は彼で決まり!? トゥロウィツキがチームを離れ、ヤンキー・スタジアムで試合を観戦

宇根夏樹ベースボール・ライター

あまりにもタイミングが良すぎる。いや、悪すぎるのか。

7月26日、コロラド・ロッキーズが1万5000人のファンに配布したトロイ・トゥロウィツキのTシャツは、背ネームの綴りが間違っていた。正しくは「TULOWITZKI」なのだが、2つめのTが抜けて「TULOWIZKI」となっていた。

その翌日にはヤンキー・スタジアムで、トロント・ブルージェイズとニューヨーク・ヤンキースの試合を観戦するトゥロが目撃された(Tシャツを着ていたものの、ロッキーズが配ったものではなかった)。

なるほど、トゥロの名前の綴りは難しい。また、トゥロがデンバーではなくニューヨークにいたのは、前日にフィラデルフィアの専門医を訪れたついでらしい。トゥロは左太腿を痛めて故障者リストに入っており、ニューヨークもフィラデルフィアも東海岸に位置している。

だが、こうして続くと勘繰りたくもなる。トゥロはロッキーズから去り、今シーズン限りでユニフォームを脱ぐデレク・ジーターの後釜として、ヤンキースのショートストップになるのだろうか、と。この夏もトゥロにはトレードの噂が出ていて、移籍先にはニューヨーク・メッツなど具体的な球団名も挙がっている。

トゥロが背番号「2」(こちらはTシャツでは間違っていなかった)をつけているのは、それがジーターの背番号であるからだ。ヤンキースに入団した場合は違う背番号になるだろうが、トゥロはヤンキー・スタジアムに行った理由について「もう一度、ジーターのプレーを観たかった」とデンバー・ポスト紙の記者に語っている。

いずれもリーグベストのスラッシュライン(.340/.432/.603)や、守備防御点+8といった2014年の数値を出すまでもなく、トゥロはホームでのアドバンテージを差し引いても素晴らしい選手だ。年齢もまだ29歳。現在の契約は2020年まで続き、1億ドル以上が残っているものの、ヤンキースにとっては大きな問題ではない。ヤンキースには今のところ、ジーターに代わるショートストップの候補もいない。

とはいえ、ヤンキースの「アンサー」がトゥロなのかについては疑問が残る。2010年以降の5シーズンで、トゥロが故障者リストに入らなかったのは2011年だけだ。2014年はノバク・ジョコビッチのダイエット&コンディショニング法を手本にしたが、健康を保つことはできなかった。

また、ロッキーズがトゥロを手放すにしても、ヤンキースには、見返りとしてロッキーズを満足させられるトップ・プロスペクトが不足している。ロッキーズは野手より投手を欲しているが、ヤンキースで目につく投手は、AAにいるルイス・セベリーノくらいだ。トゥロの交換要員は1人では済まないし、セベリーノは2014年に評価を急上昇させているものの、前年まではそれほど注目されていなかった。

いずれにせよ、トゥロが故障しているので、どこへ移籍するにしてもシーズン中はなさそうだ。オフに入る前に、ヤンキースがショートストップ――トゥロであろうとなかろうと――を獲得することもないだろう。フェアウェル・ツアー中のジーターを控えに回す? まさか。

来たるオフにFAとなるショートストップは少なくない。ハンリー・ラミレス(ロサンゼルス・ドジャース)、アズドゥルバル・カブレラ(クリーブランド・インディアンス)、スティーブン・ドルー(ボストン・レッドソックス)、J.J.ハーディ(ボルティモア・オリオールズ)、ジェド・ラウリー(オークランド・アスレティックス)らがそうだ。

彼ら5人のうち、背番号「2」はハーディだけだが、ハンリーも2006~12年のフロリダ/マイアミ・マーリンズ(2012年より名称変更)時代には「2」をつけていた。ドジャースで「13」を背負っているのは、「2」がトミー・ラソーダの永久欠番であるためだ。ハンリーの背番号「2」も理由はトゥロと同じ。2月にジーターの引退宣言を聞いたハンリーは「デレク・ジーターは俺のアイドルで、常に俺の手本だ。キャプテン#2と同じダイヤモンドにいることを光栄に思う」と――マーリンズ時代の行動は手本とはまったく違うものの――ツイートしていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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