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ボストン・レッドソックスの2015年を展望。地区最下位→ワールドチャンピオン→地区最下位とくれば……

宇根夏樹ベースボール・ライター

ここ3年間のボストン・レッドソックスは浮き沈みが激しい。地区最下位に終わった2012年から、2013年は地区優勝を果たしてワールドチャンピオンに輝き、2014年は再び地区最下位へ転げ落ちた(まだシーズンは終わっていないが、地区4位に浮上する可能性はごくわずかだ)。

1991年のミネソタ・ツインズは、前年の地区最下位から駆け上がり、ワールドシリーズでは、同じく前年に地区最下位だったアトランタ・ブレーブスを破った。一方、1997年にワイルドカードからワールドチャンピオンとなったフロリダ(現マイアミ)・マーリンズは、その翌年に、地区最下位どころか両リーグ最低勝率まで急降下した。

けれども、ここ3年間のレッドソックスのように、ワールドチャンピオンの前後の年がいずれも地区最下位(あるいはリーグ最下位)となると、これは前例がない。

最もパターンが近いのは、1989~91年のシンシナティ・レッズだろう。1990年のワールドチャンピオンを挟み、1989年と1991年は地区ワースト2位に終わった。ちなみに、1988年と1992年は地区2位だったので、レッズは1990年のワールドチャンピオンを軸とする前後2年間ずつの計5年間に「2位・5位・ワールドチャンピオン・5位・2位」とシンメトリーを描いている。

このレッズと同じパターンを辿った場合、2015年のレッドソックスは地区3位(2011年と同じ順位)となる。ただ、2011年は90勝を挙げており、現行の仕組みではワイルドカードの2枠目に位置する。2015年もこれと同じであれば、「地区最下位→ワールドチャンピオン→地区最下位→ワールドチャンピオン」と急角度のジグザグを描くことも可能だ(そうなると、地区順位を軸としたシンメトリーは成り立っても、ワールドチャンピオンを軸としたシンメトリーは崩れてしまうが)。

シンメトリーになるかどうかはともかく、2015年のレッドソックスは、ワールドチャンピオンに返り咲いてもおかしくない。2014年の夏のトレードでは、レギュラークラスの3選手、ヨエニス・セスペデスアレン・クレイグジョー・ケリーを獲得した。9月17日には、前月に入団したばかりのルスネイ・カスティーヨをメジャーデビューさせている。レッドソックスがカスティーヨに与えた契約は7年7250万ドル。総額はホゼ・アブレイユ(シカゴ・ホワイトソックス)の6年6800万ドルを上回り、キューバから亡命してプロ入りした選手の最高記録を塗り替えた。

夏のトレードで、ジョン・レスター(現オークランド・アスレティックス)、ジョン・ラッキー(現セントルイス・カーディナルス)、ジェイク・ピービー(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)を放出した先発ローテーションは再構築が必要だ。だが、今オフはマックス・シャーザー(デトロイト・タイガース)やジェームズ・シールズ(カンザスシティ・ロイヤルズ)をはじめ、多くの実力ある先発投手がFAとして市場に出てくるし、同じくFAのレスターを呼び戻してもいい。セスペデス、クレイグ、カスティーヨの加入により、飽和状態となった外野手を駒にして、トレードで先発投手を獲得するという手もある。また、ボストン・グローブ紙のニック・カファードは9月半ばに「数名のスカウトとエグゼクティブが前田健太(広島東洋カープ)を視察している」と報じている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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