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2登板続けて退場処分。ロイヤルズのエースはもっと大人になるべきだ

宇根夏樹ベースボール・ライター

ヨーダノ・ベンチュラ(カンザスシティ・ロイヤルズ)のヒートアップが止まらない。

4月12日のロサンゼルス・エンジェルス戦。6回裏1死一塁からアルバート・プーホルスにヒットを打たれたベンチュラは、本塁のバックアップに入った。その目の前で、一塁走者のマイク・トラウトがホームイン。2人は言葉を交わしながら顔を突き合わせ、両チームのダグアウトとブルペンからは選手やコーチが出てきた。プーホルスの前にトラウトがヒットを打った際、一塁へ走りながら何か言ったのがきっかけだったようだ。直前の投球が顔の横を通ったことについてだったのかもしれない。ベンチュラもトラウトに言い返していた。

続いて、18日のオークランド・アスレティックス戦。0対0で迎えた4回表に、2本のタイムリーヒットと3ラン本塁打で5点を失ったベンチュラは、99マイル(約159.3km)の速球をブレット・ロウリーの左脇腹にぶつけた。伏線は前日の試合にあり、ロウリーはアルシデス・エスコバーに強烈なスライディングを見舞った。左膝を痛めたエスコバーは、両脇を抱えられながらダグアウトへ下がり、18、19日の試合も欠場した。ロウリーの死球後、フィールドには2試合続けて両チームのメンバーが集結。審判はベンチュラに退場を宣告した。

さらに、23日のシカゴ・ホワイトソックス戦。7回裏にアダム・イートンの強い当たりをワンバウンドで捕ったベンチュラは、イートンに向かって言葉を投げつけながら一塁へ送球した。こちらは両チームが対戦した6日の開幕戦まで遡り、2回にベンチュラとジェフ・サマージャがそれぞれ死球を与えたのに続き、5回裏にサマージャがぶつけると――この死球も本塁打の直後だった――、球場は不穏な雰囲気に包まれた。そして、両投手が再び投げ合った23日にも、4回裏と5回表にベンチュラとサマージャが1死球ずつ。7回裏にベンチュラが発した言葉にイートンが応酬し、ついに乱闘が起こった。

ロイヤルズからはベンチュラ、エディンソン・ボルケスロレンゾ・ケイン、ホワイトソックスではサマージャとクリス・セールが退場となり、2日後にはケルビン・ヘレーラ(ロイヤルズ)を含む6人の出場停止処分が発表された。ベンチュラは7試合の出場停止。6人のなかで最も重い処分だった(ヘレーラはこの件では出場停止2試合だが、19日の試合でロウリーにぶつけようとした件で、5試合の出場停止処分を受けている。ベンチュラは18日の件では罰金を科されたものの、出場停止はなかった)。

ベンチュラはロイヤルズのエースだ。開幕直前には5年2300万ドルの延長契約も交わしている。まだ23歳とはいえ、ロイヤルズとしてはもっと大人になってほしいところだろう。エースが退場処分を受けて予定よりも早くマウンドを降りたり、出場停止によってローテーションが狂うのもまずいが、それ以上に乱闘中の負傷が怖い。

それはベンチュラのみならず、どの選手にも言えることだ。2010年の夏には、乱闘中にジョニー・クエイト(シンシナティ・レッズ)から顔面を蹴られたジェイソン・ラルーが、脳震盪を起こし、そのまま復帰することなく選手生活を終えた。2013年の開幕直後には、死球に激昂したカルロス・クエンティン(現シアトル・マリナーズ)にタックルされたザック・グレインキー(ロサンゼルス・ドジャース)が、鎖骨を折って1ヵ月離脱した。こういったことは、もう繰り返してほしくない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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