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3日間で2人の不正投球が発覚。どうせやるならもっとプロらしく

宇根夏樹ベースボール・ライター

3日間で2人の不正投球が発覚した。5月21日にウィル・スミス(ミルウォーキー・ブルワーズ)、23日にはブライアン・マティス(ボルティモア・オリオールズ)。どちらも、対戦チームの監督の指摘により、審判がマウンドへやってきて調べた結果、右腕についている異物が確認され、即座に退場となった。スミスもマティスも左のリリーフ投手だ。

不正投球の是非はさておき、嘆かわしいのは、あまりにもわかりやすかったことだ。昨年4月にマイケル・ピネイダ(ニューヨーク・ヤンキース)が首に異物をつけていたのもあからさまだったが、今回の2人はそれよりも見え見えである。

何も、不正投球を推奨しているわけではない。1920年以来、ボールに異物を付着させることは禁じられている(ルール制定の時点でスピット・ボールを持ち球にしていると認定された17投手に限っては、キャリアを終えるまで投げることを許された)。ボールに傷をつけるのも禁止だ。

だが、それでもあえて不正投球をするのであれば、ピネイダも含め、もっと巧妙にすべきではないか。それがプロというものだろう。現役のなかにも、過去に疑惑が浮上した投手は何人かいるが、スミスやマティスのように明白なケースはなかった。2012年6月には、タンパベイ・レイズのジョエル・ペラルタ(現ロサンゼルス・ドジャース)が処分を受けたが、これは誰かが見ていて気づいたのではなく、ペラルタがグラブにつけているパイン・タール(松脂)について知っている者が、対戦したワシントン・ナショナルズにいたためだ。ペラルタは2010年にナショナルズで投げていた。

もっとも、完璧に隠しおおせれば、発覚どころか疑惑が生じることもない。もしかしたら、異物の助けを借りながら好投している投手は、今もいるのかもしれない。

なお、スミスは8試合の出場停止処分を科された。マティスの処分はまだ発表になっていないが、スミスと同様のものになると思われる。ルールに違反した以上、それが発覚すれば、罰は受けなければならない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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