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ブラディミール・ゲレーロの息子がブルージェイズと契約。「次世代のゲレーロ」は彼一人ではない

宇根夏樹ベースボール・ライター

ブラディミール・ゲレーロはこうツイートした。「息子のブラディミール・ゲレーロJr.がブルージェイズと契約したことを、とてもうれしく思う。神の恵みに感謝!!!」

このツイートのとおり、トロント・ブルージェイズは7月2日に16歳のドミニカン、ゲレーロJr.と契約を交わした。MLB.comのジェシー・サンチェスによれば、契約金は390万ドルだという。

父のゲレーロは、ダイナミックな5ツール・プレーヤー(ファイブ・ツール・プレーヤー)だった。極度のバッドボール・ヒッター(悪球打ち)ながら、メジャーリーグ16年間で449本塁打を放ち、スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)は.318/.379/.553。181盗塁も決め、2002年は40-40まで1本塁打に迫った。守っては、レーザービームのような正確さこそなかったものの、抜群の強肩で126補殺を記録。2004年にア・リーグMVPを受賞し、オールスター・ゲームには9度選ばれた。

その父がツイッターを利用しているのは、選手時代のイメージからすると、意外な気もする。しかも、ツイッターはスペイン語と英語で書き込まれている。ゲレーロは野性味溢れるプレーをするだけでなく、メディアに対しては、ほとんど英語を話そうとしなかった。けれども、息子のプロ入りは驚きではない。父と同じ右打ちの外野手であるゲレーロJr.は、以前からプロスペクトとして注目されていた。

父はメジャーリーガーとしてはブルージェイズでプレーしていないが、選手としての最後は、ブルージェイズ傘下のマイナーリーグ・チームで過ごした(その後、独立リーグと契約したがプレーはせず)。カナダという点では、都市こそ異なるものの、キャリア前半の8年間はモントリオール・エクスポズ(現ワシントン・ナショナルズ)でプレーした。そこで、兄のウィルトンとチームメイトだった時期もある。

また、次世代のゲレーロは息子だけではない。アリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のAAでプレーしている外野手のゲイブリエル・ゲレーロと、ニューヨーク・メッツ傘下のDSL(ドミニカン・サマーリーグ)に所属している右投手のホゼ・ゲレーロは、どちらもウィルトンとブラディミールの甥だ。ゲレーロJr.の契約直前には、ホゼの弟、遊撃手のグレゴリーもメッツと契約した。ゲレーロJr.を含め、彼らは皆、ドミニカ共和国で運営されている「ブラディミール・ゲレーロ・アカデミー」の出身だ。ウィルトンはこのアカデミーでインストラクターを務めている。

ドミニカ共和国には、アルーという有名なベースボール・ファミリーが存在する。フェリペマティヘススの3兄弟は、メジャーリーグでそれぞれ15年間以上プレーし、1963年にはサンフランシスコ・ジャイアンツで揃って外野を守ったこともある。フェリペの息子モイセスと3兄弟の甥であるメル・ロハスに加え、短期間ながら、3兄弟のいとこであるホゼ・ソーサもメジャーリーグでプレーした。

アルーと並び、ゲレーロの名前もドミニカン・ベースボール・ファミリーとして知られるようになる日が来るかもしれない。父のゲレーロがエクスポズでプレーしていた当時、監督として采配を揮っていたのはフェリペだった。

ゲレーロは6月にこういったツイートをしている。「今日はとても喜ばしい。父と慕うフェリペ・アルーが、カナダのホール・オブ・フェイム(殿堂)に入るのだから」「フェリペ・アルーは、自分がメジャーリーグで選手として成長する手助けをしてくれた人物だ」「フェリペ・アルー、自分のことを信頼し、メジャーリーグで毎日プレーする機会を与えてくれて、とても感謝している」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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