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クリス・セールは次の登板でペドロ・マルティネスの記録を塗り替える!? さらに300奪三振の可能性も

宇根夏樹ベースボール・ライター

6月のピッチャー・オブ・ザ・マンス(月間最優秀投手)には、マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)とクリス・セール(シカゴ・ホワイトソックス)が選ばれた。

両投手とも受賞は2度目。シャーザーは5月に続く連続受賞で、セールは2012年5月以来の栄誉となった。6月の成績は、シャーザーが5先発して38.2イニングを投げ、3勝2敗、防御率2.33、FIP2.49。セールは6先発、44.1イニングで、2勝2敗、防御率1.83、FIP0.90。防御率とFIPはセールの方が優れているが、インパクトという点ではシャーザーの方が上かもしれない。シャーザーは6月20日にあわや完全試合のノーヒッターを達成し、その前の登板では16三振を奪って1安打完封を演じた。

ただ、セールも偉業を成し遂げている。6月は6登板とも10奪三振以上。5月下旬の2登板を含め、10奪三振以上を8試合連続として、1999年にペドロ・マルティネスが樹立したメジャーリーグ最長記録に並んだ。それなのにあまり目立っていない感もあるのは、10奪三振以上を続けている8試合で、ホワイトソックスが4勝4敗だったせいもあるのだろう。ペドロが記録した8試合連続10奪三振以上において、ボストン・レッドソックスは1敗しか喫しなかった。

また、ESPNのダグ・パディーラによれば、セールが6月に記録した奪三振率15.23は、2011年7月のランディ・ジョンソン(15.79)と1998年5月のケリー・ウッド(15.43)に次ぐ、歴代3位の月間記録だ。当然ながら、セールはシーズン全体の奪三振率も12.28と高い。2001年にランディが記録した歴代最高の奪三振率13.41には及ばないが、現在のペースを保てば、2013年にダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)が記録した奪三振率11.89を上回り、21世紀以降の2位にランクインする。

さらに、セールにはもっと大きな話題になりそうな記録の期待もかかる。2002年のランディとカート・シリングを最後に途絶えている、シーズン300奪三振だ。現在の奪三振率なら、220.0イニングを投げれば到達する。また、ここまで15先発で141奪三振、1登板平均9.40奪三振からすれば、300奪三振には32先発が必要となる。ホワイトソックスは7月2日の時点で76試合を終えているので、残りは86試合。余裕があるわけではないが、300奪三振は可能だ。

とはいえ、セールはまだ、300奪三振の半分にも達していない。しかも、先発登板とイニングのキャリアハイは2013年の30先発と214.1イニング。奪三振はこの年の226が最も多く、先発投手としての奪三振率は昨シーズンの10.76が最高だ。ここ2年は変化球の投球割合を入れ替え、スライダーよりもチェンジアップを多投しているが、2シームの快速球を含めた3球種を持ち球とする点は変わっていない。

まず注目すべきは、次の登板でも10三振以上を奪い、ペドロを抜いてストリークの新記録を打ち立てられるかだろう。登板予定は7月5日のボルティモア・オリオールズ戦。セールは5月28日の試合で、オリオールズを相手に12三振を奪っている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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