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ハメルズが演じたノーヒッターは移籍前の置き土産か。ニックネームからすると新天地はドジャースがぴったり

宇根夏樹ベースボール・ライター
コール・ハメルズ(フィラデルフィア・フィリーズ)Jul 25, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

6月9日のクリス・ヘストン(サンフランシスコ・ジャイアンツ)と6月20日のマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)に続いて、今シーズン3人目のノーヒッター達成者が現れた。7月25日にリグリー・フィールドで先発登板したコール・ハメルズ(フィラデルフィア・フィリーズ)が、シカゴ・カブスから13三振を奪い、与四球2、被安打ゼロ、無失点で最後まで投げきった。

フィリーズのノーヒッターは史上13度目で、ハメルズは昨年9月1日の12度目にも名を連ねているが、この時は6回裏を終えるまでに108球を費やし、7回表に代打を送られたため、最後にマウンドにいたのは4番手のジョナサン・パペルボンだった。それから約11ヵ月後、ハメルズは129球を投げ、今度は単独でノーヒッターを達成した。

ただ、ハメルズがフィリーズ史上14度目のノーヒッターにその名を刻むことはなさそうな気配だ。それどころか、7月25日のノーヒッターは、フィリーズでの最後の登板になるかもしれない。ハメルズの契約は2018年(2019年は球団オプション)まで残っているが、フィリーズは再建期に入っており、ハメルズには開幕前からトレードの噂が浮上している。

ハメルズの出身地に本拠を置くサンディエゴ・パドレスが獲得することはないだろうが、彼のニックネームである「ハリウッド」――主として端正なルックスからきているらしい――にほど近いロサンゼルス・ドジャースをはじめ、獲得に興味を示している球団は少なくない。来シーズン以降の総額7350万ドルは高額ながら、球界屈指のチェンジアップを操る左腕を加えれば、ポストシーズン進出とその先に向けて大きな後押しとなる。

ウェーバーの経由を必要としないトレードのデッドラインは7月31日だ。その後も、8月31日までに獲得すればポストシーズンのロースターに入れられるが、その場合はウェーバーの期間中に、他のチームにさらわれる可能性がある。

MLB.comのポール・カセーラによれば、1900年以降のノーヒッター達成者のなかで、達成した年のシーズン途中にトレードで移籍したのは、1951年のクリフ・チェンバースと2010年のエドウィン・ジャクソン(現カブス)しかいないという。チェンバースは5月6日にノーヒッターを演じ、6月15日にピッツバーグ・パイレーツからセントルイス・カーディナルスへ移籍した。ジャクソンのノーヒッターは6月25日、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからシカゴ・ホワイトソックスへ移ったのは7月30日だった。チェンバースもジャクソンも、ノーヒッターは1度だけ。ジャクソンには2度目の可能性もあるが、今シーズンはブルペンに回されていて、7月19日にロースターから外された。

同じ年にノーヒッターを2度演じた5投手のうち、1人目は1938年に2登板続けてノーヒッターをやってのけたジョニー・バンダ・ミーアで、5人目はハメルズとチームメイトだった2010年に達成したロイ・ハラデイだ。ハメルズがこの夏にチームを移った上で、6人目として彼らに加われば「同じ年に異なるチームでノーヒッターを達成した史上初の投手」となる。また、このままフィリーズではマウンドに上がらず、新天地での初登板で成し遂げれば「バンダ・ミーアに次いで史上2人目の2登板連続ノーヒッター」だ。さらに、残りのレギュラーシーズンで達成できなくても、移籍さえしていれば「ハラデイに次いで史上2人目となる、同じ年のレギュラーシーズンとポストシーズンでノーヒッター」のチャンスはある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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