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これこそまさしく無名のルーキー。背番号も名前もないユニフォームで試合に出場

宇根夏樹ベースボール・ライター
シンシナティ・レッズ Sep 7, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

3月16日、シンシナティ・レッズとアリゾナ・ダイヤモンドバックスが対戦した試合の6回表、レッズの攻撃中に椿事が発生した。代打として登場した選手が着ていた赤いユニフォームの背中には、名前どころか背番号もなかった。

彼の名前はジェイク・ケイブ、23歳の外野手だ。まだメジャーデビューはしておらず、昨年12月にルール5ドラフトでレッズから指名され、ニューヨーク・ヤンキースから移籍した。とはいえ、ケイブはすでに今春のエキシビション・ゲーム(オープン戦)に10試合以上も出場している。かぶっていたヘルメットの後ろには「30」と背番号が記してあった。また、2月下旬にはインスタグラムに「CAVE 30」と記された赤いユニフォームの写真をアップしている。アウェーの試合にユニフォームを持ってくるのを忘れたのだろう。

ユニフォームにまつわる椿事は、過去にも起きている。最近では、2014年の開幕3試合目に、シカゴ・カブスのジュニア・レイク(現トロント・ブルージェイズ)が誤ったユニフォームを着て出場した。同じグレーのアウェー用ユニフォームながら、チームメイトの胸には「CUBS」、レイクの胸には「CHICAGO」とあった。綴りの間違いは多く、2009年4月にはワシントン・ナショナルズのアダム・ダンライアン・ジマーマンの2人が、胸に「NATINALS」と書かれたユニフォームでプレーした。「O」の文字が抜けており、正しくは「NATIONALS」だ。2007年8月にはアトランタ・ブレーブスのジェフ・フランコーアが、背中に「FRANCOUER」と綴られたユニフォームを着たことがあった。こちらは「E」と「U」が入れ替わっていた。

今年のスプリング・トレーニングでも、3月2日のヤンキース戦で、デトロイト・タイガースのルーベン・アラニースがコーチのユニフォームを借用してマウンドに立った。3月12日のレッズ戦に臨んだシアトル・マリナーズには、紺のユニフォームを着ている選手とエメラルドグリーンのユニフォームを着ている選手がいた。

何はともあれ、無名の選手として出場したおかげで、ケイブの知名度は上がった。今シーズンは、その名をもっと知らしめるチャンスもあるはずだ。レッズはレフトのレギュラーが決まっておらず、アダム・デュバルスコット・シェブラータイラー・ホルトヨーマン・ロドリゲスジェシー・ウィンカーらとともに、ケイブも候補の一人に挙がっている。また、ライトのジェイ・ブルースはトレードの噂が絶えず、センターのビリー・ハミルトンにしても、2年続けて50盗塁以上を稼いでいるとはいえ、昨シーズンは打率、出塁率、長打率とも3割未満だった。この「トリプル3割未満」は、400打席以上の211人中、他にイチロー(マイアミ・マーリンズ)しかいなかった。

ケイブはスピードと守備力を備えており、左投げ左打ちの外野手という点でも、昨シーズンまで在籍していたヤンキースのブレット・ガードナーと少し似ている。ガードナーがここ2年とも15本塁打以上を放っているのに対し、ケイブは一度もシーズン2ケタ本塁打を記録していないが、ガードナーもそれまでのプロ9シーズンは1ケタ本塁打だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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