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ドジャースの新人投手がマエケン以上の快挙を惜しくも逃す。ノーヒッター継続のまま8回1死で降板

宇根夏樹ベースボール・ライター
APRIL 14, 2011(写真:ロイター/アフロ)

4月8日にメジャーデビューしたロス・ストリップリング(ロサンゼルス・ドジャース)は、8回1死までサンフランシスコ・ジャイアンツを無安打に封じていた。ノーヒッター達成まであと5アウトだ。イライアス・スポーツ・ビューローによると、メジャーデビューした試合でノーヒッターを演じたのは、今から124年前、1892年のバンパス・ジョーンズしかいない。

しかし、ストリップリングが続く打者に四球を与えたところで、デーブ・ロバーツ監督は被安打ゼロのまま降板させた。マウンドを引き継いだクリス・ハッチャーが、いきなり本塁打を許し――打ったトレバー・ブラウンはこれがメジャーリーグ初アーチだった――ドジャースは同点に追いつかれ、10回裏にサヨナラ負けを喫した。ロバーツ監督の判断には疑問の声も上がっている。

ただ、事情を踏まえれば、交代は妥当に思える。投球数はちょうど100球。ストリップリングは2年前の3月にトミー・ジョン手術を受け、昨年6月に復帰した。昨シーズンの14先発中、最も多く投げたのは93球だった。開幕直前にロサンゼルス・タイムズのビル・シェイキンが報じた記事によれば、ドジャースは今シーズン、ストリップリングの投球回を125~150イニングにとどめるつもりでいる。登板ごとの投球数も考慮しているはずだ。

ストリップリングはこれまで、AAより上のクラスで投げたことがなかった。カルロス・フリーアスとザック・リーを抑え、先発5番手に入ったが、本来であれば、2人とともにAAAで開幕を迎えるはずだった。それが、メジャーリーグでローテーション入りした理由には、先発投手の相次ぐ故障があった。

キャンプインした時点では、クレイトン・カーショウ、スコット・キャズミアー、前田健太、ブレット・アンダーソン、ヒョンジン・リュ(柳賢振)のローテーションが有力だったが、そのうち2人は開幕を迎えられなかった。リュは肩の故障で出遅れ、シーズン初登板は5月半ばが予定されている。アンダーソンは3月上旬に椎間板の手術を受け、前半戦は欠場する見込みだ。さらに、彼らの穴を埋めるはずだったアレックス・ウッドとマイク・ボルシンガーのうち、ボルシンガーは3月下旬に右脇腹を痛めた。ブランドン・ビーチーも3月下旬に肘の張りを訴え、昨年4月にトミー・ジョン手術を受けたブランドン・マッカーシーは、早くても後半戦に入るまで戻ってこない。ドジャースは野手も、数人が故障している。これ以上の故障者を出したくないという気持ちも、ロバーツ監督にはあったのかもしれない。

ストリップリングは2012年のドラフトで5巡目・全体176位指名を受け、ドジャースに入団した。この年、同じテキサスA&M大からドラフト指名された選手には、全体19位のマイケル・ワカ(セントルイス・カーディナルス)らもいる。ワカはツイッターで、ストリップリングのメジャーデビューを祝福した。2013年5月30日にメジャーデビューしたワカも、その試合で7回1失点と好投したが、後続が逆転を許し、白星は挙げられなかった。また、ストリップリングと同じく、ワカもメジャーリーグ1年目に惜しくもノーヒッターを逃している。レギュラーシーズンの最終登板で、9回2死まで無安打に封じながら、そこから内野安打を打たれ、マウンドを降りた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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