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史上最速の投手がWBC出場に意欲。母国キューバの代表入りは無理でも、その手があった

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)FEB 23, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

その手があったか。2009年にキューバから亡命したアロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)が、再びWBCのマウンドに上がるチャンスは消えたはずだった。キューバは亡命選手を含まず、国内にいる選手だけで来年3月のWBCに臨む。これについては「来春のWBCもドリームチームはなし!? キューバは亡命選手を参加させず、ハーパーは出場に前向きだが…」に書いた。

だが、チャップマンはそのことを知りながらも、2009年以来2度目のWBC出場に意欲を見せている。ESPNのマーリー・リベラに「呼んでくれるなら、喜んで参加する」と語り、クローザーではなく7回や8回に投げることも厭わないと続けた。

種明かしをすると、チャップマンはこの発言の前に「僕はUSAの市民だ。チームUSAでプレーできる」とリベラに言っている。今年3月、チャップマンはアメリカ合衆国の市民権を得た。

チャップマンなら、ジム・リーランド監督が歓迎するのはもちろんのこと、自身が出場する条件に「勝てるメンバー」を挙げたブライス・ハーパー(ワシントン・ナショナルズ)も文句はないはずだ。もっとも、アメリカ合衆国が優勝し、その瞬間にチャップマンがマウンドにいたなら、違和感を覚える人もいるだろう。また、市民権はすぐに取得できるものではないため、次のWBCでそうなるとは思えないが、キューバから亡命した選手が何人も、チームUSAでプレーする日が来るかもしれない。

チャップマンのチームUSA入りに異議を唱えるわけではないが、そもそも、WBCの出場資格は緩い。アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)は2006年にアメリカ合衆国の選手として出場し、2009年はドミニカ共和国が大会直前に行った練習に参加していた(故障によって出場はせず)。ブルース・チェンは2006年と2009年にパナマ代表として投げ、2013年は1月に中国の代表入りする意向を明かしていた(2月に出場しないことを表明)。ハーパーがWBCでともにプレーすることを望んでいる一人、アンソニー・リゾー(シカゴ・カブス)は、2013年にイタリア代表として出場している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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