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前年の新人王が1イニングに3ポジションを守る。使ったグラブも3種類(借用含む)

宇根夏樹ベースボール・ライター
アディソン・ラッセル(左)とクリス・ブライアント Apr 18, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

昨シーズンの新人王、シカゴ・カブスのクリス・ブライアントが、5月18日の試合で1イニングに3ポジションを守った。

1対1で迎えた12回裏、ミルウォーキー・ブルワーズに無死満塁とされたところで、レフトを守っていたブライアントは、グラブを外野手用から内野手用に替え、「5人目の内野手」として三塁のポジションについた。今シーズン、三塁とレフトで併用されているブライアントは、両方のグラブを持ってきている。内野手を1人増やしたのは、打球が内野手の間を抜けるのを防ぐためだ。外野には2人しかいなくなった。

浅めのセンターフライで三塁走者はタッチアップせず、1死満塁。ここで、ブライアントはハビア・バイエズと入れ替わり、一塁へ回った。打球方向の傾向と、送球の正確さが考慮されたのだろう。2人は互いにグラブも交換した。

遊撃フライで2死満塁。ブライアントはファースト・ミットをバイエズに返し、再び外野手用のグラブをはめてレフトへ戻った。続く打者は一塁フライに倒れ、カブスはサヨナラ負けのピンチを脱した。

このポジション変更は、ジョー・マッドン監督によるものだ。ただ、試合はその後も、マッドン監督の策に引きずられたかのように、奇妙な展開を見せた。

13回表のカブスの攻撃は、2死一、二塁から敬遠四球で満塁に。打席には、先ほどまで投げていたトラビス・ウッドが入った。ウッドは打撃が得意な投手ながら、マッドン監督はすでに野手を使いきっていた。

初球の空振り後は、4球続けてボール。押し出し四球により、三塁走者がホームを踏んだ。

イライアス・スポーツ・ビューローによると、投手が延長戦で押し出し四球を選び、決勝点となる打点を挙げたのは、1996年6月19日のチャンホ・パク以来だという。イニングは同じ13回表。今回と異なり、カブスはその試合で敗れた。カブスの出場選手には、現在はシアトル・マリナーズの監督を務めるスコット・サービスもいた。

13回裏、ウッドは先頭打者に二塁打を打たれ、次の打者を打ち取ったところで降板したが、白星を手にした。カブスは7人目と8人目の投手を注ぎ込み、何とか逃げきった。カブスからは21人が出場。残っていたのは、この試合に登板したジョン・ラッキーを除く、先発投手4人のみだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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