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有望株のパワーヒッターが警官にエスコートされて球場へ。過去には車中でユニフォームに着替えた選手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョーイ・ギャロ(テキサス・レンジャーズ)Jun 25, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

7月26日、テキサス・レンジャーズのジョーイ・ギャロが、警官にエスコートされて球場に到着した。

スター・テレグラムのステファン・スティーブンソンによると、ギャロがAAAからの昇格を知ったのは、当日の午後1時半頃だった。その時点でギャロがいたラウンドロックもテキサス州だが、アーリントンのグローブライフ・パークまでは180マイル(約289.6km)以上離れていて、車で3時間近くはかかる。しかも、アーリントン付近のハイウェイは、夕方によく渋滞する。

残り約30マイル(約48.3km)の地点から、ギャロはレンジャーズに依頼を受けた警察に先導され、球場に向かった。試合開始は午後7時5分。スポーツデイのエバン・グラントは、ギャロが午後6時15分に到着したと報じている。結局、雨のために試合開始は1時間遅れたが、「6番・一塁」として先発出場したギャロは、2打席目に448フィート(約136.6m)のホームランを叩き込んだ。

過去には、ダグ・ミラベリも警察にエスコートされたことがあった。2006年5月1日のことだ。こちらは先導ではなく、ボストンのローガン空港からフェンウェイ・パークまで、車に乗せてもらった。球場に着いたのは試合が始まる直前。ミラベリは車中でユニフォームに着替えた。

ボストン・レッドソックスはこの日、サンディエゴ・パドレスからミラベリを獲得した。かつてのように、ティム・ウェイクフィールドのナックルボールを受けさせるためだ。レッドソックスは前年12月にミラベリをパドレスへ放出し、ジョシュ・バードをウェイクフィールドの専用捕手としたが、うまくいかなかった。バードはミラベリの交換要員の一人として、パドレスへ移った。

22歳のギャロは、ミラベリのような特殊技能は持ち合わせていない。ポジションは内野の両コーナーとレフトだ。けれども、選手としての資質はミラベリを遥かに上回る。ギャロはトップ・プロスペクト(有望株)だ。2013~14年にマイナーリーグで2年続けて40本塁打以上を放ち、昨シーズン初めてプレーしたメジャーリーグでは、123打席の半分近くで三振を喫したものの、6本塁打と才能の片鱗を示した。現在は、クリス・セール(シカゴ・ホワイトソックス)ら先発投手の交換要員として、噂に上っている。

もっとも、ギャロが今夏にチームを移ったとしても、警察のエスコートは不要だろう。ギャロの獲得を望んでいるチームは、今シーズンではなく来シーズン以降に目を向けている。チームへ合流するのが数日遅れても、まったく支障はない。

ギャロと警察にまつわる話は、もう一つある。ただし、こちらはエスコートの一件と違い、愉しげな要素はない。

ギャロのインスタグラムには、こんな写真がアップされている。夜に駐車場らしき場所で撮ったものらしい。私服のギャロとノマー・マザーラの間に警官が立ち、3人でこちらに向かって微笑んでいる。キャプションによると、数ヵ月前にダラスのダウンタウンを歩いていて警官に呼び止められ、何事かと少し心配になったが、「君たちのこと知ってるよ」と言われ、「一緒に写真を撮ってくれるかな」と頼まれたという。ダラスでは7月7日に警官が銃撃され、5人が亡くなった。写っているのはその一人だ。ギャロは事件の翌日に写真をアップし、この警官をはじめとする犠牲者と彼らの家族に、追悼の意を示した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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