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滑り込むことなく本盗に成功!!(ただし、驚異のスピードとは違って…)

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウィル・マイヤーズ(サンディエゴ・パドレス)Jul 2, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

サンディエゴ・パドレスのウィル・マイヤーズが、7月31日のシンシナティ・レッズ戦でホームスティール(本盗)を決めた。

今シーズンのホームスティールは、メジャーリーグ全体でこれが10度目だ。けれども、他の走者との重盗ではなく、単独で成功させたのは、ジャコビー・エルズベリー(ニューヨーク・ヤンキース)とメルビン・アップトンJr.(当時パドレス/現トロント・ブルージェイズ)に、マイヤーズの3人しかいない。しかも、エルズベリー、アップトンと違い、マイヤーズは滑り込むことなくホームインした。

と言っても、マイヤーズはスピードスターというわけではない。このホームスティールでシーズン20盗塁まであと1としたが、昨シーズンまでは通算3シーズンで16盗塁に過ぎず、マイナーリーグ時代の最多も2010年の12盗塁だった。ちなみに、エルズベリーは盗塁王を3度獲得し、アップトンもシーズン40盗塁以上を3度記録している。

6回裏、マウンドにいたホーマー・ベイリーは、四球を与えて2死満塁とした直後、捕手からの返球を受けると、二塁の方を向いて数歩進んだ。三塁走者のマイヤーズは、それを見逃さなかった。ベイリーが振り向いた時、マイヤーズはすでにホームを駆け抜けていた。タイムはかかっておらず、ベイリーは送球態勢にすら入れなかった。

ベイリーにとって、この試合はシーズン初登板だった。だが、ベイリーは経験の浅い若手ではなく――若手であってもしてはならないミスということに変わりはないが――2012~13年は2年続けて200イニング以上を投げ、両年ともノーヒッターを達成している。マウンドから遠ざかっていたのは、肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けたためだ。また、ベイリーはメジャーデビューした2007年にもホームスティールを決められているが、この時の三塁走者は、捕手が二塁へ送球してからスタートを切った。

マイヤーズにホームインされたところで、ベイリーは降板した。もっとも、ベイリーがホームを踏ませたのは2人――1人目はマイヤーズの内野ゴロで生還――しかいなかった。試合はレッズが3対2で勝ち、ベイリーは1年3ヵ月ぶりの復帰登板を白星で飾った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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