チャップマンに続いてミラーも放出したヤンキースが、直後に同じ救援投手のクリッパードを獲得した理由とは
今夏のトレード市場において、ニューヨーク・ヤンキースはセラー(売り手)なのか、バイヤー(買い手)なのか。
ブルペンの出入りは目まぐるしい。7月25日にアロルディス・チャップマンをシカゴ・カブスへトレードしたのに続き、31日にはアンドルー・ミラーをクリーブランド・インディアンスへ放出した。その一方で、ミラーのトレード直後には、アリゾナ・ダイヤモンドバックスからタイラー・クリッパードを手に入れた。チャップマンの見返りに獲得した選手のなかにも、3人と同じリリーバーのアダム・ウォーレンが含まれている。
チャップマンとミラーの交換要員として、ヤンキースは計8人を獲得した。ウォーレンを除く7人は24歳以下(平均21.4歳)と若く、誰もまだメジャーデビューしていない。これは、ヤンキースがセラーであることを物語っている。しかし、ブルペンから抜けたチャップマンとミラーは28歳と31歳で、ブルペンに加わったウォーレンとクリッパードも28歳と31歳だ。チャップマンが今オフにFAになるのに対し、ウォーレンのFAは最速でも2018年のオフだが、ミラーとクリッパードの2人を比べると、クリッパードの方が1年早く、来シーズンが終わった時点でFAになる。FAまで2シーズン以上あるウォーレンは別にしても、クリッパードの獲得は、明らかにバイヤーの動きだ。
ヤンキースのスタンスとしては、将来に目を向けたセラーでありながら、さりとて、今シーズンについて白旗を掲げることもできないというところだろう。ヤンキースは負け越してはいない。オーナーとGMの意向が一致しておらず、折衷案が採られた可能性もある。すべての決定権がブライアン・キャッシュマンGMに委ねられていれば、クリッパードを手に入れることはなかった気がする。
クリッパードもウォーレンも、かつてキャッシュマンGMが放出した選手だ(2人がヤンキースに在籍した時期は重なっていない)。力量をわかっているからこそ呼び戻したという見方もできるが、今夏のトレードで獲得する対象として若手以外には目を向けていなかったため、とりあえず彼らで手を打ったのかもしれない。クリッパードとウォーレンには申し訳ないが、「Better the devil you know than the devil you don't know(知らない悪魔よりも知っている悪魔の方がまし)」という言い回しもある。少なくとも、クリッパードは奪三振率10.99を記録している(もちろん、チャップマンとミラーの奪三振率はそれより上だ)。
ともあれ、フルスロットルではないにしても、ヤンキースがセラーに回っていることは間違いない。8月1日のトレード・デッドラインを迎えるまでには、カルロス・ベルトランも動きそうな気配が漂っている。