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「血染めのソックス」はワールドチャンピオンをもたらした。「血が滴る小指 byドローン」の結末やいかに

宇根夏樹ベースボール・ライター
トレバー・バウアー(クリーブランド・インディアンス)Oct 17, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ア・リーグのリーグ・チャンピオンシップ・シリーズは、クリーブランド・インディアンスが3勝0敗として、1997年以来のワールドシリーズ進出に王手をかけた。第3戦に先発登板したトレバー・バウアーは「1)何て素晴らしい勝利!!2)俺のスパイクは少し汚れちまった。3)これまでのどの降板時よりも大きなスタンディング・オベーション。(その後ろに炎の絵文字×3、100点満点の絵文字×3)」とツイートした。

ただ、バウアーは1回裏、打者4人に対して計21球を投げて2死一、二塁となったところでマウンドを降りた。この時、右投手であるバウアーの右手小指からは、血が滴り落ちていた。スパイクが少し汚れちまったのは、この血によるものだ。ツイッターには、そのスパイクの写真も一緒にアップされている。

実は、バウアーは第2戦の登板が予定されていた。ところが、第2戦の前々日の夜にドローンのメンテナンスをしていて小指を切ってしまい、登板は第3戦に先送りされた。バウアーは投球への影響はないと語り、最速95.1マイルの速球を投げたものの、10針縫った傷口から出血し、降板を余儀なくされた。昨年5月に「インディアンスではドローンが飛行するだけでなく、打たれたホームランは飛行機の横を飛んでいく」で書いたように、バウアーは前にもドローンにまつわる話題を振り撒いたことがある。

代わって緊急登板したダン・オテーロからアンドルー・ミラーまで、6人のリリーフ投手が2点に抑え、インディアンスは4対2でシリーズ3勝目を挙げた。そのため、バウアーの初回降板は問題にならなかったようにも見えるが、果たしてそうだろうか。

インディアンスはすでに、先発投手を2人欠いている。ダニー・サラザーは9月9日の投球中に右腕の張りを訴え、その8日後には、カルロス・カラスコが右手に打球を受けて骨折した。サラザーは実戦形式のリハビリ登板を始めており、ワールドシリーズで復帰できるかもしれないが、2人ともこのまま投げられない可能性もある。そこにバウアーが加われば、先発投手陣の台所事情はさらに苦しくなる。

ポストシーズンの出血と言えば、12年前にボストン・レッドソックスで投げたカート・シリングが思い出される。シリングはポストシーズン2登板目に右足首の腱を痛めたものの、皮膚の縫合によって腱を固定してマウンドに上がり、そこから2試合、ソックスを血で染めながら快投して2勝を挙げた。シリングの力投もあり、レッドソックスは86年ぶりにワールドシリーズを制して「バンビーノの呪い」を解いた。

今回、シリングはこうツイートしている。「頼むからバウアーのことで俺のところにツイートするのはやめてくれ。彼の場合は自業自得だし、ドローンによってチームメイトとファンに迷惑をかけている。#ステューピッド(愚か)」

違いはそれだけではない。12年前のレッドソックスは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズで0勝3敗から4連勝した。一方、今年のインディアンスはまったく逆で、ここまで3試合とも勝っている。もっとも、この両チームには共通点もある。ソックスに血を滲ませながら投げたシリングを交代させたのと、小指から血を滴らせるバウアーを降板させたのは、どちらもテリー・フランコーア監督だ。

ということは、ポストシーズンの結末も同じになるのだろうか。それはまだわからない。インディアンスがワールドチャンピオンになれば68年ぶりだが、左右の数字「6」と「8」を並べ替えれば「86」となり、レッドソックスの86年ぶりと一致するというのは、さすがにこじつけが過ぎるだろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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