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メジャーリーガー黒田博樹のベストゲーム5選

宇根夏樹ベースボール・ライター
黒田博樹(ロサンゼルス・ドジャース)APRIL 27, 2010(写真:ロイター/アフロ)

今年限りで引退する黒田博樹(広島東洋カープ)は、2008年から2014年まで、ロサンゼルス・ドジャースとニューヨーク・ヤンキースで計7シーズンを過ごし、レギュラーシーズンの212試合とポストシーズンの5試合に登板した。それらのなかから、ベストゲームを5つ選び「メジャーリーガー黒田博樹」を振り返ってみた。

■2008年7月7日(対アトランタ・ブレーブス)

ドジャースの投手としても日本人投手としても、野茂英雄以来となるノーヒッター(前者は1996年9月17日、後者は2001年4月4日)どころか、ドジャースではサンディ・コーファックス(1965年9月9日)に続く2人目の完全試合まで、あと6アウトに迫った。8回表、黒田は先頭打者のマーク・テシェーラに二塁打を打たれたものの、そこから6人を続けて討ち取り、被安打1の完封を記録した。

その後、黒田はヤンキースでテシェーラとチームメイトに。2012年7月13日には、テシェーラが2本塁打を放って計5打点を挙げ、5点を失った黒田を援護した。また、この試合で決勝点を挙げてヤンキースを勝利に導いたラッセル・マーティンは、2008年7月7日も黒田とバッテリーを組んでいた。マーティンはどの捕手よりも多い90試合で黒田の球を受けており、2位以下を60試合以上も引き離す。

黒田より5歳下のテシェーラは、今年8月にシーズン終了後の引退を表明した。8歳下のマーティンは、トロント・ブルージェイズとの契約が2019年まで残っている。

■2008年10月4日/ディビジョン・シリーズ第3戦(対シカゴ・カブス)

対戦した27人中8人を出塁させたものの、7回表に福留孝介にヒットを打たれ、1死一、二塁となったところで降板するまで、ホームは踏ませず。残した走者も、リリーバーが生還を許さなかった。第1、2戦のデレク・ロウチャド・ビリングズリーに続いて白星を挙げ、ドジャースに3連勝のスウィープをもたらした。

なお、黒田はメジャーリーグで10人の日本人選手と対戦し、福留にはポストシーズンを含めて10打数4安打(打率.400)、川崎宗則にも16打数7安打(打率.438)とよく打たれている。ただ、他に黒田からヒットを打った日本人選手はイチローしかおらず、その対戦成績は6打数1安打(打率.167)でしかない。

■2010年8月30日(対フィラデルフィア・フィリーズ)

黒田が最もノーヒッターに近づいたのが、この試合だ。シーズン終了後に2度目のサイ・ヤング賞を受賞するロイ・ハラデイと投げ合い、8回1死まで与死球1、与四球2の3人しか出塁させなかった。シェーン・ビクトリーノにヒットを打たれ、次の打者から三振を奪ったところで降板し、残る1.1回はホンチー・クオが完璧に抑えた。

2年前のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで、黒田はビクトリーノにぶつけにいった。1年前の同じシリーズでは、初回に4失点の口火となるヒットを打たれた。

■2012年10月10日/ディビジョン・シリーズ第3戦(対ボルティモア・オリオールズ)

この試合は、当時40歳のラウル・イバニエスが、9回裏に代打同点ホームランを放ち、続いて12回裏にサヨナラ・ホームランを叩き込んでヒーローになった。だが、そこに至るまでには黒田の好投があった。8.1回は日本人投手のポストシーズン最長イニング。この年にメジャーデビューした2人、ライアン・フラハティマニー・マチャドのホームランによる2失点に抑えた。

■2013年4月14日(対ボルティモア・オリオールズ)

デレク・ジーターがヤンキー・スタジアムで最後にプレーした2014年9月25日など、捨て難い試合は他にもあるが、メジャーリーグでは最後となる5度目の完封を記録した試合を挙げたい。黒田は立ち上がりから次々にゴロを打たせ、2本の併殺打を含め、ゴロによるアウトは18に達した。さらに、内野手が失策を犯してアウトにならなかったゴロも2本あった。

ファングラフスのデータによると、黒田の通算ゴロ率48.6%は2001年以降に1000イニング以上を投げた171投手の31位で、この年の46.6%はア・リーグ9位にランクインする(岩隈久志は48.7%で6位)。けれども、黒田自身だけでなく岩隈にしても、ゴロの山をこれほど高く築いた試合は他にない。なかでも、マニー・マチャドアダム・ジョーンズライアン・フラハティの3人は、全打席とも内野ゴロに仕留めた。また、二塁を守っていたロビンソン・カノーは、エラーをすることなく6本のゴロをさばいた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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