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ワールドシリーズの1試合6打点は、今年のラッセルが4人目。その価値は7年前の松井秀喜より高かった

宇根夏樹ベースボール・ライター
A.ラッセル(カブス)ワールドシリーズ第6戦の満塁本塁打 Nov 1, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ワールドシリーズで1試合6打点を記録した選手は4人いる。ボビー・リチャードソン(1960年/ニューヨーク・ヤンキース)、松井秀喜(2009年/ヤンキース)、アルバート・プーホルス(2011年/セントルイス・カーディナルス)に続き、今年はそこにアディソン・ラッセル(シカゴ・カブス)が加わった。

レギュラーシーズンの1試合最多は、ジム・ボトムリー(1924年/カーディナルス)とマーク・ウィッテン(1993年/カーディナルス)が記録した12打点だ。ポストシーズンでは、ディビジョン・シリーズでエドガー・マルティネス(1995年/シアトル・マリナーズ)ら4人が1試合7打点を記録しているが、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズとワールドシリーズで1試合に7打点以上を挙げた選手はいない。

リチャードソンとプーホルスは第3戦、松井とラッセルは第6戦に6打点を挙げ、いずれもチームを勝利に導いた。松井の場合はこの試合で優勝が決まり、シリーズMVPも手にした。一方、ラッセルはMVPこそベン・ゾブリストに譲ったものの、そこで敗れればクリーブランド・インディアンスの優勝が決まる「エリミネーション・ゲーム」だった。シリーズにおける価値という点では、松井よりもラッセルに軍配を上げたい。ラッセルが1回表に挙げた2打点は、本来なら外野フライに過ぎず、ライトとセンターのミス・コミュニケーションが生んだ二塁打によるものだが、3回表はグランドスラムを放った。

ちなみに、4人のうち、ワールドシリーズ優勝&シリーズMVPは松井しかいない。プーホルスは優勝したが、MVPはチームメイトのデビッド・フリーズが受賞した。フリーズは第6戦から第7戦にかけての3打席で大爆発した。9回裏2死一、二塁の場面で同点に追いつく三塁打を放つと、11回裏にはサヨナラ勝ちとなる本塁打を叩き込んだ。そして、翌日は1回裏に再び2死一、二塁の場面で二塁打を打ち、2人を還して同点とした。

プーホルスとは逆に、リチャードソンはMVPを受賞したものの、優勝はできなかった。このシリーズは、第7戦の9回裏にビル・マゼロスキーがサヨナラ本塁打を放ち、ピッツバーグ・パイレーツがヤンキースを下した。リチャードソンは7試合で12打点を挙げ、シリーズ記録を打ち立てた。これに並ぶ選手は出ておらず、ワールドシリーズ優勝を逃したチームからのMVPも他にはいない。リチャードソンはこの年を挟み、1958年、1961年、1962年にワールドシリーズ優勝を経験したが、3シリーズとも0打点に終わった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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