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メジャーリーグで「マッド・ドッグ」と言えばこの選手たち。彼らに共通するのは気性の激しさではなくて……

宇根夏樹ベースボール・ライター
グレッグ・マダックス October 23 1999(写真:ロイター/アフロ)

盛んに報じられているように、ジェームズ・マティス国防長官は「マッド・ドッグ」のニックネームを持つ。

こう呼ばれる人物は、彼が最初ではない。メジャーリーグでも、ビル・マドロックグレッグ・マダックスが「マッド・ドッグ」として知られる。ニックネームとして定着しているとは言い難いが、ライアン・マドソン(オークランド・アスレティックス)もそうだ。

ロッテ・オリオンズでもプレーしたマドロックは、気性の激しい選手だった。メジャーリーグの15年間で18度の退場を喰らっている。マダックスは23年間で2度、マドソンは11年間で皆無だ。これは、2人が投手であることが大きな理由だが、マダックスは、ピッチング・スタイル、風貌、キャラクターのいずれも「マッド・ドッグ」とはかけ離れていた。通算の奪三振率は6.06、与四球率は1.80。力でねじ伏せるのではなく、抜群の制球で打者を討ち取り、歴代8位の355勝を挙げた。

マダックスには「プロフェッサー」のニックネームもある。ついでに言えば、兄のマイク・マダックス(ワシントン・ナショナルズ投手コーチ)も穏やかな風貌だ。兄はメジャーリーグで15年間投げたが、弟ほどの快投はできず――通算勝利は弟より316少なく、弟と違ってセーブを挙げているが、その数は20に過ぎない――「マッド・ドッグ」とも「プロフェッサー」とも呼ばれなかった。

マドロック、マダックス、マドソンの3人に共通するのは、ラストネームの最初だ。Madlock(マドロック)、Maddux(マダックス)、Madson(マドソン)。いずれも、Mad(マッド)から始まる。それに対し、国防長官はJames Mattis。名前のどこにもマッドはない。調べたところ、ジミー「マッド・ドッグ」マティスというDJがいたが、国防長官のニックネームとのつながりはわからなかった。

なお、マダックスのニックネームは、ラストネームに引っかけてあるだけでなく、「マッド・ドッグ」とは対極のイメージからきているのだろう。小柄なホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)が「ヒガンテ(スペイン語で巨人)」と呼ばれるのと同じようなものだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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