今シーズンは全休する投手と契約した理由。あるいは復帰を待たずに解雇した理由
2月12日、タンパベイ・レイズはネイサン・イオバルディと契約を交わした。
ニューヨーク・ヤンキースにいたイオバルディは、8月半ばにトミー・ジョン手術――高校時代に続いて2度目――を受け、11月下旬に解雇された。今シーズンはリハビリに費やし、試合には登板しない可能性が高い。
にもかかわらず、レイズが契約したのは、来シーズンを見据えてのことだ。1年200万ドルの契約には、来シーズンの球団オプション200万ドル(+出来高)がついている。2018年の年俸が400万ドル(200万ドル+200万ドル)と考えれば、レイズにとって決して高額ではない。
2018年の開幕を迎える時点で、イオバルディは28歳だ。まだ開花はしていないものの、昨シーズンの速球(4シーム)は平均97.0マイルを記録した。これは、100イニング以上では、ノア・シンダーガード(ニューヨーク・メッツ)の97.9マイルに次ぐ。快速球を生かすため、イオバルディは2015年からスプリッターを投げ始めた。
過去にも、レイズは似たようなことをしている。ジョニー・ベンタースは2014年9月に、こちらは何と3度目のトミー・ジョン手術を受け、11月にアトランタ・ブレーブスから解雇された。翌年3月、レイズはベンタースと2年間のマイナーリーグ契約を結んだ。ベンタースは昨年6月からマイナーリーグで5登板したところで再び左肘を痛め、オフにFAとなったが、レイズの意図はイオバルディの契約と同じだった。
トミー・ジョン手術ではないものの、昨年12月に契約したウィルソン・ラモスもそうだ。昨シーズン、ワシントン・ナショナルズで正捕手を務めたラモスは、10月に右膝の手術を受け、11月にFAとなった。今シーズン、ラモスがプレーできるのは7月か8月以降だが、レイズは2年1250万ドルで迎え入れた。こちらの契約にも出来高がつく。
こういった契約は、レイズの専売特許ではない。一例を挙げると、昨年2月、ボルティモア・オリオールズはネイト・アドコックとマイナーリーグ契約を交わした。アドコックは前年8月にトミー・ジョン手術を受け、3ヵ月後にシンシナティ・レッズからFAとなった。昨シーズンを全休したアドコックは、今春、ノン・ロースター・インバイティー(キャンプ招待選手)として、オリオールズのスプリング・トレーニングに参加する。
一方、ヤンキースがイオバルディを解雇したのにも、理由がある。イオバルディは年俸調停の申請権を持っており、今シーズンの年俸は昨シーズンの560万ドルから上昇し、700万ドル前後になる見込みだった。ヤンキースは解雇した後、より安い金額で再契約することを目論んでいたようだ。そして、レイズにさらわれたというわけだ。
来シーズン、トミー・ジョン手術から復帰したイオバルディは、ヤンキースを相手にどんなピッチングをするのだろうか。早くも今から、その日が待ち遠しい。