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朝ドラ「次期ヒロイン」芳根京子さん、おめでとう!

碓井広義メディア文化評論家

今年秋からのNHK朝ドラ「べっぴんさん」のヒロインに、芳根京子さんが決定したそうです。

昨年の連ドラ初主演作を見て、「面白い子が出てきたなあ」と思い、コラムで取り上げたり、座談会で話題にしたりと、ささやかながら応援していたので、びっくりしながらも納得。

昨年7月に書いた「日刊ゲンダイ」のコラムと、今年1月の「コンフィデンス」での座談会を採録しておきます。

連ドラ初主演 芳根京子が示す驚異のポテンシャル

TBS「表参道高校合唱部!」

“オリジナル脚本のドラマ”と聞けば、どこか応援したくなる。池井戸潤の小説が原作の「花咲舞が黙ってない」も、往年の人気アニメを実写化した「ど根性ガエル」も結構だが、ゼロから物語を生み出そうとするオリジナル・ドラマは、テレビならではの楽しみだ。

主人公は、香川県小豆島から東京の私立高校に転校してきた真琴(芳根京子)。親が離婚し、母親の実家で暮らすことになった。とにかく合唱が好きで、廃部寸前の合唱部の再建に奔走する。

初回を見て驚いたのは、連ドラ初主演という芳根京子が示すポテンシャルの高さだ。ヒロイン生来の明るさや意志の強さだけでなく、感情の細やかさまで表現している。何より、表面的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している点に注目した。

舞台となる高校には、生徒を「一軍」「二軍」「圏外」などとランク付けするスクールカーストや、映画「キャリー」を思わせるイジメも存在する。しかし、ヒロインを際立たせるためのイジメ描写なら、あまりやらないほうが得策だろう。

このドラマの良さは、まず劇中の歌に本物感があること。仲間と歌う合唱の楽しさが伝わってくること。また芳根をはじめ、森川葵、吉本美優、志尊淳など“新たな波”を感じさせる若手俳優たちだ。ドラマと共に成長する彼らを見てみたい。

(日刊ゲンダイ 2015年7月21日)

●「コンフィデンス」で行った、ライターの吉田潮さん、産経新聞の三品貴志さんとの座談会でも、話題になりました。

――続いて7月期。『表参道高校合唱部!』『民王』『恋仲』といった話題作がありました。

碓井氏

この夏はリアルな政治でも総理が話題になることが多かったし、そういう意味でも『民王』でしたね。おかしかった。そりゃ、そんなに深く考えてやってるわけではないんでしょうけど、俗物総理とバカ息子の中身が入れ替わるようなドタバタコメディを放映すること自体が、うまく社会批評にもなっているという。

吉田氏

実は『表参道高校合唱部!』にはさっぱり反応できなかったんです、残念ながら。あー慈英さん歌うまいんだ、堀内敬子さんも声がきれいとか、神田沙也加さんも城田優さんも歌うまいなーとか。そういう反応のみ。個人的に合唱という文化がちょっと苦手だということが大きかったかもしれない。

碓井氏

逆に、昔ながらの合唱をドラマの軸に据えたところが挑戦だったように思います。たとえどんなにヘタでも、合唱そのものは人の気持ちを打つ。彼らが肉体で声を出して歌うだけで、おじさんちょっと泣けてくるという(笑)。芳根京子さんも、久々に良い意味で田舎っぽい子が出てきたなと思います。実際は東京の方だそうですが、うまくこういう子が伸びていけばいいなと。

三品氏

比較するのもおかしな話ですが、時期が一部重なっていた『まれ』よりもヒロイン像が朝ドラっぽくて、朝ドラよりも朝ドラらしい、しっかりしたドラマでした。ちょうど同じ頃に『天皇の料理番』が『花燃ゆ』より大河ドラマ的だという評判もよく耳にしましたが、これらは2015年の皮肉でしょうね。

【3人が注目した作品/15年7月期】

碓井氏

『表参道高校合唱部!』(TBS系)

『民王』(EX系)

『初森ベマーズ』(TX系)

三品氏

『表参道高校合唱部!』(TBS系)

『恋仲』(CX系)

『初森ベマーズ』(TX系)

吉田氏

『探偵の探偵』(CX系)

『民王』(EX系)

『エイジハラスメント』(EX系)

(オリコン「コンフィデンス」2016年1月 新年特別号)

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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