イースターの心:ちょっとした常識と希望について
イースターって?
今週は「受難週」。キリストが金曜日に十字架にかかり埋葬された週です。今週は、痛みや悲しについて考える週でした。そして、3日目の日曜日に復活したことを記念して、今年2013年は3月31日(日)が「イースター(復活祭)」。イースターは、毎年その日にちが変わる移動祝日。春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日です(ああ、ややこしい)。たいていは4月ですが、今年は3月。
英語のイースター(Easter)の語源については、ゲルマン人の春の月名(Eostremonat)に由来するなど、諸説あるようです。
実はイースター(復活祭)は、キリスト教にとっては、クリスマスよりも本来的には大切な祝日だそうです。キリストの復活が、キリスト教の始まりに直結するからです。なにしろ、もともとユダヤ教では土曜日が「安息日」で仕事をせず礼拝する日だったのに、ユダヤ教から生まれたキリスト教では、復活を記念して日曜日に礼拝が行われるようになったほどですから。
イースター・ストーリー
さて、キリストが誕生した2000年前のイスラエルは、困った状況でした。誇り高きユダヤの民たちでしたが、当時最大規模に広がったローマ帝国の属国に成り下がっていました。政治的にも宗教的にも、長く辛い状態が続いていました。
そこに、イエス誕生! 古臭く腐敗した宗教家たちをばっさばっさと論破し、庶民的な行動で人気を集めます。ところが、出る杭は打たれるで、政治的宗教的権力者らに恨まれ、死刑!。庶民の中にも、イエスがローマ帝国を倒し、イスラエルの復興をしてくれると信じていたのに裏切られたと思った人もいるようです。
ああ、もう最悪です。リーダーが死刑です。弟子(スタッフ)たちも、散り散りに。ここで有名な「ペテロの否認」。この人なんか、前の日には「何があってもついて行きます!」とか勇ましこと言っていたのに。いざとなったら逃げ出して、「お前、イエスと一緒にいただろ」って言われて、「あんな男なんか、知るもんか!」と3度も否定。
まあ、人間なんてこんなものです。立派なこと言っている人に限って、変わり身も早かったりします。
ということで、このまま終わっていれば、今頃私たちの休日は日曜日ではなかったでしょう。クリスマスもありませんでしたね。
ところが、キリストはよみがえった! がっかりして、めそめそして、情けない状態だった弟子たちも、勇気100パーセント!(「忍たま乱太郎」オープニングテーマのようにね)。もう一度集まり、太陽のように微笑みながら、世界に伝道するでっかい夢を持ち始めます。
あんまりおちゃらけて書いていると、敬虔なクリスチャンの方に怒られるかもしれませんが、まじめに言えば、イースターは、悲しみと絶望に沈んでいる人のための、喜びと感謝と希望の日だと、思います。
雪はとてけて、春になりました。
イースターエッグと希望
イースターといえば、うさぎ(イースターラビット)と、たまご(イースターエッグ)が有名ですね。うさぎは子だくさんで繁栄の象徴です。イースターラビットが、イースターエッグを運んでくるというお話もあります。
ところで、たまごって、知らない人が見ればまるで石。でも、固いカラの中では、命がはぐくまれています。死んだ石みたいなものから、新しい命が生まれます。
希望は、安楽椅子からは生まれません。希望は、悲しみの涙から、希望は怒りのうめきから生まれます(『きぼう こころひらくとき』ほるぷ出版)。
現代の希望学によれば、希望は、新しい大切な何かを見つけ、そこに近づく具体的な方法を知り、そしてみんなと一緒に行動し始めたときに、生まれます(『希望のつくり方』 玄田 有史著 岩波新書)。
希望は、「こころを開き、一歩を踏み出すとき」に生まれます(『きぼう こころひらくとき』)。
でも、人生そんなに甘くない?
せっかくやる気を出した弟子たちでしたが、ローマ帝国からの独立戦争がはじまります。紀元70年には大敗北。後に、全ユダヤ人は、これまでのイスラエル国内から追放され、世界を放浪することになります。こういうことで、『屋根の上のバイオリンひき』(ロシアに住むユダヤ人たちの話)の話や、『アンネの日記』(ナチスによるユダヤ人虐殺)、そして現代にいたるパレスチナ問題が起きるわけです。
ユダヤ人たちは苦労しました。クリスチャンたちも、いろいろ迫害受けるし、辛酸をなめました。でも、もしもイスラエルから追放されていなかったら、こんなに早く広くキリスト教は世界に広がらなかったかもしれません。
ローマ帝国に滅ぼされ、迫害されたわけですが、ローマ帝国による地中海世界の安定と道路網の整備は、キリスト教布教にとって大きなプラスだったと、歴史家たちは考えています。
社会心理学的には、ローマ帝国によるキリスト教の迫害は、ローマの庶民たちをおびえさせましたが、同時に殉教者の存在は、キリスト教への肯定的関心を高めたと考えられます。
さて、難しいことはさておき。
絶望の中から希望は生まれる。楽には行かず挫折もするけれど、復活できる。希望は失望に終わらない(ローマ人への手紙5章5節)と、春のイースターの日に、みんなで思えればと、願っています。
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