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インターネットではなぜデマ(流言)が広がるのか:ネットの心理メカニズム

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

人と人とのコミュニケーションがあるところには、デマ(流言)が起きます。

新しいコミュニケーション・ツールができるたびに、問題になります。

LINEに関するデマに注意 よくある嘘の傾向は

よくある嘘としては、(1)「○月からLINEが有料になる」「タイムライン機能の利用ごとに○円かかる」~(2)「18歳未満は利用できなくなる」「○月でLINEサービスが終了する」~(3)「運営側がメッセージを勝手に閲覧する」「LINEがハッキングされて個人情報が漏れる」~といった内容。

出典:LINEに関するデマに注意 よくある嘘の傾向は ITmedia ニュース

■デマとは

デマとは、誰かが意図的に本当ではないとわかっていて広げていくものです。

デマは、「デマゴギー」が語源。

デマゴギーとは、「相手を中傷し、悪評を招くように流す、虚偽の情報」。

またデマゴーグとは、「感情的・情緒的アピールを駆使して大衆の激情や偏見に訴え、権力(公的ポスト)を獲得・維持しようとしたり、その主張を拡散しようとする政治家」のことです。(日本大百科全書)

■嘘とは

意図的に事実ではないことを語るのが「」ですが、だますつもりはなくても、結果的に事実と反すれば「嘘」と言われることもありますね。

■流言とは

それに対して、本来の意味からいえば。

流言とは、正確ではないのに、口コミを通して広がっていいくことがらです。流言は、だれかがわざと広げようとしているのではありません。広げている人に悪意はなく、確信している場合もありますが、半信半疑ながら話題に出して、結果的に広がっていくこともあります。

自分だって信じていなくても、話題に出しただけで広がっていくのが、流言(デマ)です。

■デマと流言

このように本来は違う意味ですが、流言という意味で「デマ」や「嘘」が使われることもありますね。ネット上の誤った情報も、意図しない流言のときもあれば、誰かが意図的に作り出した嘘の内容が、悪意のない人によって広がることも多いでしょう。時には、善意によって広がることも多いでしょう。

■意図も悪意もなくても、流言(デマ)が広がる理由

社会心理学の研究によれば、流言が発生し、広がる条件として次の3つがあります。

  1. 重要であること。たとえば、命や財産にかかわるような重要なことであるほど、流言は発生しやすくなります。
  2. あいまいさ。はっきり分かっていることは流言が起きにくいのですが、良く分からない事柄に関して、流言は発生しやすくなります。
  3. 不安。人々の不安や心配が高いほど、流言は発生し、広がっていきます。

■LINEでなぜ流言(デマ)が広がりやすいか

たとえば、LINEを使っている人にとって、重要なことがらほど、流言(デマ)は広がりやすくなります。またLINEは、急激に広がったとはいえ、まだあいまいでよくわからない部分があるということも、有料化や管理者がのぞき見するといった嘘の流言(デマ)が広がりやすいことにつながるのでしょう。

これらは、重要であり、あいまいな情報です。

さらに、何かの理由でユーザー全体に不安が広がっていれば、さらに流言(デマ)は伝わりやすくなるでしょう。災害などの社会不安もあるでしょうし、思春期の子たちが親子関係受験、様々な劣等感などで不安になりやすい時期もあるかもしれません。

また、ネットは匿名で姿が見えないウソをつきやすいメディアでもありますので、意図的な嘘や無責任な発言も伝わりやすいのでしょう。

■インターネットと流言(デマ)

流言(デマ)は、もともとは個人の口コミにより伝わるものです。しかし、インターネットによって、個人が一度に大量の情報発信をすることが可能になってしまいました。

マスメディアなら、多くのチェックが入るのに、ネットではノーチェックで広がることもあるでしょう。本当は、拡散させる前に少しネット上でも調べてみれば、「その話は嘘」という情報も見つかるはずなのですが。

ネットで発言することは、駅前でマイクで話すようなものです。リアルでそのようなことをするとすれば、だれでも話す内容をよく考えるでしょう。ところが、ネットコミュニケーションの特徴として、本当は世界に開かれているのに、まるで個人的に内緒話をしているような感覚になっていしまうことがあります。

無自覚のまま、無責任に、偽りの情報が、広がります。それも、口コミの何万倍もの速さで。

大きな影響力が生じる情報発信は、「チェック、ダブルチェック」です。

■インターネットによる伝達欲求の高まり

人は、自分が知った情報を人に伝えたくなります。芸能人を見たり、事故を目撃すれば、なおさらです。「ねえ、ねえ、聞いて、聞いて」と、周囲の人におしゃべりしたくなるでしょう。

おしゃべりだけなら、問題はありません。でもさらに、情報を広げるネットという便利な道具を持てしまった私たちは、しっかり自覚しないと、情報伝達欲求が爆発的に大きくなってしまいます。さらに、不特定多数の人に広がることを意識できなくなります。

■ネットコミュニケーション

こうして、ネット上の情報漏えいや、プライバシー侵害や、様々な流言(デマ)が飛び交うことになるのです。個人的な人間関係が壊れたり、大きな社会問題になることすらあるでしょう。

現代社会で生きていく私たちは、便利だけれど危険な、ネットというもの、ネットコミュニケーションというもの、そして私たちの心の仕組みを、知らなくてはならないでしょう。

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さらに詳しく

情報欲求の高まり・伝達欲求の高まり・不安感情の正当化・興奮状態によるチェック不足・広範囲の広がり・「流言集団」・情報の反復性・情報の過剰・「流言の種」・情報の変容(平均化・強調化・同化)・・・

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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