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AKB48総選挙の心理学:アイドルは欠点を長所に変えた人

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

【第5回AKB総選挙】

【第5回AKB総選挙】大島敗れる…指原莉乃、ついに初センター奪取! 篠田麻里子はAKB卒業を発表

■『第5回AKB48選抜総選挙』開票イベント(8日、横浜・日産スタジアム)

人気アイドルグループ・AKB48の32ndシングル(8月21日発売予定)を歌う選抜メンバーをファン投票で決める『第5回AKB48選抜総選挙』が開票され、昨年4位だったHKT48の指原莉乃(20)が初の1位を獲得、センターに決まった。

出典:【第5回AKB総選挙】大島敗れる…指原莉乃、ついに初センター奪取! 篠田麻里子はAKB卒業を発表 オリコン 6月8日(土)21時

フジテレビ「AKB48選抜総選挙生中継SP」。4時間の生放送。すごいですね。7時からスタートした番組。9時に結果が出て、その後2時間どうするんだろうと思っていたら、楽屋裏の様子とか、インタビューとか、両親との会話とか、いろいろと続いています(現在9時半)。夢中で応援しながら見ている人もいれば、バカらしいとか、日本はどうなるとかいいながら、結局見ている人もいることでしょう。

ともかくこれだけ多くの人々の注目を集めるのですから、AKB48はすごいです。今回の総選挙でも、7万人のファンが集まり、国内外700社のマスコミも集まっているそうです。(私も、某えらい女性の皆さんと一緒にAKBの曲を歌って踊ったりしたし、「マジすか学園」を楽しく観たりしました。)

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会いに行けるアイドル

昔の映画スターは、雲の上の人でしたが、今の芸能人はぐっと身近です。特に「アイドル」は、身近です。絶世の美人でもなく、抜群の歌唱力で歌い上げるわけでもなく、もっと身近な存在です。さらに、AKBはその身近さを直接のコンセプトにしました。

AKB48物語

成長」は、物語の根本です。ほとんどの物語が、一生懸命だけれど不十分な主人公が登場し、問題に突き当たりながら、ライバルと競い合い、友情に支えられ、問題を乗り越え、成長していく。友情、努力、勝利です。そこに、私たちは感動します。AKB48のグループとしての成長もそうですし、メンバー一人一人の成長もそうでしょう。

小説やテレビドラマは、すでに結末が決まっています。でも、現実はちがいます。ただ現実は複雑ですし、結果がでるまで時間がかかるので、簡単に感動できません。

AKB48は、「現実」なのに、様々な仕掛けを使って、「物語」をわかりやすく示してくれました。これは、感動しますね。

やらせではなく、普通なら見られない楽屋裏にカメラが入り、少女たちの苦悩と夢を映し、物語性豊かな現実の姿を見せてくれました。

少女たちの成長

若者は、短い時間で大きく変化し、成長します。学校の先生などは、部活や文化祭や体育祭を通して、若者たちの成長を見て感動を味わいます。私も、宿泊研修(構成的グループエンカウンター)を通して、学生たちの成長を目の当たりにすると、感動できます。特に少女たちの成長は絵になりますね。

そんな若者たち、少女たちの成長はすばらしいですが、普通の人は目の前で見ることはできません。AKB48は、その感動的な成長を見せてくれました。(「少女達の成長:エンカウンターとAKB48と感動と」)

指原莉乃物語:貴種流離譚(きしゅるりたん)?

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指原莉乃さん。2012年6月、『週刊文春』で、過去に元ファンの男性と交際していたと報じられました。プロデューサーの秋元康氏は「明日からHKT48に移籍」するように命じます。(HKT48:福岡・博多を拠点に活動する女性アイドルグループ。2011年に誕生。秋元康プロデュース。)

何と、衝撃的な、突然のご命令。都落ちです(九州のみなさんすいません)。

ところが、何と、今回の総選挙で第一位!!!。みごとな返り咲き。「見にくいアヒルの子」「小公女」のように、ほんとはすごいのに、とても苦労してさまよい、そしてみごとに花開きます(貴種流離譚)。人は傷つくことで成長します。

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AKB48自体が、そういうストリーですね。これまで中心的に活躍してきたメンバーは、自分たちでチラシ配りまでしてきました。売れない時代の苦労話は、かっこわるいのであまり公にしないこともあるでしょうが、AKB48にとっては、大切なストーリーですから、みんなで共有します。

「7人の劇場から7万人のスタジアムへ」です。

感動します。応援したくなります。

「やらせ」がない真実

テレビや芸能界は、「やらせ」に満ちていると、実際以上に思われています。私も、テレビに出てスタジオで何かを食べて「美味しいですね」なんて言ったりしますが、「本当は美味しくないんでしょ?」と聞かれたりします。いえ、ほんとに美味しいですよ。

東京のバラエティーにも出たことがありますが、一方で綿密に準備されている部分もありますが、同時に「やらせ」なしの部分ももちろんあります。そうでないと、面白い絵がとれません。

でも、みんないろいろ疑います。芸能界の賞レースも、大人の事情やら芸能事務所の力やらといった話をみんながしています。けれど、AKB48の「選抜じゃんけん大会」も、「選抜総選挙」も、やらせなし! 真実の戦い。誰が勝つかわからない。これは、興奮するね。これは、応援したくなるね。

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ロールプレイングゲーム(RPG)としてのAKB48

小説やテレビドラマは、結末が決まっています。私たちが、どんなに心の中で願っても願わなくても、結論は変わりません。RPGは、プレイヤー自身が腕を磨き、登場人物を育てます。これは、ハマる人はハマります。

もう簡単には会いに行けませんが、自分の力で、あの子を上に押し上げられます。テレビで発表される得票数に、あなたの一票が含まれています。

現実の世界にいる、かわいいキャラクターのようなメンバーを、自分の力で育てられる。舞台の裏まで見ることができる。これは、いいね!

少女達の成長:エンカウンターとAKB48と感動と

競争の心理:つぶすつもりで来てください

私たち人間は、競争が好きです。心理学の実験でも、競争させることでパフォーマンスが上がることが実証されています。子どもたちも、すぐに競争したがります。競争、楽しいです。

でも、今の子ども若者は競争を避けると言います。現代社会は、とても優し社会なので、傷つきやすい子ども若者が育ってしまったのでしょうか。傷つくことも、傷つけることも、とても恐れています。

それでもやっぱり、競争も戦いもスキ! 物語の世界では、相変わらず、敵と戦い、ライバルと戦います。AKB48も戦います。

篠田麻里子さんは語ります。

「〜悔しい力をどんどん先輩、私たちにぶつけてきてください。潰すつもりで来てください。」

この言葉を受けて、後輩対も奮起します。たとえば、渡辺麻友さんも今回のテレビ番組で、「がつがつ前へ」進んできたと語っています。

「つぶすつもりで」とか「がつがつ」とか、ここのところ若者から聞かなくなった言葉です。こんな言葉に不安を感じる人もいるかもしれません。でも、AKB48は、傷つけ合いません。激しく戦いますが、「みんな仲良し」です。仲良し少女の激しいぶつかり合い。これは、面白い! 安心して、一生懸命応援し、どっちが勝っても感動です。

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アイドルは欠点を長所に変えた人たち

AKB48のメンバーは、クラス一のかわいい子を選んだのではないといいます。クラスの5番めぐらいにかわいい子だといいます。美人過ぎないことは、大切です。身近に感じるし、応援したくなります。

昔のアイドルも、実は「歌や踊りは苦手」なんて言う人もいます。あるアイドルが、ファンたちとテレビに出たとき、そのアイドルは「足が太いのが悩み」と語りました。すると、ファンたちはびっくりして、「そこが魅力なのに!」。

アイドルたちは、みんな不十分な人たちです。欠点を持っています。そしてがんばる人たちです。だから、応援したくなります。アイドルとしてデビューする人たちは、本当に「普通の人」なのではありません。欠点を長所にする力を持っている人、みんなに好感を与え、応援を引き出す力を持っている人たちです。

私は、AKB48のみなさんとお会いしたことはないのですが、関ジャニ∞の錦戸亮さんや、アイドリング!!!の菊地亜美さんや河村唯さんとスタジオでご一緒したことがあります。

テレビで見る以上に、みなさん魅力的です。一生懸命さを感じます。本番以外のときでもそうです。菊池亜美さんが廊下を走っている姿だけでも一生懸命で、ユーモラス。河村唯さんも番組終了後の話も、とっても面白い。サービス精神旺盛。なるほど、これが「アイドル」かと、思いました。

NST新潟総合テレビ『スマイルスタジアム』で、関ジャニ∞の錦戸亮さんと今ご一緒しました。かっこいいだけではなくて、男性から見ても、とても素敵な人ですね。会った人は、みんなファンになりそうです。

  1. ジャニーズ

出典:碓井真史 @ 心理学「こころの散歩道」

もちろん、歌や踊りが上手、演技力が素晴らしいというアイドルもいるわけですが、それでもやっぱり、不器用なところがあるのが、アイドルかな。一生懸命だからこそ、笑える。一生懸命だからこそ、応援したくなる。そんな人間的魅力に満ちているのが、アイドルでしょう。

アイドルを応援したくなるし、がんばるアイドルの姿を見て、自分自身もがんばろうと思えるのでしょう。

(AKB48のみなさんとお会いする機会があれば、きっと私も、もっとAKB48の魅力を知り、好きになるでしょう。)

ココ・シャネルも言っていますね。

「欠点は魅力にもなるのに、みんな隠すことばかり考えている」

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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