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中3女子がゴミ置き場に赤ちゃん置き去り:子どもたちを守るために必要なことは?

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
少女がわが子を捨てるような最悪事態を防ぎたい. pro foto

◇中3女子がゴミ置き場に赤ちゃん置き去り

中3女子「1人で産んだ」…埼玉乳児放置で逮捕(読売新聞)

出産直後の男児をごみ置き場に放置 15歳の女子中学生を逮捕:埼玉(産経新聞)

[ゴミ置き場に赤ちゃん置き去りにした疑いで中3女子生徒逮捕 ゴミ置き場に赤ちゃん置き去りにした疑いで中3女子生徒逮捕:動画(TBS)]

8月10日、へその緒がついたままの男の赤ちゃんが、タオルに包まれゴミ置き場に置かれているのが発見され、同日夜、中学3年生の女の子が逮捕されました(保護責任者遺棄容疑)。赤ちゃんは病院へ運ばれ、無事でした。逮捕された女子生徒は容疑を認めています。

女子生徒は、6月から学校を休んでいました。家族も、妊娠出産に気づいていなかったようです。

◇中学生赤ちゃん置き去り事件の第一報を聞いて

ニュースを聞いてまず、ほっとしたのが、「赤ちゃんは無事」というニュースでした。

残念ながら、毎年のように日本のどこかで聞くニュースです。中学生や高校生が、スーパーや学校のトイレで出産し、赤ん坊を殺してしまう事件です。出産した本人も命の危険性があったわけですが、意図的に生まれたばかりの赤ん坊を殺せば、殺人罪です。今回は、そんな最悪の事態は免れました。

それでも、毎年のように聞くニュースでも、とてもショッキングです。

◇赤ん坊を産み捨てる女子生徒は悪い子か

もちろん、犯罪行為をしています。悪いことをしたに決まっています。でも、いわゆるワルは、こんなヘマをしません。人の言いなりになんかならない子もいますし、セックスになれていて避妊をきちんとする子もいます。何度も妊娠し、何度も人工中絶する子もいます。

今回の女子生徒がどんな子なのかは全くわかりませんが、子どもをトイレで産み捨ててしまうような子の多くは、むしろ「悪い子」ではないのです。真面目で、おとなしい子だからこそ、こんな結果になってしまうこともあるのです。

◇女性の自律

慣れている女子は、性的な行為についても、ここまではいいけど、ここから先はダメと、はっきり男性に言える子もいます。きちんと避妊しろと言える子もいます。言うことを聞かない男を怒鳴れる子もいます。

ところが、慣れていない子は、途中で男性にストップがかけられません。避妊の知識も、ないわけではありませんが、でも教科書的な知識であり、その現場で男性にはっきり言うことなどできません。

仮に真面目で上品だとしても、自律していないと、流されてしまいます。「NO!」と言えることが必要です。

今回の詳細はまったく不明ですが、中学生が妊娠する場合、中学生の男子はまだ妊娠させる能力が低いので、相手が成人男性であることもままあります(能力が低いだけで妊娠するときは妊娠するが)。

男性は、好き勝手なことをして逃げていき、後は女性だけが取り残され、責任を負わされる形です。悪い男を何とかしないといけませんが、女性の自律が必要ですし、中学生のような子どもをみんなで守る必要があります。生まれる赤ちゃんも、みんなで守らなければなりません。

◇性教育とは

性教育は、性器の名前や避妊法の種類を暗記することだけではありません。性教育とは、男性として、女性として、互いに異性を尊重し、良い人間関係をつくるためのものではないでしょうか。

学校の関係者は、努力を続けています。しかし、このような事件が起きてしまうということは、その女子生徒と相手男性には、充分な性教育の成果が上がっていなかったことになるでしょう。

性教育の貧困が、性の悲劇を生みます。

◇人間関係:友人、親子、学校

女性と男性の人間関係、互いに愛し合い尊重し合い協力し合う人間関係が崩れるとき、問題が生じます。男女の問題が生じたときに、家族の人間関係も不十分だと、問題が深刻化します。さらに学校関係者、友人との人間関係も不十分だと、問題は複雑化します。

問題が起きたとき、誰かに相談できれば、何とかなるものです。少なくとも、最悪の事態は避けられるでしょう。

心理学の研究によれば、親子のコミュニケーションが豊富なほど、娘の性交開始年齢は上がる(親子関係が良いと中学生のセックスなどは減る傾向がある)という研究もあります。

ハッピーな家族は、問題が起きていない家族ではなく、みんなで問題を共有する家族です。

◇今回の事件を通して

今回の事件も、もちろん犯罪行為は許されませんし、中学3年生といっても、中学3年生なりの責任があります。けれども、この女の子を悪い子として責めるだけでは不十分でしょう。

男女が共に幸せになれる豊かな性教育と、豊かな人間関係を育っていくことが、必要だと思うのです。

◇悩んでいるあなたへ

誰かに話しましょう。こんなこと絶対に話せないと思っているかもしれないけれど、助けてくれる人はいます。

担任、保健室の先生、スクールカウンセラー、誰でもいいです。

お母さんお父さん、おばあちゃん、誰でもいいです。

友達に聞いてもらうことも、いいよね。

(友達から話を聞いて、自分だけでは背負いきれないと感じたら、ぜひ大人にも話そう。それが友人のためになります。)

ネット上でも、相談にのってくれるところはあるよ。

大人は、あなたが思っているほど無力ではありません。

わからず屋の大人もいるけれど、話を聞いてくれる大人もいます。

あなた一人では解決できなくても、大人一人では解決できなくても、大丈夫。

みんなで協力すれば、問題は解決へ向かいます。

相談しようよ。

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小さな命を守る会

日本性教育協会

子ども110番

男女・恋愛・結婚の心理学(こころの散歩道)

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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