「伊達直人の贈り物」の心理メカニズム:みんなタイガーマスクになりたかった
「伊達直人」が施設に演奏会をプレゼント
伊達直人が再登場!(再度報道されました)。
「タイガーマスク」とは
養護施設で育った主人公伊達直人が、プロレスラー「タイガーマスク」となり、タイガーマスクを倒そうとする悪者レスラーと戦いながら、正体を明かさないまま出身施設を支援しつづける話。梶原一騎原作、辻なおき作画。1968年から1971年にかけて、漫画雑誌に連載された。またアニメ化され、1969年から1971年にかけて、日本テレビ系列で放送された。(ラストシーンは、衝撃的!)
■人は人を助けたいと願っている
集団生活をしている動物は、互いに助け合います。そういうふうにできています。だから、人間も人間を助けたいと願っています。落とした財布を拾ってあげたり、駅までの道を教えてあげたりして、「ありがとう」と言われれば、誰でも心が温かくなります。
だれもが、タイガーマスクのように、伊達直人のように、人助けをしたいと願っています。
■いつもは人助けができない
けれども、日常生活では、なかなか人助けのチャンスがありません。どこで誰が困っているのか、よくわからないし、どうすれば助けられるのかがわかりません。
それがわかっても、「コスト」がかかりすぎると、人助け行動が起こりにくいことが、心理学の「援助行動」の研究から実証されています。コストとは、お金のことだけではありません。手間がかかるとか、恥ずかしいとか、だれかに偽善者と言われるのではないかといった負担に感じることがらが、心理的コストです。
■「伊達直人」はなぜ次々現れたか。
最初の「伊達直人の贈り物」は、養護施設の子どもたちへのランドセルのプレゼントでした。職員が玄関に置かれているのを発見しました。絶妙のプレゼント選択です。喜ぶ子どもの姿が見えるようです。
めんどくさい手続きもなしです。人助けをしている実感も感じられます。「伊達直人」という名乗り方も、良い意味での遊びの雰囲気があり、偽善的と見られにくいものだったでしょう。
報道も、好意的でした。心温まるニュースとして、多くのマスメディアが取り上げました。そうして、第二第三の「伊達直人」が出現し始めました。こうなると、自分の地域に伊達直人がいないことが淋しくなります。タイガーマスクにあこがれていて、今や多少の経済的余裕のあるおじさまおばさまとしては、自分も伊達直人になれねばと思ったことでしょう。こうして、日本中に「伊達直人の贈り物」が広がりました。
■一時の流行で終わらせないために
流行はいつか終わります。また、手間がかからなくて良いとはいえ、いきなり品物を送り届けるのは、場合によってはやっかいなことになります。でも、欧米と比べて寄付行為の習慣があまりない日本では、ぜひ続けたい運動です。
そこで、現在「タイガーマスク基金」が作られています。「伊達直人の贈り物」がニュースになったのは、2011年の東日本大震災の直前でした。震災の後、日本中から今までに無いほどの多くの募金、寄付金が集まりました。
2011年は、悲しい出来事があった年ですが、あの年が日本の「寄付元年」だったと、言われるようになればと思います。支援を必要としている人は、たくさんいます。
そして、幸福感に関する心理学の研究によれば、お金を自分のためだけに使う人よりも、他者のためにも使う人の方が、幸福感は高かったのです。
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養護施設の子どもたち、巣立つ子どもたちを支援するとともに、虐待のない社会を目指しています。