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元五輪選手の岡崎聡子容疑者の覚醒剤逮捕報道から考える薬物問題

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
社会みんなで、違法薬物は、ダメ。ゼッタイ。

■元五輪選手の岡崎聡子容疑者、“覚醒剤”でまた逮捕

体操の元オリンピック選手の岡崎聡子容疑者が、覚せい剤を隠し持っていたとして、警視庁に逮捕されていたことが、わかりました。〜覚せい剤0.5グラムを隠し持っていた疑いがもたれています。〜岡崎容疑者は、1976年、当時15歳でモントリオール・オリンピックに出場しましたが、引退後は覚せい剤を使用したなどとして、5度の有罪判決を受けています。

出典:元五輪選手の岡崎聡子容疑者、“覚醒剤”でまた逮捕 TBS系(JNN)Y! 9月13日(金)15時6分

■岡崎聡子容疑者

岡崎容疑者は、体操選手として15歳で1976年モントリオールオリンピックに出場しました。すばらしいことです。その後、1979年に引退し、芸能活動を開始、またエアロビクスの普及に貢献しました。その後、結婚出産し、芸能界を引退しました。

そして、1995年覚せい剤で逮捕され、その後覚せい剤使用を繰り返し、これまでに5回の有罪判決を受けています。

■覚せい剤の恐ろしさと現状

覚せい剤は、疲れが取れるなどと言われるように、覚醒作用のある薬です。本人としては、気分爽快になります。ただし、周囲から見れば奇妙なやる気元気さなのですが。そしてその効果も数時間で切れ、その後は激しい脱力感、疲労感、倦怠感に襲われます。この嫌な感じを消すために、また覚せい剤を求めてしまいます。

覚せい剤は、精神的依存がとても強い薬物です。つまり止めるのがとても難しい薬物です。そうして乱用が続けば、恐ろし妄想に取り付かれたり、突然乱暴を働いたりもします。時間がたった後でフラッシュバックに襲われ、強い症状が出ることもあります。

乱用者は、覚せい剤を何としても手に入れたいと思いますから、覚せい剤を手に入れるための犯罪に走る人もいます。

覚醒剤事犯の検挙人員は、毎年約1万2,000人と高止まり状態です。また覚醒剤事犯における再犯者率は6割を超え、過去15年間で最高です(内閣府)。

覚せい剤で逮捕されると、多くの人は社会的生命を失います。それでも、一度なら家族や友人も許してもくれるでしょう。有名人、芸能人も、仕事に復帰する人もいます。しかし、覚せい剤犯罪は繰り返しやすい犯罪です。

2度目、3度目の逮捕になると、さすがに仕事に復帰できなくなります。支えてくれていた友人、家族も離れていきます。その苦しい状況の中、再び覚せい剤に手を出し逮捕されるというパターンがよく見られます。

■覚せい剤など薬物依存に陥りやすい人

覚せい剤、マリファナなど、違法な薬物を使用する人々は、どのような性格の人でしょうか。心理学の研究によれば、2つの性格タイプの人々がいます。

1 衝動性、攻撃性、過活動性、刺激希求性が高いタイプの人。

簡単にいえば、強い刺激を求める、乱暴な人、落ち着きのない、激しく騒ぐタイプの人です。

2 神経症的、抑うつタイプの人

1の乱暴なタイプの人とは正反対です。乱暴どころか、まじめで自分を責めるタイプの人です。悩み、苦しんだ末に、薬物に走ってしまうタイプです。

また、子どものころ辛い体験をした人で、薬物に走る人もいます。

岡崎聡子容疑者は、経歴からすれば、辛い子ども時代どころか、すばらしい子ども若者時代を送ったと言えるでしょう。しかし、彼女の心はどうだったのでしょうか。オリンピック出場後の生活は、どうだったのでしょうか。15でオリンピックに出場した彼女は、でも2度目のオリンピックには挑戦していません。

若くしてピークを迎えてしまったスポーツ選手の、その後の人生を支えることは、とても大切だと思います。

昨年平成24年度に覚せい剤で逮捕されたのは、11,577人。その中で、10代が148人、20代が1933人でした。子ども若者達を守りたいと思います。

有名人、芸能人で、薬物を使用する人もいます。ストレスの多い仕事なのでしょう。悪い人も近づきやすいのでしょう。

■薬物と戦うために

薬物乱用の流行の要因は3つあるとされています。

1 違法薬物の社会における流通。

2 違法薬物を欲する個人の存在。

3 薬物乱用を許容する社会環境。

もちろん犯罪を犯した人自身が悪いのですが、その人を責めて孤立させるだけでは問題は解決しません。薬物を売っている人を捕まえること。薬物が欲しくなってっしまう人を支えること。そして、その程度のことは良いとしてしまうのか、絶対に許さないとするのか、社会全体のどのような雰囲気を作っていくのかが大切でしょう。

有名人の犯罪、逮捕は、大きく報道されます(テレビ局の人とか、有名司会者の子どもとか)。しかし、興味本意の報道、話題だけでは、困ります。すべての犯罪報道は、何らかの形で、犯罪防止につながらなければならないと思います。

せっかく大きく報道され、注目されるのであれば、それをどう薬物防止に活用するかです。

私たちも、その思いで、意見を述べ、会話したいと思います。リアルでも、ネットでも。

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芸能人と覚せい剤の犯罪心理学:覚せい剤所持でASKA容疑者逮捕報道から

薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ

NPO法人 全国薬物依存症者家族連合会

日本ダルク本部:薬物の問題を抱える仲間が回復を目指して集まる場

芸能人と、覚せい剤、麻薬の心理学:こころの散歩道

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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