前園氏暴行容疑逮捕から考えるアルコール問題、酒の楽しさ怖さ:記者会見を聞いて
■前園氏、直立不動で謝罪会見「本当にやってはいけないこと」
■酒の怖さ
前園さんは、普段から暴力をふるうような人ではないでしょう。しかし、アルコールは脳の機能を弱めます。だれもが酒を飲むと、自覚していなくても、判断力が弱くなったり気が大きくなったりします。だから、飲酒運転はとても危険です。程よい酔い方であれば、楽しく話が弾むわけですが、理性の働きが弱くなっていますから、時には深刻なトラブルが起きることがあります。
記者会見によると、前園さんは普段自宅では酒を飲まないそうです。そんな人でも、こんな大失敗をしてしまうことがあります。
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■普通の酔い方(普通のよっぱらい:単純酩酊)
体の中にどの程度アルコールが入っているか(血中アルコール濃度)によって、酔っている状態(酩酊:めいてい)は次のように分類することができます。
- 爽快期 : 気分が良くなる状態。酒気帯びの程度。
- 弱度酩酊(興奮期) : ほろ酔い気分。かたさが取れてリラックスする程度。話しがはずむ。
- 軽度酩酊(酩酊第一度) : 軽い興奮状態、多弁(おしゃべり)になる。普段押さえていたものがとれて、言いすぎてしまうことも。
- 中等度酩酊(酩酊第二度) : まっすぐ歩けない。のれつがまわらず、何を話しているのかわかりにくい。判断力が低下する。
- 強度酩酊(酩酊第三度) : 立ってあるけない。意識がもうろうとする。おう吐する(はく)。
- 泥酔期(酩酊第四度) : 意識混濁。体温低下。ぐったりする。死の危険も。
- 昏睡期 : 昏睡状態(深く眠り込んでいるような状態)。糞尿失禁(おもらし)。死亡の危険性が大きい。
ゆっくり飲んでいれば、死の危険が迫る前に寝てしまうなど、飲めなくなりますが、自分の酒量を理解せず、いっき飲みなど一度にに大量の酒を飲んでしまうと、命が危険な状態にもなってしまいます。ただこれらは単純酩酊(ふつうに酔っている)であり、酔い方の程度が軽いか、重いかの問題です。
■異常酩酊・複雑酩酊(普通じゃない酔っ払い)
異常酩酊の中には、複雑酩酊と病的酩酊がありますが、酔って犯罪的な騒ぎを起こしてしまう人の多くが、複雑酩酊です。病的酩酊は、もっと現実離れした幻覚、妄想などが出ます。
複雑酩酊は、興奮の程度と、興奮の長さが、普通の酔い方(単純酩酊)よりも、ずっと強く長くなる酔い方です。記憶もとぎれとぎれになります。興奮して暴れ、手に負えず、ケンカによる傷害事件や、女性に抱きつくような性犯罪や性的露出、ひどい時には殺人に至ることもあります。自殺の危険性が高まることもあります。
普段はそんなことをする人ではなく、本人も酔いが覚めれば、今回のように猛省するわけですが、女性に抱きつくなどして、社会的地位を失ってしまう人もいます。
複雑酩酊の時には、その人の心の底に潜む劣等感が強く刺激されて、乱暴な行為に出ると考える人もいます。このよな複雑酩酊になるような酔い方を繰り返すと、「酒乱」と呼ばれるでしょう。
複雑酩酊は、「大脳皮質のほとんどがマヒに陥り、道徳的な規範などが守れなくなっている状態」(『酒乱になる人、ならない人 』)と言えるでしょう。
今回も、前園さんは全く覚えていないと言っていますが、飲酒等により記憶が飛ぶことを、ブラックアウトといいます。ブラックアウトは、アルコール依存症への第一歩とも考えられます。
精神病院に通院歴のある人が犯罪などを犯すととても大きく報道されますが、実は精神障害者が起こす犯罪よりも、酔っぱらいが起こす犯罪の方がずっと多いのです。
■異常酩酊の理由と対策
どうして、異常酩酊状態になるのか、よくわかっていません。その人の生まれつきの素質やその時々の状況が影響しているのでしょうが、よくわかりません。異常酩酊状態になることをなくす薬などもありません。酒で失敗し、信頼や仕事を失い、さらにやけになって酒浸りになるでは困ります。
酒を少しでも飲むと倒れてしまうような人は酒を飲まない方が良いでしょう。同様に、酒を飲むと暴れてしまう人も、酒を飲まない方が良いでしょう。卵アレルギーの人が卵を食べないのと同じです。別のものを飲食しましょう。別の楽しみを持ちましょう。
異常酩酊になる素因(遺伝子)を持ち、ある程度酒に強い人が危険です。お酒を飲まなくても、酒の場で楽しく盛り上げてくれる人はいますね。酒は楽しく、その人にとっての適量を飲みたいと思います。
補足20200921
「元TOKIOの山口達也容疑者が酒気帯び運転の容疑で逮捕:お酒の心理学」
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お金の心理・お酒の心理・依存症の心理:自分のものにするとは。:こころの散歩道
楽しく飲むためのコツ・酔い方の異常:eヘルスネット:厚生労働省
『酒乱になる人、ならない人 (新潮新書) 』
『危ない呑み方・正しい呑み方 (マイコミ新書) 』