「夢」は夢のままではあなたを押しつぶす:努力は報われる? やさしい社会と厳しさと毒舌の心理
■初春・初夢
2014年がスタートしました。気持ちも新たに、今年の活動が始まっているでしょう。人間は、景気の良い話が好きです。一ヵ月後にはソチオリンピックですが、「金メダル獲得か!」といった話題が好まれるでしょう。新年の始めには、抱負とか「夢」を語るものです。明るい話題、景気づけには良いことです。でも、現実の生活にとって、時に夢は害となるのです。
■夢が役立つとき・役立たないとき
苦しくて苦しくて仕方がないとき、夢は心を癒します。マッチ売りの少女は、マッチを一本するごとに夢を見ました。寒い雪の中、温かなクリスマスパーティー、やさしいおばあちゃんの幻を見ました。彼女の心は温かくなり、微笑が生まれます。そして、微笑みながら彼女は死にます。
赤毛のアンは、不幸な生活の中で、空想ごっこをして楽しんでいました。それは、彼女の心を癒します。しかし、現実が変わっていくのは彼女がグリーンゲイブルに行き、新しい生活を始めることによってです。
夢は、心を癒します。しかし、夢は夢のままだと何も変わりません。夢を見ている間は良くても、夢から覚めて見える現実は過酷です。自分自身や自分の環境が、こうだったら良いのにと、夢ばかり語っていても何も変わりません。
夢ばかり追っていると、夢と現実の自分との落差を強く感じます。この現実との落差が、心を苦しめます。
■夢に向かって一歩を踏み出すとき
夢見ることは良いことです。夢を見て、そして現実に戻れるのなら、夢見ることは良いことです。しかし、夢見ているだけならば、夢はあなたを押しつぶします。夢の世界と現実との落差が大きすぎるからです。
「夢はあきらめなければ絶対にかなう」のかどうかはわかりませんが、そう思うことは間違っていないと思います。しかし、「あきらめなければ」は、ただ夢見ているのではなく、「努力し続ければ」の意味ではないでしょうか(努力を信奉し、尻を叩き続けることをすすめている訳ではありませんが)。
どうすれば夢がかなうのか、どうすれば夢に近づけるのかを具体的に知り、夢に向かって一歩ずつ近づき続けている。これが、「夢をあきらめない」だと思うのです。
そうなってくれば、もう「夢」という言葉よりも「目標」や「希望」と言ってもいいかもしれません。オリンピクに出たい、甲子園に行きたい、ファッションモデルになりたい。小さな子どものころは、そう夢見ていて良いでしょう。でも、だんだん大きくなれば、夢の実現を目指して具体的に歩み始めます。
それでも、その結果、夢の通りに実現できる人は少数でしょう。けれど、夢を捨てず、夢に向かって現実的な歩みを続けてきた人は、必要に応じて現実的に目標を調整することもできるはずです。必要に応じて、古い夢を断念し、新しい夢を持ち、新たな目標や希望に向かって進むべき道を知ることもできるでしょう。
当初の夢とは違うかもしれませんが、「夢はあきらめなければ必ずかなう」も、まんざら嘘ではないかもしれません。少なくとも、もう夢はあなたを押しつぶしません。そうなれば、夢はあなたの大きな力になるでしょう。
■毒舌? 本音?
昨年秋、陸上界で活躍した為末大さんがツイッターで、「やればできると言うが それは成功者の言い分であり、例えばアスリートとして成功するためにはアスリート向きの体で 生まれたかどうかが99%重要なことだ」と持論を展開しました。すると、「身も蓋もない」「道は努力で切り開くもの」などと批判が殺到し「炎上」するとうい騒ぎが起こりました。
為末さんはさらに、「努力だけでオリンピック選手にはなれない」などと反論しています。オリンピック選手になるためには、持って生まれた才能と努力と、努力し続けることができる適切な環境が必要でしょう(生まれつきの体が99%とは思いませんが)。
それは、当たり前のことだと思うのですが、それでもやっぱり本音と建前の世界でしょうか、賛否両論の火がついてしまいました。
本当は、「夢はかなう」とスターが語り、庶民が夢を持ちながら現実的な行動をとり、その中で新しいオリンピック選手も生まれるでしょうし、スポーツを楽しむ人も増えるのでしょう。でも、現代の「やさしい社会」の中では、為末大さんの苦言が必要になったり、毒舌芸人がもてはやされたり、「「綺麗ごと」を真に受けるな! 「キラキラワード」が日本をダメにする」といった記事が読まれたりするのでしょう。
補足:夢を夢に終わらせず、努力し続けました。
STAP細胞の小保方晴子さんから学ぶ「やる気の心理学」:負けず嫌いとおばあちゃんのかっぽう着:家族、両親に支えられ
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○心理学では、「努力はきっと報われる」と感じられる人を、「内的統制型」などと呼びます。そう感じる人の方が、努力が報われる確率が高くなるでしょう。
「運命と努力の心理学:ローカス・オブ・コントロール」:Yahoo!個人「心理学でお散歩」
○幸福感に関する心理学の研究によれば、人は目標を達成して幸福になるのではなく、目標に向かい続けることで幸福になります。
○「希望について:イースターの心」:Yahoo!個人「心理学でお散歩」
○カレンダーを発明した人は天才です。日にちが一日変わっただけで、「新年おめでとう」と新たな心になれます。→「時間の心理学」:Yahoo!個人「心理学でお散歩」