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コピペ・代行で済まそうとしている学生さんへ:引用・転載・剽窃とは・その違いとは:著作権法と私文書偽造

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■論文、レポートの「コピペ」、大学でも検知システム導入進む

新しい万能細胞「STAP細胞」を巡る一連の論文不正疑惑で、繰り返し指摘されたのが「コピペ(コピー・アンド・ペースト、複写と張り付け)」だ。研究の分野では「盗用」と呼ばれる不正の一つ。それを事前に見抜くチェックシステムやソフトを導入する動きが広がっている。〜学生のリポートなどをチェックする簡易ソフトの導入も広がる。「コピペルナー」はウェブ上で検索できる文書を基にコピペをチェックする。09年に発売され国内で350以上の大学などで使われている。

出典:<論文コピペ>検知システム導入進む 毎日新聞 3月22日Y!

STAP論文や佐村河内守氏の「現代のベートーベン」など、引用、著作権、コピーアンドペースト問題などが、世間を騒がしています。卒論代行サービスなんてものも、話題になっています。学生さん個人の普段のレポートや卒論などは、大きな社会的問題にはならないとしても、理解しておくべきことはあります。

■ 研究論文、研究レポートにおける引用とは

研究論文(研究レポート)において「引用」と呼ばれるものの多くは、研究内容の紹介でしょう。たとえば、「碓井(2022)はオレンジジュースがアンチエイジングに効果があることを示した」といった具合に碓井の研究内容を書いて、最後に「引用文献」として出典を書きますね。

どんどん引用してください。私達は、学問の先輩である巨人の肩に立って研究を進めます。大先生の研究も、最近の新しい研究もたくさん読み、引用してください。引用される方も、名誉なことであり、多く引用されることは評価につながりますので、大歓迎です。

これに対して、世間でよく言われる引用は、相手の言葉や文章をそのまま再掲載することです。たとえば、「碓井は2034年の国連総会において『餃子こそが人類を救う唯一の希望である』と述べている」といった具合です。研究論文でも、誰かの言葉、文章を、そのまま引用することもあるでしょう。

■ 他人の物を勝手に使ってはいけない

誰かが書いたものには、著作権があります。勝手に使ってはいけません。ただし、個人的に使うのはOKです。私が自分のお絵かき帳にミッキーマウスの絵を描くのは認められます。でも、このページに勝手に使うのは違法です。

著作権のあるものを使ってもよい例外の一つが、「引用」です。ただし、「引用」と認められるためには条件があります。

■ 引用とは:引用の条件

自分の意見と比較したり、自分の意見を補う目的で他人の著作物を利用することを「引用」といいますが、これは法律で認められた行為であり、著作権者に許可を求めなくても問題はありません(公表したものが誰かに引用されても文句は言えません)。

ただし、引用の条件を満たしていないと、それは引用ではなく「違法な無断転載」になります。

引用となるためには、次の5つの条件が必要です。

  1. 引用される著作物が公表されていること
  2. 引用部分と自分の著作物とが明瞭に区別されていること
  3. 自分の文章と引用文との間に主従関係があること
  4. 報道、批評、研究など正当な目的があること
  5. 出所の明示

誰かが書いたもので、すでに公開されているものを、あなたの文章の中で、あなたが書いたものではいとはっきりわかるように、表記しなくてはなりません。

分量的にも内容的にも、あなた自身の文章が主(メイン)であり、引用文は従(サブ)でなければなりません。また、報道、研究など正当な目的であることが必要です。集客のためなどはだめです。さらに、引用したものについて、誰がいつどこで発表したものかをはっきりと示さなくてはなりません。

1〜5の条件が全て満たされて、初めて「引用」と認められます。誰かの文章のかなりの量を何かに掲載したい場合など、1〜5のどれか1つでも当てはまらず、引用のわくから外れば、「転載」になるでしょう。著作権者の許可が必要です(印刷物でもネット上でも同じです)。

さらに、本来は転載なのに、あたかも自分が書いたように示してしまえば、それはもう、剽窃(ひょうせつ)、盗作、論文盗用などと呼ばれます。剽窃とは、他人の作品や論文、学説を盗んで、自分のものとして発表することです。

著作権があるものを勝手に使えば、著作権法違反ですが、著作権者が著作権を放棄していても、剽窃にはなります。剽はかすめ取るの意味、窃はこっそり盗むの意味です。

■ 教育的問題・道義的問題

世間では、お金をもらって卒論を代筆してくれる人がいるようです(卒論代行)。よくあるレポート課題に関するレポートを売っているサイトもあるようです。これらを利用してレポートを提出しても、著作権法の問題にはふれないでしょう。しかし、学校教育の中ではもちろん認められません。とんでもない行為です。教育上、道義上認められません。

それに、多くの場合、教員は読めばわかることが多いと思います。若い学生なのに、突然年寄り臭い文章を書けば、おかしいと思います。他のレポートは平凡だった学生が、突然優秀すぎるレポートを書けば不自然です。特別なソフトを使わなくても、検索をかければコピペがばれることもあるでしょう。

卒論や修士論文は、指導しながら書きますから、何十行も不自然な文章を見れば、普通は問いただすでしょう。

それでも、学校の中であれば、説教されたり単位を落とされたりで済むかもしれません。しかし、社会に出て、こんなことをすればどうでしょう。違法であれば、法的責任が問われますし、法的問題にならなくても、大きく信用を失うことになるでしょう。

ウソはばれるものです。

不正を働いても文章の見た目だけ良くしようというのは、プライドは高いが自信がない青年の行動です。

せっかく高い授業料を払って大学にいるのですから、ぜひ苦労して書いてみてください。自分で調べて自分で考えて自分らしく書く。文章力を身に着ければ、一生ものです。

研究も、勉強も、地道な行為です。一歩一歩、着実に正しく進んでいきましょう。

補足:卒論代行は法律違反?(2014.3.24)

「卒論代行サービス業者と依頼した学生について、『私文書偽造罪』の共犯が成立すると、法的に解釈することが可能でしょう。」〜「そもそも、大学生活の総決算である卒業論文を安易に代行業者に依頼することは、法律以前のモラルの問題と言えるのではないでしょうか。」

出典:学生の代わりに業者が書く「卒論代行サービス」 利用したら「法律違反」になる? 弁護士ドットコム 3月24日

なるほど、著作権法や剽窃の問題にはならなくても、「私文書偽造」の可能性はあるわけですね。ただ、上記の記事では類似の例として「替え玉受験」をあげていますが、卒論と同じではないでしょう。

卒論を書くときに誰かに手伝ってもらうことはあるでしょうし、たとえば統計処理を友人に頼む人もいます。これも程度問題ではありますが、手助けしてもらうことを不正とは言いにくいと思います。

ですから上記の記事でも、違法だと断じるのではなく、可能性を述べていますし、卒論代行サービスは「法律以前のモラルの問題」と述べているのでしょう。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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