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新社会人へのアドバイス:大丈夫、あなたはこれまでも乗り越えてきたから。

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■新社会人のみなさんへ

新社会人のみなさん。

新入社員のみなさん。

大丈夫です。

あなたは、保育園、小学校、中学校、高校、専門学校や大学の生活を、

ちゃんと乗り越えてきたじゃない。

それぞれに、苦しいこと、大変なこと、あったでしょ。

ちゃんと乗り越えてきたじゃない。

今、心配と不安で心が一杯のあなたも、大丈夫です。

■仕事は楽ではないけれど

どんな仕事も楽ではありません。でも、部活だって、委員会活動だって、入試だって、楽ではなかったでしょう。マラソン大会で苦労した人もいるでしょうし、歌のテストで苦労した人もいるでしょう。クラスの人間関係で苦労したり、卒論で苦労してきた人もいるでしょう。

楽ではなかったいろいろなことを、あなたは乗り越えてきました。

楽ではないことは、不幸なことではありません。

楽ちんな部活の方が良かったですか。上の大会なんか目指さない方が良かったですか。体育祭では勝敗をつけなかった方が良かったですか。実行委員になんかならなかった方が良かったですか。ゼミの発表なんかなかった方が良かったですか。

あなたが楽しかったことな何ですか?

部活や、委員会活動、サークル活動。サイクリングや、山登り。友達との貧乏旅行。地域の祭りとか。きっと楽しかったことがいろいろあるでしょう。苦労したけど、をかいたけど、何かに一生懸命取り組んだことは、楽しかったのではないですか。

あの辛かった部活の練習も、今振り返れば、楽しい思い出になっていませんか。

辛かっただけの記憶もあるかもしれませんが、あなたはその辛さも乗り越えてきました。

過酷な就職活動も、あなたは乗り越えてきました。

■先輩だって、上司だって

とても立派に見える先輩だって、上司だって、新入社員の時がありました。たくさん失敗してきたはずです。恥もかいてきたし、叱られてもきたでしょう。辞めたいと思ったこともあるでしょう。泣いたり、怒ったりしてきたこともあるでしょう。

そうして、今は立派な先輩。偉い上司になりました。あなたに説教できるほどにね。

どこに行っても、良い人もいれば悪い人もいるでしょう。多少意地の悪い人もいるかもしれません。でも、渡る世間に鬼はなし。たいていの先輩や上司は、新入社員のあなたのことを考えてくれています。

私は、聞きますよ。先輩や管理職の人から。部下や後輩のことを心配していることを。何とかしてあげたいと思ってくれていることを。それを器用に部下に伝えられる人と伝えられない人はいますけれどね。そりゃあ、いろんな上司や先輩がいますけれどね。いろんな人がいるから、良い人だっているはずです。

あなただって、3年後には先輩。10年後には上司です。

■世の中は甘い

世の中は厳しいと言う人もいますが。

甲子園の予選では、一回でも負ければそれで終わりです。入試では合格点に1点でも足りなければ、不合格です。でも、普通の世の中は違います。そんなに厳しくありません。

一回失敗したからクビってことはありません。あなたが失敗したら、誰かがフォローします。そうしなければ、部署全体が困りますから。ホーレンソー(報告・連絡・相談)なんて言いますけど、失敗しても、報告連絡相談すれば、何とかなります。何とかしましょう。

先輩や上司の中にも、いろんな人がいませんか。バリバリの人もいるけど、のんびり屋や、そそっかしい人など、いろいろいるものです。みんなそれぞれ、何年も働いてきました。

世の中なんて甘い、甘い、あまーい。

ここまで言えば、「世の中そんなに甘くないことぐらい私でも分かります」と言われそうですが。

ただ、職場はチームですから。誰かが失敗したとき、責めたり、笑ったりしているだけではないということです。失敗しても、傷ついても、セカンドチャンスはきっとあるということです。中高大より、ずっと長丁場だと言うことです。

■心理学的に言えば

自分にも出来るという「自己効力感」が大切です。能力ではなく「感」ですから、あなたが今までがんばって乗り越えてきたことを思い出してみましょう。ほら、自己効力感がわいてきます。次の壁も、目標も、逆境も、きっと乗り越えられます。

あなたが、本当のすばらしい社会人、会社員になっていくためには、自分が受け入れられている感覚が必要です(内発的動機づけの土台は重要な他者からの受容感)。会社は、あなたを選んで入社させました。上司だって、口は悪いかもしれないけれど、自分を育てようとしてくれているのだと、感じ取れることが、大切です。

大敵は、孤独感です。自分は誰にも助けてもらえない、分かってもらえない、こんなに無能なのは自分だけだ、そんなふうに感じてしまえば、仕事も楽しくないし、能力も発揮できません。最初はできなくて当たり前。みんなそうでした。

■無限の可能性と有限の時間

学校で良く言われてきた個性尊重とか、無限の可能性といったことは、子供だましのではありません。あなたは、なりたい自分になれます。あなたには、無限の可能性があります。その可能性を伸ばしてくれるのが、社会人としての生活です。

ただし、時間は有限です。「研修中」の名札をつけていられるのは、しばらくの間です。だから、どんどん人に質問して、どんどん説明を受け、どんどん説教してもらいましょう。たまには叱ってももらいましょう。しっかり叱られる「叱られ上手」は、愛される新入社員となり、将来会社を背負う人間になるでしょう。

いやなこと、大変なこと、めんどうなこともあるでしょうが、不思議なもので、後になると、あの経験が自分を育ててくれたと思えるものです。

新人、若者と言ってもらえるのも、しばらくの間です。経験があなたを育てます。豊かな経験をしてください。心理学の研究によれば、やる気の高い人は、職場でもやる気の出る環境(困難はあってもやりがいのある環境)を自ら選び取り、ますますやる気を高めます。

大丈夫。あなたは、部活や文化祭や体育祭で経験ししてきたことを、もっと大きな舞台で経験してきます。みんなで協力して、困難を乗り越え、目標を達成する。その基本ストーリーは、学校も実社会も同じです。あなたは、その練習を学校で積んできました。

さあ、いよいよ本番です。ゲートを通れば、あなたが大活躍するフィールドが待っています。

新入社員のみなさんへ2016:叱られ上手になろう

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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