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成功と失敗の違いは?:GWの映画館「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」シング・アロング

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」シング・アロングの成功と失敗

映画の大ヒット、主題歌の大ヒット、日本語版主題歌の大ヒット、そしてアメリカでのシング・アロング(みんなで歌おう)の大ヒット、日本での「みんなで歌おう」も成功とい報道がなされ、ゴールデンウイークには、90もの映画館で、「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」シング・アロングバーションの上映が行われました。

「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」シング・アロングは、なぜ成功したか。

ところが、ゴールデンウイーク中に「みんなで歌おう」に参加した人の中から、「歌ってなかった」「成功してない」という声が聞こえてきました。いったい、どうしたのでしょう。

■成功の理由

映画と歌の大ヒット。日本語版も大ヒット。『アナと雪の女王』主題歌の歌詞に感情移入できる。大声で歌える。大声で歌うと気持ちいい。映画館にはたくさんの観客。「みんなで歌おう」の上映会に来るのは、アナ雪大好きの熱烈なファン(おそらく何度目かの鑑賞)。そこで、「みんなで歌おう」は大成功したかと思います。

さらに、映画館の中には、上映前に歌の練習もしたそうです。とても上手に指導して、巧みにお客さんを盛り上げてくれた人もいるでしょう。

■失敗の理由

大成功の映画館の様子はニュースでも報道されていますが、上手くいかなかった上映会は報道されていないので、様子が分かりません。それでも、いくつかの失敗理由を想像してみたいと思います。

・観客数が減ってきた?映画館の熱気が下がってきた?

お客さんでいっぱいの熱気あふれる映画館でしたが、観客数が減ってきた可能性があります。ロードショーが3月14日。すでに2ヶ月近く上映されています。まだブームは続いていますし、長く愛される映画であることはたしかです。しかし、春休み中に見た人も多いでしょう。すでに1000万人が見ています。

ゴールデンウイーククには、「テルマエ・ロマエ」や「相棒」など、強力な新作映画の上映も始まっています。さすがのアナ雪の観客数も減っているでしょう。

熱心なファンは、すでに見ています。吹き替え版、字幕版、もう両方とも見た熱心なファンも多いでしょう。観客の数が減り、そして会場内の熱気も、当初とは違ってきているかもしれません。

・上映回数の減少で希望しなかった人も?

新作映画が始まり、各映画館のアナ雪の上映回数も減っているでしょう。もしかしたら、「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」バーションを見たかったわけではなかったけれども、その回しか都合が合わなかった人がいたかもしれません。

・「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」多すぎた?

最初に「みんなで歌おう」バージョンが上映された時は、日本では滅多にないことですから、本当に歌いたい人が集まります。たくさん集まります。そこで、「みんなで歌おう」も成功したのでしょう。

ところが、90館もの映画館で上映されるということは、その各上映回に熱心な人がたくさん集まるのは、難しくなります。人数も減り、熱気も弱くなります。

・準備不足

最初に「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」を上映した映画館は、不安もあったでしょうし、やる気もあったでしょう。マスコミから取材の申し込みなどがあれば、それはやる気も高まります。

上映前に有能な人が前に出て、上手に練習して、みんなを盛り上げることもできたでしょう。それ以外にも、成功に導くための細かな配慮や準備があったのかもしれません。

しかし、ゴールデンウイーク中に参加した90館の中には、安易に考えたところもあったでしょう。単に歌詞付きのものを上映しただけのと映画館もあったでしょう。

■「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」が成功しなかった会場で何が起きたか。

そもそも観客数が少ない、準備や配慮がない、熱気が高まっていないということが起きていたかもしれません。もちろん、その中にも歌う気満々の観客もいたでしょうが、この雰囲気では歌えません。

人は、多数派に影響されます。心理学では「同調行動」と呼んでいます。みんなが拍手しているときに一人だけ拍手しないのは辛いですし、みんなが拍手していないときに一人だけ拍手するのも辛いでしょう。人は、多数派に同調します。歌わない人が多数派の会場で、元気に歌うことは難しいでしょう。

さらに「みんなで歌おう」のような状況では、歌わない人が多数派ではなくても、悪影響がでるでしょう。「悪貨は良貨を駆逐する」といった現象が起きます。

一部のやる気のない人の冷めた態度が、全体のテンションを落とします。

ゴールデンウイーク中の「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」がどの程度成功したのか、失敗したのかは、情報がありません。ただ、せっかく歌おうと思って参加したのに、残念だった人もいるでしょう。

集団の動きは、とても微妙だということです。

最初の映画館が成功したからといって、字幕さえつければ後の映画館でも上手く行く訳ではないでしょう。それでも、成功した上映は、別にやらせではありません。

条件さえ整えば、日本でもシング・アロングは成功すると、アナ雪の大ヒットは教えてくれたでしょう。

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「アナと雪の女王の主題歌みんなで歌おう♪」シング・アロングは、なぜ成功したか。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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