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五月病の心のケア:予防対策解決法。

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

ああ、会社行きたくない、学校やめたい、などと考えている新入社員、1年生、それに転勤、配置換えなどのみなさんへ。

そんなあなたの「5月病」の解決法をお伝えします。

■5月病とは

「5月病」という病気があるわけではありません。でも、4月は新しい環境で何とかがんばったけど、5月ゴールデンウイーク明けごろから、やる気が下がっていく心の状態を、5月病などと呼んできました。

それは、「ストレス反応」かもしれませんし、「うつ状態」かもしれませんし、「適応障害」かもしれませんし、「リアリティーショック」かもしれません。

気分が沈む(抑うつ)、やる気が出ない(無気力)、心がざわつく不安感、イライラしたり、焦りが生まれたり。夜眠れなくなったり、不必要に朝早く目が覚めてしまったり、とても疲れやすくなり、疲労感がぬけなくなったり、何を食べてもおいしくなく食欲不振になったりします。趣味や遊びの意欲がなくなることもあるでしょう。人と関わることが、とても面倒に思えることもあるかもしれません。

■ストレス

変化は、ストレスを生みます。苦しいこと悲しいことはもちろんストレスですが、うれしい変化もストレスになります。希望の入社、入学も、大きな変化という点では同じですから、ストレスです。出世がストレスになってうつになる人もいるほどです。結婚もうれしいけれどもストレスですから、新婚旅行から帰っていきなり離婚したくなる人もいるでしょう。

入社入学は、ストレスです。でも、人はすぐに負けたりしません。がんばります。4月は、むしろハイテンションでがんばります。ところが、5月になって疲れがどっと出ます。

それは、葬式のときは元気に葬儀を仕切っていた人が、葬式後に一気に落ち込むようなものです。人は、ストレスが来ればがんばります。火事場の馬鹿力的な活躍ができてしまいます。でも、後で疲れが押し寄せます。

この疲れが、様々な心身の反応を引き起こします。体の不調や、心の抑うつを引き起こします。

あなたは、疲れています。良くがんばりました。少し休憩を取りましょう。

■疲れを取るために

体が疲れているのであれば、消化の良い栄養のあるものを食べて、温泉にでも入り、ぐっすり寝ましょう。徹夜でも、フルマラソンでも、疲れは数日もすれば取れるでしょう。

ところが、心の疲れは、簡単に取れません。栄養が必要なはずなのに食欲がなく、疲れているはずなのに、眠れません。休息をとろうと思っても、気持ちよく休むことができません。

■ぐっすり寝るために

良く眠れない睡眠障害が起きているのであれば、薬を飲むのも、一つの方法でしょう。病院に行かなくても、夜眠れない人のための薬が薬屋で売っています。穏やかな効き目ですから、心配ありません。きっと効きますよ(と信じましょう)。

そして、夜眠るとき、今日できたことを数えましょう。今日できなかったことを考えるのではなく、これはできた、ここまではできたと考えましょう。

明日の出来事で少しでも楽しいことを、考えましょう。明日がすばらしい日ではなくても、何でも良いので、小さなことでも良いので、良いことを考えましょう。

明日の朝起きることが楽しみな人は、夜ぐっすり眠れます。

■心と身体を活動させよう

疲れたら休むのが普通ですが(本格的なうつ病は薬と休息が基本ですが)、心の疲れは、動かなければ癒されるわけではありません。心は、使わなければエネルギーがたまるわけではありません。動かしましょう。

スポーツは、心を癒します。身体を動かすことが、心身の健康を作ります。スポーツしている間は、脳が球を打つことや泳ぐことに使われますから、余計なことを考えないですみます。これが、ストレス発散になります。

心を活動させましょう。何でもいいので、自発的に心と頭を使いたくなるような活動をしましょう。遊びや趣味でも良いですし、ボランティア活動でもいいでしょう。

世のため人のための活動は、心を元気にさせ、幸福感を高めます。

いつもは自動車で通っている道を歩いてみるだけで、新しい発見があるはずです。これって、心理学的にはひとつの「レジャー」です。お金も時間もかかりません。いつもと違う道を通ったり、いつもと反対の左手で歯磨きしたり、こんなことも、ほんのちょっとしたいつもとは違う体験のレジャーです。心と体の元気につながるでしょう。

受動的に休むだけではなく、積極的に心と頭と身体を使いましょう。散歩も、俳句を考えたり、写真を撮ろうと思ったりすると、積極的に景色を見ます。五感を研ぎ澄まします。これも、ストレス解消につながります。

■新しい環境

環境に適応できず、苦しくなっている人もいます。環境が変わればよいのですが、難しいでしょう。環境を嘆いても、解決はありません。むしろ、その会社や学校の環境の中で、新しいことを始めたほうが、心は元気になります。

「新しいこと」は、ストレスなのですが、すでに重いストレスになっている新しい職場や新しい学校の中にあって、さらに「新しいこと」に取り組むことで、その壁を破るのです。

職場や学校で、行ったことのない場所へ行ってみる、話したことのない人と話してみる。新しい仕事にチャレンジしてみる。今からでも大学のサークルに入れますよ。新しいことを始めることで、あなたにとっての環境が変わっていきます。

■もう一つの環境

たとえば、初めて一人暮らしを始めた。新しい職場や学校へ行き始めた。一人暮らしも辛いストレス、新しい学校や職場も辛いストレス。これだと、生活の100パーセントが辛い生活になります。

その環境を変えることができれば、良いですね。でも、そんなことができない人は、「もう一つの環境」を作りましょう。

家と、職場学校以外の、場所を作ります。趣味でも遊びでもボランティアでも。ちょっと楽しい、少なくとも学校や職場よりはましなところを作りましょう。すると、どうなるでしょう。家も学校職場もいやなままだとしても、もう生活の全てではありません。生活の3分2になっています。

さらにもう一つ、少しは良い環境ができたら同でしょう。苦しい家と学校職場は、生活の2分の1になります。こうして、ストレス環境自体は変わらなくても、生活の中で、相対的な大きさを変えてしまうのです。

こうして心と体が少し楽になれば、本業の職場や学校でも、より良く活動することができるでしょう。

■リアリティーショック

希望して、一生懸命就活したり、受験勉強したりして、今の場所に入った。ところが、思っていたような場所ではないと、感じている人はいませんか。これが、リアリティーショックです。第一希望に入った人ほど、実は落胆もあるのです。

けれど、まだまだ始まったばかりです。失敗しても、まだまだこれからです。セカンドチャンスはきっとあります。スタートダッシュに出遅れても、まだまだこれからです。

失望しているあなたも、この現実を受け入れましょう。子供じみた理想をふりまわさず、この現実の中で、それでも理想を忘れずに、進んでいきましょう。

現実を知り、現実を嫌わないで。この現実の中で、生きていきましょう。

そうすると、つまらないと思えたことの中に、良いことも見えてくるものです。自分のできること、目指すことも見えてくるかも知れません。つまらない事だらけだけど、あの仕事はやってみたい、あの先輩や上司は信頼できる。あの先生やあの授業は少し楽しくなってきた。

そんなふうに、何か一つでも良いことを見つけると、その関心意欲が次第に広がって行きます。一つの小さな変化は、全体を変える大きな変化につながるのです。

NHKの朝の連続テレビ小説「花子とアン」。女学校の卒業式で、この女学校生活こそ人生でもっともすばらしいと語る卒業生に、年配の女性校長が語ります。

「我と共に老いよ。最上のものは、なお後に来る(きたる)」。

「人生は進歩です。若い時代は準備のときであり、

最上のものは過去にあるのではなく、将来にあります」。

あなたのすばらしい人生も、きっとこれからです。

■5月病だと悩んでいるあなたへ

悩んでいる人は、すばらしい人です。

あなたは、4月にがんばりすぎた、高い理想を持ってきた、だから5月の今、悩んでいるのです。まじめで努力家で、責任感の強いあなたです。そんな素晴らしいあなたが、燃え尽きてこのままへなへなとだめになったら、もったいない。

5月病の特効薬はありません。あの手この手を考えましょう。上の文章を読んで、そんなことできないと文句を言いたい人もいるでしょう。はい、これは一つのヒントです。あなたなりの方法を考えてみましょう。元気な6月を迎えましょう。

1年たったら、きっと元気な生活を送っていて、次の新入社員や新入生を、あなたが慰め励ましていることでしょう。私も最初は大変だったと。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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