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ドラえもんは、いつ未来に帰ってしまうのか:STAND BY ME:ドラえもん最終回問題への解答

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
国民的マンガ「ドラえもん」から学ぶ、子どもとは、大人とは。

■3D CG 映画 STAND BY ME ドラえもん

「すべての、子ども経験者」に贈る、

「"ドラえもん"のはじまりと終わりの物語」です。

原作漫画の7つの名作エピソードが集結され、ドラえもんとのび太の出会いから「別れ」までを描きます。

3Dになった「ドラえもん」では、のび太の部屋の畳の質感がわかります。ドラえもんのリアルな歩き方、しゃべり方がわかります。タイムマシンの造形も、タケコプターで空を飛ぶ浮遊感も、よくわかります。

そして、STAND BY ME(スタンド・バイ・ミー:「そばにいて」「自分を支えていて」の意味)。毎年春休みの大冒険映画とは異なりますが、もちろん子ども楽しめる映画でり、大きくなって「何かを得た、そして何かを失った」と感じている大人たちの心にも響く映画です。

■僕らはみんな「のび太」だった

ドジで、勉強ができなくて、スポーツでも活躍できず、めんどくさがり屋ののび太。基本的にはよい子だとは思いますが、時に調子に乗りすぎて、ずるい事も考えて、小さなことで大騒ぎして。

はい。私も一人の「のび太」でした。

出来杉くんのような、勉強もできるスポーツもできる、おまけに性格も良い完璧な子など、いったいどこにいるでしょうか。私たちはみんな、大なり小なり「のび太」だったのでしょう。

原作者の藤子・F・不二雄さんも、子どもの頃にいじめられていたそうです。「のび太は私自身なんです。僕は子供の頃、かけっこも運動も苦手でクラスの友達からいじめられていたんです。ドラえもんののび太そのものだったんです。」と、かつてNHKの番組で語っています。

■子どもには「ドラえもん」が必要

子どもには、子どもの世界があります。いつも、ぬいぐるみの熊を抱いている子。犬や猫と兄弟のように仲良しの子。座敷わらしが見える子や、妖怪や怪獣が見える子もいるかもしれません。

一人遊びをしている子どもが、まるで誰かとおしゃべりしているように見えることはありませんか?

藤子不二雄さんの漫画には、「不思議な存在」が居候(いそうろう)として子供部屋に住む話が、いくつもありますね。

それは、遊び相手で、話し相手で、癒してくれたり、励ましてくれる存在です。

ドラえもんは、すべての問題を解決してくれます。子どもを甘やかしているという人もいますが、ドラえもんは、まるでお母さんのような「癒し」の存在です。友達のような「仲間」です。そして時には、お父さんのように「厳しさ」も表します。

私たちの家には、ドラえもんも、オバケのQ太郎も、ジャングル黒べえも、コロ助(キテレツ大百科)もいませんが、子どもの心の中には、誰かが住んでいるかもしれません。子どもの目には、誰かが見えているのかもしれません。

子どもが、本当に困ったときには、両親や祖父母が、「ドラえもん」になります。子どもから見れば、あっと驚くような力で問題を解決します。もうだめだと絶望している子どもを、大人の力で助けます。

ドラえもんは、のび太がどんなに大失敗をしても、のび太を愛し続けます。

■私たちはみんな「ドラえもん」になる

私たちは、それぞれに「ドラえもん」を持っていたことでしょう。アニメのように完璧ではないですが、それぞれの家の「ドラえもん」が、頑張ってくれたことでしょう。

大人になった今は、私たちみんなが、だれかの「ドラえもん」になり、だれかの「サンタクロース」になります(「子どもにとっての「ドラえもん」になる方法」)。

映画「STAND BY ME ドラえもん」を見ていると、子どもはのび太に感情移入し、親達はドラえもんに感情移入して、のび太にエールを送ることでしょう。頑張るのび太の姿を見て、思わず涙ぐむ人もいるでしょう(「ドラ泣き」です)。

■ドラえもんが未来に帰る日:「ドラえもん」最終回

「ドラえもん」には、今回の映画「STAND BY ME ドラえもん」や名作短編「のび太の結婚前夜」のように、のび太たちが大人になった世界が描かれているストーリーがあります。

そして、その世界には「ドラえもん」はいません。

いったい、いつドラえもんは未来の世界へ帰ってしまったのでしょう。「ドラえもん」の最終回は、いつ訪れたのでしょう。

それは、のび太たちが「大人」になった日ではないでしょうか。のび太たちが大人になったとき、「ドラえもん」は使命を終えて、22世紀の未来へと帰っていったのでしょう。

今回の映画でも、のび太がドラえもんに頼らずに頑張る姿が描かれます。映画「のび太の結婚前夜」でも、未来の世界にやってきた子どもののび太が、困っている大人ののび太たちを助けようとするシーンが出てきます。でも、ドラえもんは、のび太を制して言います。

「みんなの力を信じるんだ!」

のび太たちが大人になったとき、ドラえもんは、みんなの力を信じて、もとの未来世界へ帰って行ったのでしょう。

大人になったのび太たちは、相変わらずのところもありますが、それぞれが強くなり、自分の人生を力強く歩んでいます。

ただし、テレビアニメの世界では、のび太たちは「永遠の子ども」ですから、ドラえもんもずっとずっとのび太たちと一緒にいるのでしょう。

■大人になること、未来を変えること

大人になるということは、あの楽しい時間を失うということです。みんなに守られ包まれていた安心感を失うということです。みんなに守られ、育まれ、そして大人になった私たちは、今度は年老いた大人たちをかばい、新しい子どもたちを守り育てるのでしょう。

ドラえもんは、そもそも未来を変えるために、22世紀からセワシくんが送ったネコ型ロボットという設定です(タイムパラドックスのややこしい話しはここでは横に置いておきます)。

今回の映画でも、テーマは「未来を変えろ」です。

未来には、無数の可能性があります。未来を作るのは私たちであり、子どもたちこそ私たちの未来なのです。

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・あなたも、「子どもにとっての「ドラえもん」になる方法」があります。私たちが、子どもを成長させるのでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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