Yahoo!ニュース

韓国交通事故事情と安全文化の育成:韓国アイドルグループ「LADIES' CODE」の交通事故から

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
韓国の街並み(写真はイメージ)

■韓国アイドルグループ「LADIES' CODE」が交通事故・メンバーのウンビ亡くなる・リセは重態

3日午前1時23分頃、龍仁市(ヨンインシ)器興区(キフング)彦南洞(オンナムドン)嶺東高速道路新葛ジャンクション付近(仁川方向43キロ地点)で、韓国ガールズグループ「LADIES' CODE」が乗ったワゴン車が路肩のガードレールを突き破り、メンバーのウンビ(21)が死亡した。

他4人のメンバーの内、ソジョンとリセは重傷、スタイリストなど4名は軽傷を負い、病院へ運ばれた。

出典:「LADIES' CODE」が交通事故、メンバー1人死亡 WoW!Korea 9月3日

重体となっている韓国の5人組人気ガールズグループ、LADIES’ CODEのメンバー、リセさん(23)=本名クォン・リセ=が、11時間に及ぶ手術を受けている途中、血圧がさがり、脳の腫れもひどいため、手術を中断したことが分かった。

リセさんは在日韓国人で、2009年、ミスコリア日本グランプリに輝き、11年に韓国のオーディション番組「偉大な誕生」に出演して注目された。

出典:事故で重体の韓国女性グループメンバー、血圧低下と脳の腫れひどく手術中断 サンケイスポーツ 9月3日

芸能人は、目立つ存在です。アイドルは、身近に感じる存在であり、明るく元気な存在です。そんな彼女たちの交通事故、死亡、重態、重症。多くの人たちがショックを受けていることでしょう(日本でも、昨年の桜塚やっくんの交通事故死で衝撃を受けた人が大勢いるように)。

重態のリセさんは、福島市で生まれ育っています。多くの友人知人、親戚や、ファンの人たちがいることでしょう。日韓の架け橋になり得る人でしょう。それだけに、とても痛ましい事故です。

■韓国交通事故事情:日韓比較

韓国は残念ながら交通事故の多い国です。

日本と韓国を比較する次のようになります。

人口

日本:1億2千万。韓国:5千万

自動車台数

日本:8千万台。韓国2千万台。

道路の長さ

日本:120万キロ。韓国10万キロ。

年間交通事故死亡者数

日本:4千人。韓国5千人。

韓国の方が、交通事故死亡率は、ずっと多くなっています。

交通事故の統計を見てみよう。2011年の統計で、車1万台当たりの交通事故の死亡者数は、韓国が2.4名、アメリカが1.3名、日本が0.7名である。

出典:<Wコラム>「LADIES' CODE」の交通事故と日韓の50年WoW!Korea 9月3日

日本も1970年ごろは、年間1万6千人もの交通事故死亡者がいました。その後も1万人前後の犠牲者がいましたが、この十数年の関係者の努力の結果、ここまで減らしてきました。

韓国も、1990年には1万2千人だった交通事故死亡者をここまで減らしましたが、この数年5千人代で高止まり状態が続いています。

日本も韓国もこの数十年で自動車の数が増えています。

日本では、1970年には1800万台だった自動車が今では8千万台になりました。

ところが韓国では、

1万世帯あたりの乗用車保有台数は1955年に10台未満であったが、1980年に100台を超過、1990年に1000台、そしてついに2005年以降には10000台を越えた。

出典:戦後の韓国の成長(パク・テキュン氏)

1980年と比べても、何と100倍です。

このものすごい自動車の増加に、おそらく、環境整備や安全文化が追いついていないのでしょう。

様々な人が、韓国では自動車の運転が乱暴だといってことを述べています。

■安全文化の育成

日本も、かつて急激な経済成長の中で、交通戦争と呼ばれるほどに自動車事故が増え、また公害が増えていきました。しかし今は、社会の成熟と共に交通事故の少ない、環境を大切にする社会となりました。

韓国をはじめ、アジア諸国も、今後の改善を期待したいと思います。韓国では、セウォル号沈没事故が国全体を揺るがしました。この機会に、安全文化の育成が必要でしょう。

交通事故を減らすためには、自動車の改善、道路の改善、法律の改善も必要です。しかし、人はしばしばあえてルールを犯し、危険な運転をします(交通事故の心理学:人はなぜミスを犯しルールを破り危険に近づくのか)。

だから、これらの整備と同時に、長い目で見れば、交通安全教育と安全文化の育成が必要です。

交通、運輸においては、利益やスピードよりも、安全こそが大切です。日本もまだ道半ばです。福知山線脱線事故が起こり、小樽市飲酒運転ひき逃げ事件が起きています。

タイタニックの沈没から、最近の事故まで、多くの事故は、急いでいることと、技術やテクニックの過信から発生しています。運動神経の良い人が、意外と交通事故を起こしやすいのです(交通事故の心理学:事故を起こしやすい人とは?)。

今回の事故で亡くなられたウンビさんのご冥福をお祈りいたします。リセさんをはじめ、治療中の方の回復をお祈りいたします。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事