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神戸女児不明事件容疑者逮捕第一報から考えられること・犯罪心理:なぜ遺体をバラバラに?なぜ近所に遺棄?

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■神戸女児不明 近所の47歳男を逮捕

神戸市長田区長田天神町の草むらで、行方不明だった同区の市立名倉小1年、生田美玲(みれい)さん(6)の遺体が見つかった事件で、兵庫県警長田署捜査本部は24日、死体遺棄容疑で、発見現場近くに住む無職の男(47)を逮捕した。

出典:国内 政治 社会 人 神戸女児不明 近所の47歳男を逮捕 死体遺棄容疑で 兵庫県警 産経新聞 9月24日

行方不明だった少女が、自宅付近の雑木林で遺体で発見され、近所に住む無職男性が逮捕されました。

〜近所に住む君野康弘容疑者(47)を逮捕〜。

捜査本部によると、遺体が見つかったのは、美玲さんの自宅から東に約100メートル離れた雑木林の草むら。頭部のほか、両足、手を含む胴体が別々の袋に入れられ、それぞれポリ袋数枚を使って厳重に梱包(こんぽう)されていた。袋からは、君野容疑者の実名が記載された診察券やたばこの吸い殻が見つかったという。

遺体のうち、腰の部分は見つかっていないが、捜査本部は今後、司法解剖して死因などを調べる。

出典:国内 政治 社会 人 近所の47歳男逮捕=切断遺体、不明女児と確認―殺人事件で捜査本部・兵庫県警 時事通信 9月24日

遺体はバラバラにされてポリ袋数個に入れられていました。遺体の一部(腰の部分)は発見されていません。

■なぜ遺体は切断されバラバラにされたか

多くの遺体切断事件では、猟奇的な理由ではなく、もっと単純な理由で遺体を切断します。大きな遺体のままでは移動が難しので、運びやすくするための遺体の切断です。バラバラにした上で、箱やケースに入れて運び、遺棄したりします。

遺体を切断することは、心理的にも物理的にも簡単なことではありません。しかし殺人という異常な状況で、遺体の処分に困った犯人が、追いつめられた心理で実行します。

今回は、「運びやすくするため」という理由はなさそうです。そうすると、切断すること自体が目的だったとも考えられます。カルト宗教的な儀式として行われることもありますし、「性的サディズム」などであれば、遺体を傷つけること自体に性的快感を感じます。

佐世保女子高生殺人事件でも、遺体が傷つけられていましたが、合理的な理由はなく、性的快感目的でもなく、歪んだ知的好奇心として、人間を解剖してみたいという思いでした。

今回の事件は、少女を対象とした幼児性愛によるものなのか、それとも殺人や遺体損壊への欲求があり、その対処として被害者にしやすい少女が狙われたのかは、わかりません。

報道によれば、近隣ではネコが虐待される事件なども起きていました。

■なぜ近所に置かれたか

通常の殺人犯は、事件の発覚を恐れます。事件発覚が少しでも遅くなるように、遺体の身元をわからなくしたり、できるだけ自分との関わりを薄くすることを考えます。

そうすると、遺体を遠くに遺棄し、崖底に落としたり、土に埋めたりします。

今回は、容疑者自宅からも被害者自宅からもすぐ近くに遺体を遺棄した容疑が書けられています。

なぜ、すぐ近くに遺体を置いたのか。

何も考えていなかったというケースもあるでしょう。誘拐しようとしたら騒がれて殺したといった場合は、動転して、少しでも早く現場から立ち去りたいと思いますから、遺体はそのままにされたりします。

しかし、今回は時間をかけて遺体を切断し、何重もの袋の中に入れられています。あわてて何も考えず、あるいは遠くに行く余裕がなくとは考えにくいでしょう。

そうすると、あえて近くに遺棄したとも考えられます。

自分の近くに置きたかった、家族の近くに遺体を置きたかった、家族に遺体を返したかったなどの、発想があったのかもしれません。

あるいは、社会や警察をあざ笑うような動機があったのかもしれません。

遺体が置かれた場所は、すぐ近くの場所であり、そしてとても見つけにくい場所でした。そこにも、犯人の思いがあるのかもしれません。

男のアパートは、生田さんの遺体が見つかった草むらから、わずか約30メートルしか離れていない。〜「この辺りは普段は静かだが、空き家が多く、猫が殺されるなど不審者も多い。早く事件が解決してほしい」と不安そうな様子で話していた。

出典:国内 政治 社会 人 <神戸遺体>聴取の男 住居は発見現場から30メートル 毎日新聞 9月24日

■なぜ袋に入れられていたか

バラバラにされた遺体は、それぞれがゴミ袋のような袋に入れられていました。これは、おそらく遺体から体液が流れ出ないように、運びやすいようになどの、単純な理由ではないかと思います。

■見つからない遺体胃の部分と容疑者の診察券

報道によると、腰の部分、つまり下半身の部分が発見されていません。遺体の身元が分かる前の警察発表では、「腰が無いから女性か男性か断定できない状況」とされています(神戸で袋に子どもの遺体 捜査本部の会見 一問一答 神戸新聞2014/9/24

この遺体の一部に対して、犯人は特別な思いがあり、どこか別の場所に置いてあったり、別の扱いをしているのかもしれません。遺体の下半身部分だけを特別な扱いをすることは、これまでの事件でも見られます。

人体の一部にだけ強い関心を示す「性的フェティシズム」も考えられるでしょう。

診察券は、誤って袋に入ったのか、意図的に入れたのかは、わかりません。ただ、容疑者男性は逃亡する様子を見せていません。診察券は意図的に入れられたのかもしれません。

合理的な理由は考えられません。そうすると、自分と被害者女児とがつながっていると感じたいなど、彼独自の歪んだ思いがあったのかもしれません。

■被害者遺族の思いと私たちの思い

子どもの突然の死は、家族に計り知れないダメージを与えます。今回、行方不明事件が遺体発見という最悪の結末を迎えたことで、ご遺族の心痛はどれほど大きいでしょう。さらに、この遺体の状況です。私も、この記事を書きながら、心が苦しくなります。

一方、多くの取材も受けています。限られた情報ですが、今わかることを述べて欲しいと依頼されます。私たちは、驚くような出来事に接すると、心が不安になります。不安を落ち着けるために、情報を求めます。

犯罪は社会を映す鏡です。直接の被害者、遺族、加害者のことに加えて、自分の家族や社会全体への不安も高まります。だから、今の段階で少しでもわかることを求めるのでしょう。

冷静さが必要です。事件の解決、被害者や被害者家族の保護に加えて、私たちが冷静に事件から学ぶことが必要だと思います。社会のあり方を考え、子どもを犯罪者から守ることを考えていかなくてはなりません。

☆事件の続報を受け、ページをアップしました。→

神戸女児殺害事件:猟奇バラバラ殺人事件か、シンプルな事件か:犯罪と障害と私たち

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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